AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『覇導劉帝』 その04
「(凄い嬉々として俺を殺そうとしてくるんだが……どうすれば良いんだよ――"光迅槍")」
《どうと言われましても、我が王自身の思うがままに》
「(それをやっている結果が、ちょっとずつ殺される確率が上がるってのは俺、少し変だと思うんだけどな! ――"天使の槍")」
《……しかし我が王、ドラゴンの攻撃を受けながら、よくもまあ私と会話ができますね。幾ら並列で思考をさせているとはいえ、中々の化物っぷりかと》
「(そういうのはな、眷属たちに言ってやれ。全員揃って、俺以上に思考を割いていても平然としているからな――"ペネトレイト")」
《私も眷属ですよ》
「(そんなの皮肉に決まってんだろ! ――"闇迅槍")」
『GUGYAAぁぁぁあああああ!』
俺の攻撃も少しずつとドラゴン(とりあえず会話ができるまではこっちで徹す)へ届き、ドラゴン本体の意識を取り戻して行っている。
……だけど、どうしてそうしていく方が、俺の命を脅かしているのだろうか。
ただ爪と息吹を使うだけだった時と比べ、今では俺の行動を先読みして攻撃している気がしている。
段々と回避もままならないため、攻撃系のスキルによる迎撃を行っているのだ。
「(――とは言っても、まだまだ意識は戻っていない。だんだんと言葉として認識できるようになっているが、それもまだ不完全……はてさて、最終的に俺は、四肢を残したまま生きていられるのかな? ――"魔穿鉄堅")」
矛に魔力を籠めて放ち、強靱な鱗を破壊していく。
……が、ドラゴンの自身の鱗が破壊されることを予期していたのだろう。
体を捻り、矛の当たる部分を最小限まで減らしていた。
初期にやっていたなら、鱗を大量に減らせた筈なのだが……戦闘狂は面倒だな。
「(ま、今は正気に戻す段階だな。……戻ったところで意味も無い気もするが、今のままよりは満足してくれるだろう。ドゥル、お前は解析の方を完成させてくれ。【乱神狂武】が何度でも発動するスキルだったら困る。だから、それに対する対応策も用意してくれよ)」
《仰せのままに、我が王》
ドゥルとの連絡を終えると、エリア中を低空飛行で駆け回りながら、ドラゴンへ挑発を行っていく。
『GURRRRぅぅぅううううううう』
「おいおい、世の中の大半の人々は『あ』や『う』だけじゃ会話できないんだぞ。狂っているんだか何だか知らないが、いい加減お前さんの知性とやらを見せてくれよ。ま、お前さんが仮に知性を持っていたとしても、戦闘狂の知性なんて、あって無いようなものなんだろうけどな!」
『GUWOOOぉぉぉぉおおおおおおん!』
「……『お』を足してもお前さんの馬鹿さ加減に変わりは無いだろうよ。大体さ、『あ』と『う』が駄目なら『お』って、どんだけ馬鹿なんだ? 次は『い』ですか? それとも『え』ですか? どっちにしても人に言われてからしか直せないなんて、青春物の不良ぐらい馬鹿じゃねぇか!」
『GUGYAA……れ』
攻撃に、一瞬の緩急が付き始める。
「ったく、そもそも英霊が狂ってるんだよ。属性は狂化・暴走でクラスは狂戦士なんですか? 先に言っておくけど、あれは既に狂ってるからな。理性保ってるし、全然狂って無いんだよ――お前と違ってな!」
『…………まれ』
瞳に、仄かな光が宿り始める。
「どっかの元帝王様なんだと思うけど、何をやったらこんな所に飛ばされるんだか。半端無いステータスは飾りかy『黙れと言っておろうがぁ! 朕を誰と心得るか、元とはいえ劉帝であるぞ! ――頭が高いわ!!』……ようやく話せるようになったか」
ドラゴンのヘイト値を稼いでいると、ドラゴン――シュリュの頭のどこかでスイッチが入ったのか、彼女の言葉が聞き取れるようになった。
まあ、相手はまだ巨大なドラゴンの姿だけどな。
……にしてもシュリュ、一人称がまさかの『朕』だぞ。
朕といえば、天子――つまり皇帝や天皇のみが名乗ることを許された一人称である。
それを名乗るってことは、シュリュがそれに該当する存在であったということでだ。
彼女の口ぶりからして、【元■帝】は【元リュウ帝】なのだろう(『リュウ』って、どういう字なんだ――辰? 龍?)。
とりあえず『帝』という部分が皇帝を意味していたことが、証明されたな。
「お前が何者かなんて知らねぇよ」
『……なんだと』
「この島にいる奴は、昔居た時代や大陸が全然違うんだよ。一々一々全大陸の全国を把握していない俺に、お前がどの国で『俺Tueee』していたかなんて、知るわけねぇ」
『……どうやら死にたいようだな、畜生が』
「ち、畜生?! ……ゴホンッ、その畜生ごときを相手にしておいていつまでも殺せず、逆に痛い目にあっている奴が何を言っているのやら」
『朕は今まで寝ておっただけだが? あまりにか弱い感触でな、気持ち良くて畜生の存在になど気付いておらんかったわ。ただ、その感触がだんだんと不快に感じてな、その発生源となる畜生をこうして処分しようと、朕が直々に動いてやっておるのだ。咽び泣いて甚謝しろ』
「(プチッ)……へ、へぇ~、さすがどこかの御国の皇帝様だな、御自身自らで御動きになられるとは。いや~見事なワンマンシップでございますね~。……そんなんだから、こんな島に封印されたんじゃありませんか?」
『(ブチッ)……ほぅ、言うではないか』
「いえいえ、お前さんこそ」
「『――ハハハハッ! ……ぶっ殺す!』」
同時にその言葉を発し――第二ラウンドが幕を開けた。
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