AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『永劫の眠り姫』 その08



 なんやかんやの闘いの果てに、俺と龍は最後の一撃をぶつけ合うことになった……色々とあったのさ、色々と。
 龍は腹に魔力を溜めこんで、最大火力の息吹を吹き放つみたいだ。恐らく、威力は俺が邪神の欠片に放った息吹とは比べ物にならない程、凄まじい物となるだろう。
 だが、俺も負ける訳にはいかない。リアを外に連れ出す為にも、ここで倒さなければ! 
 俺はギーが形を変えた大剣を握りながら、魔力をギーに流し込んでいく。


《……はあぁんッッ!》

「(ちょ、ちょっとギーさんや。止めてっ! 反応しちゃうからっ!!)」


 ギーは俺が魔力を流し込むと、何故だか過剰に反応するのだ。そのお蔭で、その反応を知った他の眷属達も、魔力を流せと言ってくる。
 基本的に、俺の聖・魔武具が消費するMPの量は安いものではないので、あんまり無駄遣いはさせないでもらいたいよ……トホホ。


閑話休題今はギーを


「(皆にバレちゃうから、静かにしてくれよ。これは二人だけの秘密にしよう……なっ)」

《ッ!? 二人、だけの、秘密?》


 ……何故区切ったし。


「(……あ、あぁ。これは二人だけの秘密だ。だから、もう少し静かにできないかな?)」

《分かった、頑張る!!》


 何を頑張るのかは知らないが、これでもう大丈夫かな? そう考えた俺は、魔力の他にも別の物をギーに流し込んでいく。


("龍氣"+"鬼氣"+"神氣"+"合氣闘法"="龍鬼神氣")


 とりあえず、あるスキル全部を(合氣闘法)で混ぜた物なのだが、それぞれが強力な物なので力になるだろう……そんな簡単な風に考えていられた時も、昔はありました。


《……ひいいっっ! ……いやっ……》

「(だから、変な声出さないで!)」


 落ち着け、落ち着くんだ俺。落ち着かなければここで、試合終了だぞ。……というか、俺はギーに氣を流しているだけだよな? なんで少しアダルトな感じになってるんだよ!! というかギー。お前まだ0歳だろ、そんなセリフ言っちゃいけません!
 と、とりあえず素数を数えるんだ――。


何とかして流し込んだ2,3,5,7……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


《メルス……けだもの》

「(なぁ、俺は氣を流していただけだよな?)」

《……知らない》


 何か大切な物を失いながらも、何とか龍が魔力を溜めこむ前に注ぎ切れた。ギーは何故か嬉しそうに息を殺そうとしていたのだが、喜ぶ要素が何処にあったのだろうか。分からないことだらけだが、とりあえずはこの戦いの決着をつけることにしよう。


「悪いな、その気になればいつでも撃てただろうに」

『ヒッヒッヒ、わたしはこれでも元は普通に魔女をやっていたからね。それなりの礼儀って物はあるさ。それに、恩を売っといた方が良いこともあるしね』

「……そうか、すまないがリアの為だ。俺ができる偽善の範囲には、運命神に加担したお前は含まれていない」

『……そうかい。それなら、決着をつけるとしようかね』

「……あぁ、そうだな」


 この会話を終えた少し後、溜めていた物を解き放った俺と龍が同時に叫ぶ!


「『ウォオオォォオォォオォォォッ!!』」


 黄緑色の柱と、混沌色の斬撃がぶつかり合う。龍の創りだした黄緑の柱は憎悪、怨嗟、失意といった負の感情が。大剣から放たれた斬撃からは、【傲慢】【憤怒】といった負の感情の他にも、【慈愛】【希望】といった正の感情も感じ取れる(負の感情入れなくても良くね? ってツッコミはご勘弁を)。
 威力はあるが一方しかない息吹と、威力は無いが両方を兼ね揃えた斬撃。二つの力は均衡状態に陥る。……だが、まだだ、まだ行けるっ!


「――目覚めろっ、"龍鬼神氣"!!」


 腰に巻いた【希望】の聖武具"希望のベルト"を使い、俺の持つ"龍鬼神氣"への抽象イメージを具現化させる――


『グギャアァァァァ!!』


 ――斬撃は角の生えた龍の頭部へと姿を変えて、黄緑色の柱を消し潰していった。


「いっけえぇぇええッ!!」


 そして柱が無くり、龍が消滅する頃には、俺とリアの他に、この場に存在する者はいなかった。


《……王女様を頼んだよ、王子様》


 そう聞こえた直後、頭の中に大量の文字が一気に流れ込み、意味を成して羅列しているイメージが浮く――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

個体名"ターリア=ペロー"の奪還に失敗
これにより、童話クエスト『永劫の眠り姫』が消滅しました
『永劫の眠り姫』が消滅したことにより、????の欠片は、?????の元に移動します

~ERROR~

メルスの『運命略奪者』が発動しました
これにより?????の元に行く予定だった????の欠片は、メルスの元に移動します

運命改変が成功しました
魔龍マレフィセントより、スキル(雷雲操作)(愚物生成)を強奪しました

特殊条件達成
(特殊因子:マレフィセント)を入手しました

『永劫の眠り姫』の運命はメルスの支配下に置かれ、運命神の管轄外に置かれます
現在『永劫の眠り姫』に掛けられた呪いの解除権はメルスの元に移譲され、以降自在に開封が可能となります

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 色々とツッコミを入れなければいけない所もあるが、今は置いておこう。
 俺はリアの所に真っ直ぐ歩いて行く。
 そして、彼女に手を差し出して――誘う。


「……リア、俺と一緒に外に出ないか?」

『――うんっ!』


 俺の手を取った彼女が見せた笑みは、今まで見た中でも、最も輝いていた。



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