AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と聖骸



 まぁ、突然の説明だからな。
 俺も突然そう言われたら、そんな反応しかできないと思うぞ。


「順を追って説明しよう。まずお前達は、ネロ――魔王の影響でゾンビになった」

『……ネロ? え、えぇそうです』


 ん? 何かおかしいこと、言ったかな?


「お前達はゾンビになって、そりゃあまぁ上位の魔物になっていたワケだ。何せヒーローやセージだ……種族名だけで苦戦することが分かったぐらいだしな」

『アンタ……すぐに無効化したわよね』


 いや、かなり面倒だったんだぞ。
 手順を踏まなきゃ対応されそうだったし。


「……で、そんなゾンビ達は何処かの偽善者によって浄化をされた訳だが……。ウェヌスさん、聖骸って知ってるよな?」

『……その名の通り、聖人達の遺骸のことですね。ワタシの知っている限り、聖骸を所持している国はあまり無いと思いますが……。聖骸を包んだ布には神聖な力が宿るとされており、ある国の王の服にも使われているとも言われています』

「神聖国? ……まぁ、そんな有名な聖骸でありますが、要は聖氣を体に大量に含んだまま死んだ聖人の死体だ。聖氣の持つ神聖な力の影響でアンデッドになることは無く、ただの死体として今までは知られていたワケだ」


 アンデッドを作る為にはミヌスが、聖骸を作る為には聖氣が必要……そう、本来なら聖骸を使ったアンデッドは生まれる筈が無かったのだ……【矛盾】などというそんな無茶を通せそうなスキルの持ち主がいなければ。


「だが、お前達はアンデッドの身のままで聖氣を浴びて存在している。それは、聖骸と同じ状態を意味する。だけど、お前達とただの聖骸には分かり易いな違いが存在する……その通り、明確な自我が残っているということなんだ」


 死んだからこそ、聖人の死体は聖骸と呼ばれるようになった。

 だが、聖人が蘇ったとしたら?
 聖人と呼ばれるような人物が未練を残す筈も無いし、死の間際で負の念を知ったことでアンデッドになったとしても、それはただ、アンデッドになったばかりの頃のアマル達と似たような存在になるだけだ。

 少し頭のおかしい人や天才はそれでも、別の策を見つけ出すことができるだろうな。
 そしてきっと考えられ、実行されたんじゃないか……アンデッドになった体に聖氣を流し込み、後天的に聖骸を生み出して後から魂魄を定着させるという方法は。
 ――だが、それはほぼ不可能だ。

 ミヌスを操る技術の終着――アンデッド生成術。
 回復魔法の終着点――蘇生魔法。

 肉体を再び動かす為のこの二つの技術は、決して相容れることは無かった……(ry。


 結局のところは、莫大な魔力と聖氣と死霊術と無茶を通す力さえあれば可能なのだ。
 俺にしかできないというワケじゃ無い。

 あれじゃないか?
 どんなスキルでも習得できる主人公や、多才なヒロイン達を堕とせる主人公なら余裕だろう。
 例え、それを行うのが一人だろうが複数人だろうが……最終的に主人公達なら、聖骸を創りだせると思うぞ。
 ――だって、主人公だしな。


閑話休題俺流主人公論


「――そもそもとして、聖氣ってのは普通の奴には感知できないものだしな。その結果としてお前らのステータスに聖骸という単語を見つけることは至難の業だ。俺だって、普通に鑑定した時は普人や森人って表示されていて気付かなかったしな。バレることは無いと思うぞ」

『今の私達は結局、他人から見られるとどういう存在なんですか?』

「ん? 魔物か魔族だぞ、それも珍獣みたいな希少種。さっきから言ってるが、本来ならあり得ない存在だしな」

『……そうですか』

「ま、まぁ、俺なんて、自分の種族が俺しかいないから、絶滅危惧種なんだけどな。……それより、今後のお前達のことなんだが――どうしたいんだ?」

『どうしたい……とは?』


 全員首を傾げているんだが……え、何も決めてないの?
 何かあるでしょ!


「いや、例えば国に戻りたいとか、諸国巡りがしたいとか――何か無いのか?」

『……メルスさん、貴方は私達に自由をくださるのですか?』

「俺に人を縛るなんてことをできないんだ。精々、眷属として仮初の主従関係を築くぐらいだな」


 ま、ある意味では{夢現空間}内に拘束してるとも言えるけど。


『眷属……ですか?』

「そ、眷属。俺が持っているスキルの大半が使えるようになったり、入手できる経験値が増えたりする……まぁ、後は運命共同体っていうか家族っていうか……。とにかく仲間が増えるな」

『『『『…………』』』』

「勝手に聖骸にしちゃったりしたんだ。スキルだけを無償で渡すこともできるし、武具を貸し与えたりすることもできるから、別にならなくても良いけどな」

『……なっては、駄目なのですか?』

「一応訊くが――何にだ?」

『眷属に……です』


 自分からなりたいって言う奴って、あんまりいなかったから新鮮だな。
 ……だけど、眷属になった翌日には、俺の記憶を見た所為か必ず何か言いに来るんだよなー……そんなに問題になる部分があるのかね? ――グーが編集した俺の記憶は。


『私達はアンデッドになっている間も意識があった為、様々なことを話し合いました。その中に、もし再び肉体を自由に使えたら……という議題がありました』


 ふむふむ。
 ……というか、意識があったんだな。
 ってことは、俺がネロと話している時も普通に聞いていたんだろうし、闇の間にいた時も、アマル以外の奴らも含めて俺達の会話を聞いていたってことか……なんだか恥ずかしいな。


『もしそれが魔王に操られている最中のことだったら自害を選択し、誰かの干渉によるものだった場合はその人を見て決める……それが話し合いの結果でした』


 自害って怖ッ!
 良かった~、支配権を奪い取った後もある程度制御しておいて。
 もししていなかったら勝手に死んでるところだったよ。


『そして、今までの貴方の行動……私達は決めました、貴方に忠誠を誓おうと。かつて英雄と呼ばれ、魔王に敗れた末生を辱められ、過去の栄光の見る影もない私達ですが、貴方は私達を受け入れてくれるでしょうか』


 そう言うとアマル達は、なんか騎士がやってそうな膝立ちのポーズを取る。
 この質問、意味があるんだろうか……というかこの展開、どこの主人公的な展開なのだろうか……。

 ま、そんなことはどうでも良いか。


「勿論だ、これからよろしくな」


『えぇっ!』『おうっ!』『『はいっ!』』


 こうして、新たな眷属家族が増えました。



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