AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

04-20 撲滅イベント前哨戦 その12



 俺の作った七色武具をプレゼントしたが、彼らクラン『ユニーク』の中で少々揉めてしまっているため、時間が空いてしまった。

 なのでとりあえず、自己紹介をさせる。
 正直、覚えられる気がしないが……まあ、相手方は覚えていてくれるだろうし、もしかしたら俺も記憶できるかもしれないからな。

「とりあえず、俺からやっておくか。改めて言うが、ナックルだ。職業は【拳聖】に就いている。よろしくな、『模倣者』」

「今はそれでいいか。ノゾムは偽名だから、いずれそっちで看破してくれ」

 説明が面倒臭い話なので、適当にはぐらかして誤魔化す。
 ちなみに、望まれることを望んでいるからこその『ノゾム』である。

「……いきなりぶっちゃけたな。それでお前のステータスを視ようとしたら、急激にレベルが上がったのか」

「食客にしてくれそうだから、サービスってところだな。これでSPスキルポイントも増えるんだ、感謝してもし足りないだろう?」

 今から5Pで習得したとしても、一気に上げられる──それが超級隠蔽の力だ。
 本当は同じものだと上がりづらいはずなんだが……うん、本当は獲得しづらいらしい。

「鑑定は最初から持っていたが……中級鑑定が一気にカンストしたぞ」

「そりゃあめでたい。なあ、その【拳聖】はどうやって就く職業なんだ? もちろん、言えないならいいんだけど」

「ああ……それなんだがな。俺にも詳細は分からないんだ。アンケートが初期勢ならあっただろう?」

「だいぶ懐かしいな……俺、何も与えられずに終わったぞ」

 そのあと、いろいろとあったけど。
 現実での情報収集によると、アンケートに答えるとアイテムやスキルを得られたという情報があったんだけどな……。

「真面目に答えなかった奴には、そういうパターンもあったらしいぞ。まあ、俺はその結果として【拳聖】の条件緩和が与えられたらしいんだ……で、いろいろやってたらいつの間にか就いていた」

「いつの間にか?」

「ああ、当時は(拳士)に就いていて、ちょうどそこがカンストした時だ。いきなりそこが書き換わって、【拳聖】になっていた」

「ふーん……そういうケースもあるのか」

 俺が【生産神】系列の【神】の職業に就くのは、必ず転職用の水晶に触れたときだけなので全然違う。

 アンケートは初回特典のようなものだし、そういうものだと割り切るしかないか。
 しかし、条件の緩和なのか……最初から就かせる、ということにはならないんだな。

「そういえば……『模倣者』ってことは、イベント報酬で職業枠を拡張していたよな? 今回見せた職業以外にも、間違いなく就いているってことか」

「ああ……【迷宮主ダンジョンマスター】とかだな」

「だ、【迷宮主】だと!? それって、俺達でも就ける職だったのか!?」

「きゅ、急にテンションが上がったな……答えはYES。条件は迷宮核ダンジョンコアマスター登録をするだけだな」

 目をキラキラと、子供のように輝かせる年上の男に頬を引き攣らせながら答える。
 固有職でありながら、とってもシンプルな就職方法……死ぬまで外せないからな。

「自由民の場合、核が壊されると死ぬんだ。俺たちの場合は剥奪で済むけど、そういう厳しい条件だからこそ簡単に就ける。ちなみに能力値の職業補正はゼロな」

「…………」

「いちおう迷宮を造ってはみたが、初期じゃ全然使えなかった。どうにか工夫に工夫を重ねて、ようやくらしくなったってところだ」

「つまり、俺たちでも迷宮で遊べるってことなんだな? た、頼む……今度、ぜひとも攻略させてくれ!」

 攻略、その言葉に思考はフル回転する。
 普段から思考系スキルは使っているが、あまりやりすぎると凡人の脳はすぐに限界を迎えるため、魔法で抑えてはいるけど。

 しかし、攻略と言った。
 それはつまり──ミントやフェニ、レンたちを殺すということだ……いや、フェニに関しては俺も殺しているけど。

 迷宮がそういうものだと言われれば、その通りだと肯定するしかないだろう。
 復活するシステムが存在する以上、死別するというわけでもない。

 だが……それでも考える。
 そんな光景を脳裏に思い浮かべたとき、自然と拳が強く握られていた。

 それを自覚して、再び魔法で思考速度を通常時と同じぐらいまで下げる。

「……悪いが、今は無理だな」

「そうか、残念だ」

「だが、いずれは招待しよう。相応の難易度で迎え入れる準備が必要だがな」

「最高だ……感謝する、『模倣者』!」

 ガシッと握られた手を掴み返す──要するに握手だな。
 本人は純粋に迷宮攻略をしたいだけだ、その意図を汲み取るのもまた偽善だろう。

 迷宮は一つしか存在してはいけない、そういった概念は存在しない。
 ならば、俺とナックルの互いが納得できる結末も用意できるはずだろう。

 だが、それは今考えることではない。
 自己紹介はまだ始まったばかり、というか一人目だし。

「……そろそろ他の奴を紹介してくれ」

「おっと、そうだった忘れてたな。それじゃあ、暇そうな奴から順に説明していくか。あそこの奴は……」

 そうして、俺は『ユニーク』のメンバーの情報を得ていった。
 しばらくして、彼らもようやく七色武具の使用者選定を終わらせる。

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 クラン『ユニーク』の簡単な紹介
 表示が無い人は普人族 代わりに特徴を
 職業かスキルで固有能力必ず持っているクランですので、そちらを表示

・ナックル:クランリーダー【拳聖】
・ショカツ:サブリーダー【甲斐龍虎】
・アストレア:まんま【剣聖】
・アラネ:鬼人族【術理魔法】
・アルカ:見た目ツンデレ【思考詠唱】
・カレン:森人族(妹)※1【弓聖】
・カンヒ:鬼系魔物恐怖症【矛盾】
・セイラ:おっとり【聖女】
・テイト:獣人(虎)族【盾聖】
・ノロジー:サイエンティスト【科学魔法】
・メタラル:山人族【鉱魔法】
・モッフル:獣人(猫)族【獣化魔法】
・ブラウッド:【死霊魔法】【死霊魔法】
・ランサー:森人族(兄)※1【槍聖】
・ユウ:【断罪者】【陽光魔法】

※1:二人は現実で兄妹です
   当然、シスコンでブラ──[この先は途切れている]


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