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山田 武

偽善者と(万象変化)



 翌日、俺は夢現空間を出て、南フィールドでふらふらとしていた。いくら(実力偽装)が完璧に出来たとしても、それで何とか出来るのは能力値だけだ。スキルの方は自分自身で制御ができるようにならなければいけない……という訳で、実戦を行いに来たのだ。
 監視役に付けたギーと共に歩いて魔物を探していると、【気配知覚】に反応があった。
 早速戦闘準備を行おうとしたのだが、そこで一悶着あった。


『――本当にやるの?』

「(あぁ、今回の作戦には、ギー、お前が一番打って付けだった。だから俺はお前を監視役として付けたんだ)」

『だけど……さすがにこれは……』

「(これは、いつかは通らなければいけない問題だったんだ。それが早いか遅いかなんて、気にすることなんかじゃない。……それに、俺はお前達の好意に行為で答えたい。まぁ、あくまで自己中な意見だけどな)」

『……分かった、それがメルスの選択なら、私はそれに従う』

「(すまない、こんな役割を任せてしまって。
 本当なら、自分で何とかしなければいけなかったんだが)」

『大丈夫、むしろ役とk……(コホンッ)役に立てるなら嬉しい』


 ……ん~? 最後ら辺がおかしかった気もするが、問題無いだろう。
 さて、魔物を狩りつくすぞ~……ギーが。
 俺は、ギー武具として装備されながら、そんなことを考えていた。


小休憩中
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 俺が武具になっている理由は、スキル(万象変化)を発動した為だ。
 今、受肉した武具っ娘のステータスは俺を超えている(彼女達のステータス計算は、[眷軍強化]のLv×2×0.01×俺のステータスだ。Lvが68で、ステータスが47470の現在は64559だ……みんな強いよなー)。
 そもそも俺に、スキルを試したいという考えもあったので、眷属の中で最も武具の扱いに長けたギーに、俺を扱う役割を頼んだのであった。
 狩りも一段落しているみたいなので、少し使い心地を聞いてみよう。


「(ギー、扱い辛くないか?)」

『ううん、凄く手に馴染むよ。剣としては使えることが分かったし、次の戦闘は別の武器として使ってみたらどう?』

「(そうだな、なら何が良い?)」

『…………ベレッタキ○ジモデル』

(何か、凄いマニアックな物を要望するな~……まぁ別に良いけど。ちょっと待ってろ)


 ギーの要望通りどこかの武装探偵が持ってそうな銃をイメージしながら、(万象変化)を発動させる。
 アニメや漫画でしか見たことが無いので、ガンマニアへの土下座必須級でにわかな俺には、本来銃の再現は無理な筈だが……ここは異世界。本来では使えない魔力を使えば――


「(――うん、完璧だな。ギー、できたぞ)」

『…………』

「(あれ? どうしたんだ?)」

『……やっぱり模倣できない』

「(ん? 摸倣しようとしていたのか、ギー。
 神器は模倣できないって前に言って無かったか?)」

『みんな頑張ってるし、神器も模倣できるように頑張ってみようかなって……』


 最近、眷属達が誘いに乗ってくれないのには、そんな理由があったのか。
 ……勝てないなぁ。一つのものに懸ける思いも、努力の量も。
 俺は返せるのかな? 好意を行為で。


「(神器を模倣するなら、完璧に模倣するのは諦めろ)」

『……え?』

「(神器は模倣できないからこそ、神器だからな。……だけど贋作なら多分できるだろう。
 どこかの贋作者みたいに、RANKを落として再現してくれれば、必要な能力だけ搭載した武具を俺が創ってギーに渡すよ。そうやって集めたスキルを纏めれば、ギーももっと強くなれると思うぞ)」


 まぁ、ギーを創る時にそんな能力をイメージした筈だ。摸倣したスキルを束ねて、新たなスキルを創る――

 ――偽物が、本物を超える為のスキルを。


『……そ、そういえば、メルスの詳細が全く分からないんだけど。どれぐらい強いの?』

「(ん? まぁ、とりあえず見てから、どう思うか教えてくれ――)」


 俺は事前に見つけておいた、武具としての俺のステータスを表示した――


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神器メルス 

神器:○(その時による)

RANK:X  耐久値∞

堕ちた神メルスの肉体そのものを武具化した神器 
メルスの眷属にしか扱うことができない
感情の高まりでステータスに補正が入る
また、メルスのスキルの一部が使える

装備スキル
(俺の持つ全ての一般スキル)

〔隠しスキル〕
(○神の加護)(不明の寵愛)
\加護リスト
(俺の持つ全部の加護)

俺の補正無しの能力値+α

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 ワケが分からない神器になっていた。
 眷属しか使えないのはまだ分かる。俺が眷属しか完全に信じていないからな。
 感情による補正も良く分かる。俺の始めに手に入れたチート? が{感情}だったから。
 俺のスキルの一部が使えるのも分かる。[スキル共有]でいつも使っているから。
 ……だが、何故俺が神になっているんだ。堕ちるも何も、元々神になってないよ!!


「(ギー、俺は神になってたっけ?)」

『称号にあったでしょ。確か……下級神』

「(あっ……(察し))」


 でも、何をもって堕ちたと判定されたのだろうか、運営への反逆? それともリアの件? ……ま、考えてても仕方ないか。


「(……よし、そろそろ休憩も終わりにしようか)」

『分かった、ついにM92FSが火を噴く時』

「(魔法銃だから、他のも吹けるけどな)」

『……楽しみにしておく』


 それから全魔弾を撃ち終えるまで、俺達の狩りは終わらなかった。



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