AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と再来のショタ
「……にしても、やっぱりありゃあ危険なスキルだった」
《ごしゅじんさまー、大丈夫?》
「【物体再成】で体は元の状態に戻した……けど、普通の人がやったら駄目な動きをしていたぞ」
《ご主人様が僕たちを使って戦うというよりも、僕たちの方がご主人様を使って戦うという感じでしたよ》
「……まぁ、最も最適な戦い方ってのは、武具を効率良く使う戦い方だからな。人体の限界を無視すれば、さぞかし上手に戦えるんだろうな」
先程も説明をしたが、最適な行動を取る為のスキルなので、人体などどうでも良いような動きを取る。
先の戦闘の際はガン=カタとのような戦い方をしていたのだが、筋肉が裂けるような回避法を取り、足や腕が千切れるかと思う程、力を籠めて蹴ったり殴ったりしていた。
その動きを後から見直すと……もはや変人としか呼ばれそうにない動きだったな。
閑話休題
「――で、ここか。普通に見ると全然分からないんだが……視れば分かるかな?」
辿り着いた丘の上の木には、見た感じは空洞などできておらず、黒い葉っぱを付けただけの普通の木に見えるのだが……。
(――"幻滅眼""魔視眼")
「おお、本当だな。洞が見えるようになったぞ。魔法の反応もあるし、確かに結界があるみたいだ」
神眼に力を籠めて発動させると、くっきりと穴がそこには見えていた。
「う~ん……。視た感じは俺じゃあ入れなさそうな大きさの穴だが……ガリバーなトンネルみたいに大きさを調整してくれるみたいだな……。だけどそれをそのままってのも、何だから性に合わないんだよな~」
木に出来た穴の直径は大体大仏の鼻と同じで――30cm×37cmだと思われる。
今の俺には通るのが難しい穴なのだが、よく見ると肉体を縮小化させる魔法が結界通過時に発動するようになっているようなので、去る者を拒まない仕様だな。
(――"幼化鱗粉")
降って来た鱗粉は俺の体を縮ませ、大体10歳程の容姿へと変化させていく。
《ねぇねぇごしゅじんさま?》
「ん? ……どうしたんだ?」
自分の声はいつもより高く、本当に子供になったことを実感させる。
そんな驚きが一瞬で塗り潰されるような発言を、グラはすぐにしてしまう――
《――前にもその魔法を使っていたけど、調整はしっかりとやったの?》
「あっ……オーマイゴッドー!!」
《ご主人様、前に気を付けると言っていたではないですか》
「なんてこったパンネコッタ!」
そんな面白くもなんともない発言をしてしまう程、今の俺は焦っていた。
現在の俺の場合、この状態が約十日程発動しているという計算になってしまう。
かつての俺だったなら、(変身魔法)で元の姿を偽装することが可能だったんだが――。
「――"へn……(誰だ! 人の努力を無駄にする奴は!)」
俺が魔法を発動しようとすると、どこからか魔法に干渉され、(変身魔法)は失敗した。
「ショタか! ショタの俺モードを見て、一体何がしたいんだお前らは!!」
そう、魔法の発動を防いだのは眷属たちの誰かである。
魔力波を偽装されていたため、誰かまでは特定できないが……眷属特有の気配(?)がしたので、誰かがやったということだけは理解できる。
「……百歩譲ってTSだったら止めないぞ。俺だってシャインに強いたし、クエラムやネロがそうなっても止めなかったからな。だけど、俺は名探偵じゃないんだから戻っても良いだろう!? 別に毒薬を使ったワケじゃ無いだろうし、そもそも黒色の組織に関わった覚えも無いんだ。だから早く、あの酒を俺にくれよ!!」
《ごしゅじんさまは未成年だから駄目だよ》
「分かっとるわい!」
ちなみにだが白乾児や辣酒、乾酒とも呼ばれるあの酒は、蒸留酒らしいぞ。
《自分で創られないのですか?》
「情報が足りないから無理だ。実際に飲んだことがあるならともかく、無から有を生み出すのは、ちょっと今のままじゃ難しい」
元々錬金術はそれを可能とする技であったと考えるから、完全に否定はできない。
だけど、今の俺に解毒薬は作れないし、状態異常でも無いから回復することも無理だ。
いてつかせる波動も黒い霧も使えない今の俺には、どうすることもできないぞ。
「装備は別に自動調節だし、魔法を発動させるのにも武具を振り回すのにも支障は無いから別に良いんだけどさ~……」
どんな状態でも戦闘はできるよう、必要最低限の行動行えるように鍛錬していたため、取り敢えずはなんとかなるだろう(贋造の魔女で子供にされた最強の魔術師も、普通に攻撃ができていたしな)。
「……それならいっか」
《いいの~?》
《大丈夫なのですか? そのお姿で》
「本当に危険な状態になったなら、ホシも元に戻してくれるだろう」
きっと戻してくれるさ。
常識人なら、常識人、常識……。
そういえば……眷属に、常識的な奴っていたっけ?
俺の願いから生まれた武具っ娘たち、色々と訳ありだから封印された強者たち……。
プレイヤーの方ならいるかもしれないが、今この場に干渉できる筈がない。
「……なあ、グラとセイは俺のこの姿を見てどう思うんだ?」
《ぼくたちと同じくらいだから、一緒に遊べると思うよ》
《……その、可愛いと思いますよ》
【聖獣王】因子を未だ発動中のため、今の俺はケモ耳少年な状態だろう。
別にそれがどう、と言うワケでは無いが、モッフルなら俺を誘拐しようとするんじゃないかな~?
可愛いと言われるぐらいだから、多少は今の――<畏怖嫌厭>される俺よりは容姿が優れているだろうし、ケモ耳さえあれば良いかと考えるケモナーならば、俺をどうこうしてしまうかも知れない。
……あれ? なんか話が逸れている気がするな。
とにかく俺が言いたいのは、本当にこのまま約十日間やっていかなきゃいけない気がするってことだ。
「……ハァ。ここでクヨクヨしてても仕方ないか――グラ、セイ。行くぞ」
《《了解》》
さて、今回はどんな奴がいるんだろうな。
俺は少しそれを楽しみにしながら、木に存在する洞を潜る――
スカッ
「――って落ちたーー!!」
そんなこんなでメルスinアンダーワールドが始まる……みたいです。
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