AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『最弱最強』 その07



 少しだけ粘って説得してみたが、怪しまれたため失敗となる。
 なので、予め眷属と遊ぶために作っておいたトランプを、さっさと"収納空間"から取り出して使うことにした。


「ほら、一応何か細工してないか確かめてみろ。後で何か言われるのは嫌だからな」

『え、良いの?』

「そりゃあカードに違いがあっても困るからな。絵柄はハートとスペードとクラブとダイヤで、事前にジョーカーは抜いてあるぞ」

『…………』

「――それと、魔力は籠められていないが、外部から籠められた魔力を撥く性質は持っているからな」

『ウグッ、ど、どうして分かったの!?』

「偶にいたんだよ。自分の魔力を薄く纏わせて、カードを見分けようとする奴が」


 ――ヒントは骸骨である。
 初犯だったので見逃したが、それ以降は現在使用しているこのトランプを用意した。
 ちなみにだが、これは元【生産神】の力をフルスペックで使った神器級の代物だぞ。


『で、でも、魔力を一切持たないカードって言ってたじゃん!』

「ん? 何を言っている。俺の・・魔力を一切持たないカードを使うって言ったんだろう」

『……あ、本当だ』


 どうやら相互の認識に不備があったみたいだな。
 ……でも、だからといって細工をしようとするか?
 信じてもらうために、カードを見せたっていうのに……。


 閑話休題やれやれだな


 あれからもう一悶着あったが、そろそろ始めたいので詳細はカットしよう。

 現在床には、52枚のカードがバラバラに散乱している。
 正しく並べるのも面倒になったためだ。

 もちろんカード同士が重なるということは無いが、向きが適当となっている。
 シャッフルをしてから裏のままで適当に並べたカードを、俺とアリィが向かい合わせに見つめているのが現状だな。


「――よし、それじゃあ始めるとしますか。
 先行はどっちがやる?」

『……メルスからやって。アリィはそれも見ておきたいから』

「……ふっふっふー、ほんとうにそれでいいのかな?(棒読み)」

『どういうこと?』

「もし、おれがカードのばしょをぜんぶしっていたなら……さいしょでぜんぶとっちゃうぞー(棒読み)」

『う~ん……やっぱり後でいいや』


 チッ、やっぱり駄目か。
【拈華微笑】と違い、とりあえず上がっている(演戯)も使ったんだが……俺の大根役者級の動きじゃ駄目だったのかな?


「……そうか、なら俺からやるぞ」


 そして、ゲームが始まった。


ゲーム割愛
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『――ど、どうしてこんなことに……』

「だから言ったじゃないか。本当にこれで良いのかと。……俺だって、本当はやりたくなかったんだ。だけど、アリィがあんなことを言うから」

『こんな、こんな展開になるなんて、絶対分かるわけ無いじゃん!!』


 アリィの元にはカードが1組。
 俺の元には――残り25組存在していた。


「(とある最強ゲーマーが、ある王族の少女に言ったんだ――駆け引きってのはもう始まっているものだと。要するに、アリィは俺の罠に引っ掛かったってわけだ。
 ……優しい優しいメルスさんは、可愛そうなアリィさんにヒントを教えてあげました。
 さて、アリィさんは一体いつメルスさんのタネに気付くでしょうーか?)」

《クーに訊いても答えはすぐに出ちゃうよ》

「(……いや、本人に訊いたらすぐに気付くだろうから、訊けないんだよ。だけどこのセリフ、一度言いたかったんだ)」


 このセリフって、原作には書かれてないんだよなー。
 暇だから問題を出して見た……でも、さすがにそれを訊くとバレそうだからクーにクエスチョンである。


《確かに、メルスは自分のスキルは使って無いよね……クーのスキルは使ったけど》

「「(アリィが自分で言ったんだもんな。自分は【加留多】を、俺はクーのスキルを使って良いって。俺はアリィの言ったルールに従ってこのゲームに挑んだんだ。何か不正行為を働いたわけじゃ無いよな?)」

《そう……だけどね》


 え、セコイ?
 最強ゲーマーにはなれないんだ。
 なりりなんか構っていられるか!
 元々ゲームを前提に創った聖武具なんだ。 ――今使わなきゃ、一体いつ使うの?(今でしょ!)


《……(う~ん、みんなが考える頼られ方と違うな~)。だけど、それはアリィを甘く見過ぎなんじゃないの?》

「(理解しているさ。アリィだって、傲っているだけで馬鹿じゃ無い。じっくり考えれば俺がやっていることにも気付くだろう。
 ここの島にいる奴って……どこか問題はあるけど、そこを直せば化けるんだよな~)」

《そうらしいね~。今までのメルスの行動を観てて、よくそう思うよ》


 ボッチな聖霊や引きこもりなお姫様、洗脳されてた元聖獣や心が読める剣士、マッドサイエンティストな骸骨や天然な学者、生物不信なハーフや……傲った少女。
 ――全員それぞれ問題があった。


「(えっと~、あれかな? 『君が勝手に一人で助かるだけ』だったと思う。
 俺は特に何もしていないだろう? 彼女達は、自分たち自身で変わることを決断したんだろうな。だから、アリィも直ぐに自分自身で考え方を改めるだろう。――【傲慢】でいるだけなら、何も変わらないことからな)」

《……ま、そういうことにしておこうかな》

「(なんだいなんだい、その言い方は! メルスさんの砕けやすい心が砕けちゃうぞ)」

《は~い、気を付けま~す……って、何かに気付いた顔をしてるよ》

「(おっ、やっぱり予想より早かったな)」


 顔を赤くしたアリィが、俺に責めよったのは言うまでも無いな。



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