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山田 武

偽善者と『極塔之主』 その11



「――それからも、眷属たちの大進撃は続いていった。どのダンジョンモンスター達も、始めは威勢良く挑んでいった……が、彼女たちは誰も彼もが一騎当千の英雄豪傑。イベントで入手したとされる凶悪な魔物たちは……その真価を発揮する前に倒されていった」

『ノォーーン!! 俺の、俺のフェエバリットモンスターが~~!!』

《落ち着いてくださいマスター。彼らはDPで何度でも蘇りますから》

『分かってるけどよぉ、まだアイツらの良いところが何にも見れてねぇじゃねぇかよ!』

「まあ落ち着けって。アイツらの活躍はまだまだこれからさ――装備としてのな」

『おっ前、本当に性格最悪だな!!』


 おいおい、何を言ってるんだカナタは。
 俺みたいなモブに一々性格が悪いなんて属性、付くわけないだろ?
 俺は性格が悪いわけじゃあ無いんだよ……ただ、一言余計なだけだ。


《お二人共、落ち着いてください。とりあえず、今までに屠られた魔物たちに関する説明しましょう。一度説明をしましたが、その大半が素材としての説明でしたし……》

「あぁ、お蔭様でアイデアが沢山浮かんだ。一番最初の道化師の魔物なら……シルクハットと仮面の装備だな。うん、良い感じで面白くなりそうだ。あ、カナタいるか?」

『欲し……い、いらねぇ。俺のお気に入りたちが素材な防具なんて……クソォ……』


 物凄く葛藤しているのか、無意識に手がプルプルと前に伸びている。
 ……あとで全魔物を素材にした、超絶レアな装備を作ってあげようか。


「――っと、そうだ説明だ。とりあえず……二匹ぐらい説明するか。
 九十一階層、そこで待ち受けたのはベルムウルフ・マルスであった。真紅に染まったそのカッコイイ狼は、口から生えた剣状の牙を眷属たちに向けて飛び掛かった……が、同じく手を剣へと変えた戦闘狂の機人によって倒された。
 九十二階層、そこはキュクロプススミス・ヴァルカンが立ちはだかる階層であった。その魔物は自身であらゆる武具を造り上げ、炎や雷の力をその武具に纏わせていた。自身の周りに造り上げた武具を展開し、戦おうとしていたのだが……こちらもまた、某英雄王の一斉放射モドキによって倒される」

『どっちも強いはずなのに。本当だったら、単独でダンジョンを滅ぼせるのに……』

《マスター、もう諦めてください。アレは一種の理不尽です。逃れることのできない災害なんです。……大人しく、これから起き得る未来を受け入れましょう》


 酷いことを話し合う二人。
 しかし、映像を見ていると同情しか感じられなかったので否定はしない。


「おいっ……と言いたいところだが、アイツらは俺より優秀だからな。仕方ないか」

『《え?》』

「へ?」


 ……何か変なことを言っただろうか?
 確かに戦いならば、全眷属からいろいろな力を借りている俺の方が現状は強い。
 だが、『優秀』というのは、何も力だけで決まるものでは無いだろう。
 秀でて優れる――それが優秀なのならば、逆に俺がそれに当てはまることはない。

 ――完全無欠の超人ならば、彼女たちが俺のことで悩む必要など何もないのだから。


「さ、さて、次に行こうか――
 九十三階層、そこでは岩猿王・斉天大聖が現れた……オリジナルの方の孫悟空だ。
 奴は事前に髪の毛でも吹いてあったのか、何千何万もの自分と共に、眷属たちへ攻撃を行おうとした……が、数の暴力は純粋な力には敵わなかった。ある猿は斬られたことに気付かない程にバッサリと切断され、ある猿はいつの間にか胃袋の中に生きたまま喰われ、ある猿は結界に全身を押し潰され、ある猿は光の柱に呑まれて消えて逝った。
 九十四階層、そこは地形全てを自在に飛び回る八咫烏・天照が彼女たちの相手だった。光と闇、陰と陽を操る烏は、自身が放った光で生じた影へ潜り、彼女たちの死角を狙い攻撃をすることも可能であった……が、吸血鬼としての能力を操る龍人によって、影に潜れば引っ張り出され、空を舞えば叩き付けられる……最後には翼をもがれて消滅して逝く」

《ここまでが、ダイジェストとなります。現在彼女たちは、九十五階層の階層主――エアスライム・シアエガとの戦闘を繰り広げております。
 その魔物は、マスターのかつて持っていた淫欲が生み出した化物です》


 映像内では、眷属たちが無数の長い触手と冒涜的なシーンを賭けた戦いを行っている。

 本来、シアエガとは緑の単眼を持った触手が仮の姿を持つ、タール状の化物であったとされる。
 ……だが、エアスライムとは気体への変化が可能となったスライムであり、倒すのは非常に困難である。

 スライムらしからぬ生存力を手に入れたその魔物は、制限を掛けられている眷属たちには苦戦する相手である(そう、制限さえなければ一撃だ。例えば、剣聖の斬撃とかな)。


『おいっ、全部聞こえてるんだぞ!』

《ええ、説明していますので。悲しいことにマスターは、触手プレイに興味を持っていたことがありまして……その際に生まれた悲劇のモンスターが、あちらの魔物となります》

「カナタ……お前、そういうのが趣味だったのか。俺、お前のこと友達になれると思ってたんだが……ちょっと、考え直した方が良いのかもしれないな」

『え、ちょ、まっ!』


 もう少し、制限付きのままじゃ掛かりそうだな。
 俺だったら階層ごと丸々凍らせて終わらせるが……それは反則だしな。

 ――さて、どうやって攻略するのかな?

 俺の触手プレイへの誤解をどうにかするために、アタフタ且つしどろもどろに説明を行うカナタを見ながら……そう思った。



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