AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と報酬カタログ その04
???
『メルスさんの今までの行動はいつも常識外れだと、前に言いましたよね?』
そういえば過去の王都イベントの時に、レイさんからそんなメッセージを頂いたなー。
思い出したのでレイに頷く。
『ある時は(空間魔法)で巨大な結界を創り、他のプレイヤーが通行不可能にする。またある時には闘技大会で他のプレイヤーの固有スキルを模倣していく。そしてある時には、イベント中の全参加者を敵に回して圧勝する。おまけに、運営側が用意したクエストを運営の想定外の方法で強引に達成……偶に他のプレイヤーからGMコールがあって、『あいつ、チートを使ってるんじゃないか?』とか、『アイツは本当にプレイヤーなのか?運営のイベントNPCじゃ?』等の意見が来たりしますね』
「へぇ~」
俺がβテスターだったら、『ビーターだ』
とか言って貰えたのだろうか。俺の持ってるチートっぽいヤツって言えば、{感情}経験値ブーストぐらいなんだが……(それも公式の夢幻スキルだしな)。
『運営がメルスさんを監視していて、最も驚いていたのは――個有スキルです』
「個有スキルって言うと、[眷軍強化]が属している、あの?」
『メルスさんの個有スキルは、[眷軍強化]と言うのですね。こちらでは名前までは確認できなかったので知れて良かったです。
個有スキルは、SPが999P溜まった廃プレイヤーの為に用意されたシステムです。自分だけの専用スキル……誰でも欲しくなると思いませんか?』
「まぁ、実際取ったしな」
『ですが、本来なら999P溜まるのはもっと先の話、1・2年後の予定でした。その為、まだしっかりとした設定ができておらず、創れる個有スキルに上限を設定してませんでした。
しかしそんな中、メルスさんは手に入れました――運営側でもまったく制御してなかった個有スキルを。
メルスさんの[眷軍強化]とは、どのようなスキルなのですか? 運営側では、他の者を運営の監視から外す効果ぐらいしか確認されていないので』
「秘密にしてくれるか?」
『……姉妹達には伝えても良いですか? そうしておかないとまた、今回みたいなことが起こりそうなので』
つまり、俺を呼べないから餌で釣ると。
……うん、引っかかるな、絶対(この時シンクは、別方向を見て口笛を吹いていた)。
「分かった、ただし姉妹達だけだぞ」
『ありがとうございます(ニコリ)』
「ッ!? ……お、俺の[眷軍強化]はな――」
一瞬、レイの笑顔に見惚れていたのを隠す為に、俺は[眷軍強化]の能力を饒舌に説明していった。とは言っても、隠すようなスキルでもないしな。だって、スキルと経験値が共有できるだけだぞ。後できることと言えば、念話ぐらいだし……それもプレイヤーならばウィスパーを使えば良いしな。
とりあえず説明を終えると、レイは何やらブツブツと言い始めた。
『ねぇねぇ、メルス』
「ん? どうしたシンク」
『メルスって凄かったのね!』
「いや、別に俺以上に凄い奴なんか、AFO内には巨万といるだろう。俺は只、自分のやりたいことを俺のやり方でやっているだけだ。どうせ俺は、偽善しかできない奴だからな」
『でも……』
「ん?」
『そのお蔭で、救われた人もいるんじゃないの? メルスが手を差し伸べたことを喜んでいる人もいるんじゃないの? メルスに感謝しているんじゃないの? 
少なくとも私は、メルスに真紅って名前を貰えて嬉しいわ』
「…………」
『な、何か言いなさいよ!!』
先程まで俺とレイとの会話を(ある意味)黙って聞いていたシンクが、突然そんなことを言う。
――そうか、あまり気にしたことは無かったけど、そういった捉え方もあったのか。
だけど、信仰されるのはちょっとな……。
「すまん、シンクの言葉が嬉しくてさ。後、シンクに見惚れてた」
『――――ッ!!』
やっぱり、女の子にそんなことを突然言ったりするのは不味かっただろうか。と、考えていると、ブツブツ言っていたレイが元の状態に戻った。
『……シンク、確かメルスさんに願いを一つ叶える権利をあげると言ってましたね』
『言ったけれど、それがどうかしたの?』
『メルスさん、もし願いが叶うとしたら貴方はどうしたいですか?』
いきなりだな―。いま思いつくものとなると、(直感)が教えてくれたものぐらいだぞ(最近、(直感)がだいぶ有能な気がする。よし、某召喚士に肖って、(直感)を(直感)先生と呼ぶことにしよう)。
『とりあえず、言ってみるだけですよ』
そんな俺の考えを読んだのか、レイはそう言ってくれる……なら言ってみるか。
「なら、俺はお前達GMが欲しい」
『ど、どういうことですか?!』
あれれ~、そう言うとレイが詰め寄って来たぞ~。いや、言えと言われたから言ってみたんだが。
少し落ち着かせようと沈黙していると、レイは独りでに答えを見つけたのか、顔を上げて口を開く。
『……成程、つまり、私達の上位者権限が欲しいと言うことですか? そんなものなら普通に私達以上の権限を用意できますが――』
「いやいや、そんなものは要らないからな。
俺が欲しいのはお前達自身であって、そこにある付加価値は要らない」
『『~~~~!?』』
二人共が、さっきまでのシンクみたいに(だけど顔色はさっきまでのシンクより)赤くなっていた。
いやだって、権限なんぞ貰っても使い道が無いしな。お金やスキルや土地すらも、AFO内では大量に持っているから……欲しいものもだいぶ限られてしまう。
それでも欲しいものと言われると、女性って結論に俺は達してしまう。
だって、金と女はどれだけあっても良いって昔誰かが言ってた気がするし、レイとシンクは俺が手に入れても良い女性ならば、直ぐにでも欲したくなるぐらい綺麗だし……と、言っても、彼女達はあくまでGM。プレイヤーのそんな直結脳みたいな言葉は無視するだろうな。
『と、とりあえず、今日はこの辺にして、解散としましょう!』
『そ、それが良いわねレイお姉様!』
「え? 特典は?」
このままでは、お土産無しのまま返されてしまう。999999Pも使ったんだ、せめて何か一つでも……。
『す、少し待っててください。今シンクと特典を考えますので』
そう言って、レイとシンクは俺から少し離れて、再び話を始めた。う~ん、どうなるのだろうか。
話が終わったのか、二人はまだ少しだけ赤い顔をしながら、こっちに戻って来た(手と足が同時に出ているんだが、大丈夫だろうか)。
『お、お待たせしました。特典の方は、後ほど渡しますので、あ、安心してください』
「そ、そうか。なら良かった」
『じ、じゃあ、元の場所に送るわね』
シンクがそう言うと、目の前に光が現れ、俺を包み込んでいこうとする、だが、いつもと違うこともあった。
チュッ
左右の頬に少し暖かい感触を感じた。俺はそれを確認しようとしたのだが、光がより一層輝いて、しっかりと確認できなかった。
俺がその一瞬で確認できたのは、顔を今までで最高に赤くしながら、俺の左右に立っていたレイとシンクだけだった。
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