AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『最弱最強』 その04



 ――暇だ。


「なぁ……まだ決まらないのか?」

『もうちょっと……』

「もうこのセリフも十回目なんだが」

『あと、もうちょっとだけ……』


 アリィが時間延長を要求するセリフを言い続けるため、俺はそんなことを考えている。

 てっきり、無理ゲー吹っ掛けて俺をさっさと処理するのかと思ってたんだが……カントリーに買収されたのか元々ゲーム自体を好きだったのかは分からないが、真面目にやってくれてはいるみたいだな。

 だけど、だけどさ~、体感的に一時間くらい経ってるぞ~。
 暇なんだよ! まさか、ここまで本気モードで来るとは想定外だ。


《なら、メルスはどうするの?》

「(……いきなりだなクーさんや。折角秘匿していたのにバレちゃうやないか)」

《クーとしては、どんどん始めたいんだけどね。アリィが使うのがカード系のゲームだけと決まったわけじゃないけど、メルスが今までやってた無理ゲーよりは……面白いゲームにしてくれそうだし》

「(……いや、偶にクリアされてたじゃん)」

《傲り高ぶっていた時はね。チートウエポン大量所持して『俺Tueee!』してたあのゲーム……勝たせる気、無かったよね?》

「(……無理ゲーでした)」


 似非なミックス方言についてはとりあえず置いておくとして、先程の(遊戯世界)発動により、無事クーが覚醒した。
 ……あの作品イメージが濃かったからか、俺の考えるゲーマーの一部が混ざっている気がするけど(それが事実なのかどうかは、受肉してからじゃないと分からないけどな)。

 あ、覚醒したクーのステータスは、こんな感じだぞ――


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スペース・スター 製作者:メルス

聖武具:【純潔】 自己進化型:覚醒

RANK:X  耐久値?/?

今代の【純潔】所持者が創り出した星形の正十二面体
絶対遵守の決まりを定められる遊戯の世界を創れる
更に、所持者の頭脳・詐術系能力を補助する
また、この正十二面体は意思を持ち、攻撃や主以外の者を拒絶し、主の貞操の危機を防ぐ

装備スキル
(自我の花:クー)New
(遊戯世界)(完全記憶)→(仮想記憶)Upgrade
(超速解析)(無偽欺瞞)(貞操防御)(解析成長)

New
(精乱看破)(法則演算)(?)(?)(?)(?)(?)……

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 ――人格に関するスキル(自我の花)は今更説明する必要は無いが、他のスキルに関しては一応説明しておこう。

 実は【完全記憶】と異なり、覚えられる容量に限界があった(完全記憶)は、仮想の空間に記憶を突っ込み、今まで以上の演算能力を得ることができる(仮想記憶)になった。
 これにより、今まで以上にスキルが多用できるようになった……ふっふっふ、これで遂にぼくのかんがえたさいきょうまほうが使えるようになるんだ。

 ――後は残り二つのスキルの説明だな。

 (精乱看破)は名前の通りで、精神の乱れを看破できるスキルだ。
 まあ、文系担当の彼の努力を一部だけスキルにしたものだな。

 (法則演算)もそのままかな? 法則を読み取り、意思介入の存在しないものなら未来予知もできる。
 理系担当の彼女の才能を、一部転用したスキルだ。

 どちらも結局はゲーム用のスキルである。
 利便性に富むため他のことにも使えるが、どこまでもゲームに本気になっていた彼らの劣化版だ……戦闘にはあまり使えないな。

 彼らは比翼――二人で一人――だ。
 共にいるからこそ本領を発揮するのであって、一つに束ねて誰かが使ったところで……それは本来の力を発揮しない(当然だが)。


《――メルス、そんな自分しかいないみたいな、意味の無い前提条件は言っても意味が無いんじゃない?》

「(ま、それもそうなんだけどな。一人が駄目ならみんなでやろう……そんなどこかの銃士みたいなことを言う気は無いけど、俺だけでできることは少ないしな。お前達の優秀さにいつも任せてばっかりなのも、いつかはどうにかしたい部分だと思ってるぞ)」

《はいはい、どんどん自堕落になってくれても良いんだからね。クーたちは、メルスがそういう関係を――比翼として傍にいてくれることを――望んでいるんだから》


 甘く蕩けてしまいたくなる誘惑に、最近の俺はだいぶ堕ちそうになる。
 眷属の大半がそれを進めてくるんだ……拒絶する方も精神をだいぶ疲れてくるよ。


「(……悪いが、無理だな。自分の感情すらままなっていない時の答えなんて、薄っぺらいものにしかならない。せめて自分の本当の感情とやらがお前たちにそれを求めたら……そのときは、お願いするよ)」


 ミシェルは言っていた……俺の感情は本心からのものじゃないって。
 なら、俺が今抱く彼女たちへの思いは何なのだろうか。

 ――怖い。

 それを知った時、ナニカが変わってしまうことが。

 ――恐い。

 それを知られた時、ナニカを変えられてしまうことが。

 後半に関しては少々強引だが、俺自身の感情が出てくることによって、精神攻撃優しい言葉も効くようになると思われる。
 そうなると……。


《クーたちの誘惑に乗っちゃうってこと?》

「(そう、それがあるかもしれない。俺が考える俺は、流れに従って生きていたからな。お前たちが俺を絶対に逃げられないように包囲していたら、本来の俺なら絶対に諦めるはずだし)」

《だけど、メルスはまだ逃げている》

「(そうそう、その言い方はストレート過ぎるが……大体合ってる。そうなったら、俺はお前たちのヒモになりそうでな)」


 だからこそ、忌避しているのだと思う。
 折角捧げようと思った意志も、すぐに失ってしまいそうで……。


《メルス、クーたちはn『やったー、遂にできたー!』……ううん、何でもない》

「(ん? そうか、ならいいけど……言いたくなったら言えよ)」

《ありがとう、メルス》


 どうやらやっと完成したみたいだな。
 クーとの念話を止め、意識をアリィの方へと向けることにした。



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