AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
04-39 撲滅イベント その17
一つ目の『◆』まで、まったく同じ内容です
そして、そこからしばらくもほぼ同じです
ただ、ちゃんと理由がございますので……手抜きとか、そういうことは言わないでくださいね(笑)
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SIDE:シャイン
「ここは……いったいどこだ? 【魔王】、それにアイツらは……」
あの男が何らかのスキルで、俺をこの場所に飛ばした。
あれだけイキっていたが、勝てないから時間を稼ごうとしたのだろう。
……妙に覚えていない点があるが、俺が負けるはずがないのだから、間違いない。
先ほどまでいた根暗野郎に相応しい暗ぼったい場所は、気づけば真っ白な空間へ。
いったいどうなっているのか……いや、考えても仕方ない。
負けるはずはないが、アイツは間違いなく何らかのチートを持っている。
最初の召喚魔法からそうだが、魔力チート的なナニカがあるはずだ。
俺の【勇者】としての力が、妙に通用していなかった……気がする。
魔力チートの他にも、まだ何かを隠しているだろう。
ステータスは改竄されていたし、俺の魔王殺しスキルがあっても届かない能力値。
本当に、腹立たしい……俺より上に立とうとするなんて、なんと烏滸がましいことか。
『キャーーーッ!』
どこからともなく、悲鳴が聞こえる。
女性のものだが、どうしてこんな場所でとも思う……まあ、それ以外のヒントが無いのもまた事実。
「行くか──“光迅脚”」
女から情報を手に入れ、見た目が良ければ相応の礼も貰おう。
光速で走れる【勇者】にのみ与えられた力で、一気に声の発生源へ向かうのだった。
◆
『『ギャギャギャギャッ!』』
「そ、そこの御方、た、助けてください!」
「ど、どうかお助けを……!」
向かった先には、二匹の魔小鬼と──二人の女性が居た。
一人は若く、もう一人は老いた老婆……二人は視界の両端に座り込んでいる。
そこに魔小鬼が襲い掛かるのだが、魔法を詠唱する間もなく二人に攻撃が届くだろう。
……若干老婆の方に早く当たり、殺されてしまうはずだ。
ならば、俺がすべきことは──
「──“光迅剣”!」
『ギャッ!』
まだ発動を維持し続けていた“光迅脚”。
解ける直前だったので、動けたのは一歩分だけ……それでも、やるべきことはできた。
光を纏った剣が、魔小鬼を斬り裂く。
どうやら間に合ったようだ……ふぅ、と一息を吐くと──
「……ゴホッ。ど、どうして……」
「悪い、年齢オーバーだった。安心しろ、仇は討ってやるよ」
『ギャァッ!』
「む、ねん……」
俺が斬ったのは若い女性側の魔小鬼。
そのため、老婆は無慈悲にも魔小鬼によって石斧を当てられて死んでしまう。
嗚呼、なんて可哀そうなことに……でもまあ、そっちの女の方は俺がなんとかするよ。
彼女は自分のことで意識がいっぱいだったようで、老婆を観てなかったみたいだし。
──都合がいい、扱いやすそうだ。
「大丈夫ですか、お怪我はありませんか?」
「は、はい……た、助かりました」
「そうですか、ご無事で何よりです」
女は顔を俯かせ、少し震えている。
まだ怯えているのか……チッ、面倒臭いが適当に慰めるか?
なんてことを思っていたら、ポツリと女が呟いた。
「どうして……私を助けたのですか?」
「? それは、どういう意味でしょうか」
「はっきりとは見えていません。ですが、声は聞こえていました。どうして祖母を見殺しにして、私の方に来たのですか?」
面倒臭い女だな、地雷って言うんだよこういう奴は。
助けてやったというのに、その行いに違和感を抱くとか頭がイカレてるな。
「私と祖母、その違いはなんでしたか? 攻撃が届くまでの差ですか、それとも──年齢ですか? 私がまだ若いから助けて、年老いているから祖母を見殺しに……そういうことですか?」
「そ、それは……」
反論しようとした、そうではないと。
だが俯いていた彼女の顔を見た途端、その心の主張は消え失せた。
たしかに顔は美人だった。
イベント開始後に見たクースと同じくらいに、顔立ちはいい。
だがそれ以上に特徴的なのは目だ。
どす黒い、すべてを呑み込むような真っ黒な目がこちらを見てくる。
「貴方は今までもそうやって、若い女性ばかりを助けてきたのでしょう。老人が同じように危険な目に遭っても、そこに若い女性が関わらなければ傍観だってしたはずです」
「ち、違……。──ッ!?」
「貴方がやっていることは、純粋な行為ではありません。それは偽善にも劣る──ただの性欲です」
言いたいことだけ言って、女は消える。
幽霊のように透明になっていき、そのまま溶けるように。
恐怖よりも怒りを覚える。
俺のことを何も知らない奴が、知ったようなことを言いやがって。
「チッ、今度会ったら……いや、待て。なんだ……俺は、これを知っている?」
覚えたはずの怒りが、スッと消えていく。
それよりもおかしな違和感を覚える。
俺は【魔王】に何かをされて、ここに来たはず……だが、あれからどれだけの時間が経過しているんだ?
今までそこに意識が回らなかった。
いや、そうじゃない──そう仕向けられていたんだ。
「なら、それさえ分かれば……うぐっ」
《──まだよ。夢の物語はまだ続く、すべてが審らかになるまで、判定は止まらない》
「なんだ、体が……重く……」
どこからともなく、しかし聞いたことのあるような声が聞こえてきた。
すると体は言うことを聞かなくなり、思うように動かなくなっていく。
特に瞼は視界を閉ざし、すべてを闇の中へ引き摺り込もうとする。
《再度記憶を調整、初期状態へ移行。発動者より、状況シークエンス03の読み込み……再起動します》
抗うことのできない力の前に、【勇者】であるシャインは屈した。
そして、すべては微睡の中へ……。
SIDE OUT
◆ □ ◆ □ ◆
さて、再び現実(AFO内)の視点へ。
二度の実験を終えた後も、設定を変えた状態で同じことを繰り返しているリア充君。
なお、その設定は逐次俺が決めて変更を加えている。
記憶は消す……というより、記憶の奥底に封じることで、認識できないようにした。
だからこそ、少しずつ違和感を覚えつつあるようだが。
二度目でそのことに気づいたので、より強く施したらまた忘れていたけど。
「やっぱり、こちらを選択するか……それもまた、仕方ないことなのだろう」
何度も何度も、シチュエーションが変われば行動を変える……はずなんだがな。
ひどい、この一言に尽きる……男が二人の時なんて、完全に無視だったからだな。
『………………』
そんなパターン、そしてとある組み合わせで行ったところ……少女たちはドン引き。
その組み合わせとは──美少女+美少女、定番の組み合わせの結果がそう思わせた。
『うおぉおおおおっ! ──“限界突破”、“光迅脚”、“光迅剣”!!』
今までは使わずにいたデメリット有りのスキルを使い、両方を救っていたのだ。
じゃあ、なんで今まで使わなかったんだと彼の仲間に聞けば……無言であった。
速度を上げ、剣を超高速で振るうことで魔小鬼二匹をほぼ同時に倒すリア充君。
その姿だけ見れば、たしかに【勇者】っぽい光景だったんだがな。
「貴様らも奴のあの姿を見て、目を奪われたということか? 代償があり、それなりの演出もあるだろう。しかし、その使いどころがな……所詮は選べる力を使いようだ」
「……そうですね、たしかにシャインはいつもアレを使っていました」
「代償は痛覚の鋭敏化、それに筋肉痛のようなものであったか? 一日に一度の発動しかできぬスキルの限界突破とは違い、奴のモノは使えば使うほど回数増加やデメリットの解消が行われるはずだ」
「……シャインにとっても、都合が良かったということですか」
これまでの全肯定だった反応とは異なり、今ではある程度自分の意思でシャインの見極めができるようになった少女たち。
だんだんと庇うような言葉が減っていき、ようやくこの段階まで至った。
……しかしまあ、これでも足りないと俺は思っている。
「──そろそろ始めよう。貴様らにとって、その結果がもっとも辛くなるかもしれぬが、それでもよいか?」
「……お願いします。今思えば、シャインだけでなく、その行為をすべて見て見ぬふりしてきた私たちにも責任はあります」
「そうか……ならば、始めるとしよう」
心の中で黒く笑い、設定を準備していく。
リア充君が求める理想は、果たしてどんなモノなんだろうか?
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