AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『最弱最強』 その10
『勝負は――『バカラ』に決定!』
「ほぅ」《へ~》
アリィが俺(とクー)に叫んだゲームタイトルは、『バカラ』であった。
「だけど、誰がやるんだ? あれって、あくまでどっちが勝つかを賭けるものだろう?」
ここで、説明をしておこう。
『バカラ』とは、2~3枚の手持ちのカードの合計の下一桁が、9を超えない範囲で9に近い方が勝ちというゲームである。
――ただし自分たちでそれを行うのではなく、それを行っている者たちへ賭けるのだ。
日常に例えるなら、『ハァ。アイツらまた喧嘩してるよ』『おいおい、どっちが勝つと思う?』『……■かな?』みたいな感じだ。
プレイヤーは、誰かと誰かが上記のルールで行っているゲームを観て、どういった結果になるかを予測する。
……それが『バカラ』なのだ(ボッチな俺は周りがそうして盛り上がっているのを見て、独りで寂しくその後の展開を考えてたよ)。
だからこそ、最低でもこのゲームには3人が必要となる。
――勝負をやっている2人と賭ける人の計3人が。
『フフン、【加留多】には自動シャッフル機能はもちろんのこと、自動プレイ機能も搭載されているの』
「それで、アリィは勝負の流れを自在に操れると……詐欺だな」
『ううん、さすがにそれは無理。自動系の効果は一度始めちゃうと、アリィにも関与できない――そういう決まりがあるみたいなの』
さすが【固有】スキルだ。
スキル保持者であろうと不正は許さないんだな。
……カードの魔力でどれかを分かるようにしていたことを思い出すと、真面目な部分と不真面目な部分、その両方を兼ね揃えたスキルだと思う。
「そっか、なら大丈夫か。よし、第三回戦を始めるとするか」
『……疑わないの? さっきだって、カードの魔力でズルしようとしてたのに』
「別に。だって、気にするようなことでも無いだろう。神経衰弱の時のアレだって、一度注意したらやろうとしなかったんだ。それをわざわざ穿り返す必要も無い。
最初だったんだ、誰だってミスぐらいするさ。大切なのはそのミスをどう活かすかだ。
アリィはそのミスを活かして、ちゃんと俺に【加留多】の機能を教えてくれた。なら、俺はその誠意に応えて信じるだけだ」
『……ふ、ふ~ん。メルスって、もしかして馬鹿なの? 会ったばかりの人をそんな風に信じて、騙されていると思わないの?』
「騙されていても、それが俺のためになる騙しだったのなら構わないと思っている。
あと、アリィは嘘を吐いてないんだし、その仮定は成立しないだろ」
アリィの言葉に、嘘は含まれていなかったと――(精乱看破)がそう教えてくれたしな。
『そ、そうなんだ……アリィには良く分からない考え方だよ』
「まあ、こんな所にいるってことは、色々とあったんだろうな。俺はその考え方をアリィに押し付けたりはしない。しないが……そっちの方が、楽しくないか? 人を傷付けるためじゃ無くて、人を喜ばせるために騙す――そんなブラフはさ」
別に嘘を吐けって言ってるわけじゃ無い。
ただ、相手に気付かせないように思考を誘導した方が、それができると言っただけだ。
――実際俺も、何度か真実から目を背けさせられてるしな。
『……そんなこと、考えたこともなかった』
「本当に殺伐としたところに居たんだな。無いのか? ソイツに内緒で準備して、何かプレゼントを渡す――的なことは」
『友達……いなかったから』
「ま、その性格じゃそうなるよな。……それなら、俺が勝った時、もう一個勝利報酬をくれないか?」
『え~、アリィが負けてるのに、なんでそんなこと承諾しないといけないのさ』
「急にテンションを戻すんじゃありません。ここは、メルスさんが一体どんな報酬を求めるかを訊いて、そこに感動する部分だろうが……本当に、空気読めないな~」
『どんなほうしゅうがほしいの? (棒)』
「……そんな低いテンションで訊かれて、答えられるか! 終わるまで絶対言わん!」
『メルス、面倒臭いね』
「ふんっ、知るか!」
うんうん、ボケができるぐらいにはアリィのテンションも戻ってきたみたいだ。
さっきまでの話、凄い深刻そうに話すから心配で心配で……。
でも、これなら大丈夫そうだ。
……だが、問題が一つ。
「(クー、いつまでも不貞腐れるなよ)」
《……期待、してたのに》
アリィが俺に勝つためのゲームを用意することを、楽しみにしてしていたクーである。
ゲーム内容が『バカラ』だと訊いた途端、ご覧の有り様である。
「(プレイヤーは干渉できないゲームなんだろう?)」
《運ゲーだけど運ゲーじゃ無いもん。掛け金のコントロールで勝敗が決められるもん》
……いつから語尾が『もん』になったんだよ。いや、確かに運ゲーだけどさ。
「(ほら、俺の運って凶運かつLUC値は0だし、普通なら負けるって)」
《ふ~ん……クーが負けると思ってるの?》
「(いいや、全然。それはあくまで俺だけの時の話だし、だから説得しようにもできないんだろうが)」
最強をイメージして創ったんだ。
運なんて関係無く勝利するだろう。
だからこそ、説得の仕方に苦労するんだ。
『メルス、もう始めるよ』
「あ、ああ、分かった。(とにかく、クーは全力で勝利してくれ。多分それがベストだ)」
《は~い》
そんなこんなで、第三回戦始まります。
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