AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

03-23 散策 前篇



 ──そうだ、俺の世界を巡ってみよう。

 突発的な思い付きではあるが、人間なんてそんなものだろう。
 というか、この世界にログインできるようになってからそんなことばかりだし。

「というわけで、まずはここだな」

 第一世界。
 空間魔法“空間創造ガーデン”によって、もっとも早くに生みだされた小さな世界である。

 その中でも初期住民である魔子鬼デミゴブリン、そしてその進化種族が住まう国こそが──リーン。
 わずか一月程度で誕生した新国家だ……もちろん、非公式だぞ。

「なぜか俺が王様なんだよな……そして、ついでに崇める神も俺。そういうのは、やっぱり偽善者っぽくないと思う」

 代理の王をリョクがやっているし、神に関することはもう割り切っている……神気のためだ、こればかりは見て見ぬ振りをしよう。

「これから起きてくれる武具っ娘たちのためにも、世界を紹介していこうと思ってな……聞いていてくれるか?」

《少なくとも僕と先輩は把握できているよ。おっと、今はマスター独りで紹介する企画みたいだね。それじゃあ、僕は例のスキルの解析に戻るよ》

「あ、ああ……頼んだぞ」

 一瞬、付き合ってくれてもと思ったが、俺に付き合わせる以上に大切なことを任せているのでそうはいかない。

 なので結局単独で都市に入り、一区画ずつ説明を行っていく。

「リーンは円形の都市で、中央に王城が配置されている。まあ、パリの凱旋門が城に置き換わったイメージがちょうどいいな」

 あの場所みたいな感じで道路があって、街に続いていくのだが……リーンの場合は十字の部分が細くなっていき、斜めの道が相対的に少し太めとなる。

「太い道で分けられたエリア、東西南北でそれぞれ区画を隔てている。南は商業区、西は住宅区、北は工場区、東は冒険区……まあ、前半二つは言葉通りだから割愛しよう」

 ある意味鎖国ならぬ鎖界状態ではあるが、経済は循環していた。

 それに関してはまた別の話だが……魔子鬼はもともと貨幣を知らないので、新規のシステムを導入しやすかったのもあるな。

「工場区は生産に関する区域。研究所や工房なども兼ねている。というより、工場ができることを想定してそう名付けただけで、煙突なんて一本しかないぞ」

 それもダミー、ただの目印だけれど。
 俺が【生産神】なので、設備を充実させることなどどうということでもない。

 それぞれ望んだ生産活動を教えていった結果……生産職の名を冠した、新種の魔子鬼たちが生まれてきたほどだ。

「冒険区は冒険者のための区域。なんちゃってギルドを建ててあるのはもちろんのこと、第四世界にある迷宮ダンジョンへ向かうための道も用意してあるぞ……そう、転移門によって!」

 ビバ【生産神】、実際に視たら作り方を理解できた──ので、必要な材料を集めて何個か建造しておいた。

 多少材料費に苦労したが、無限の財を生む迷宮の主である俺なので……時間さえあれば巨万の富を以って、転移門を増やせる。

「転移門はすべての区に配置してある。商業区は別の世界に繋がり、住宅区はこの後向かう農業区へ繋がり、工場区は実験用の離れた場所へ繋がり、中央区には眷族だけがある場所へ……と、限定的に繋がっているぞ」

 魔力波で識別するのだが、ずいぶんと悩まされたものだ。

 協力者が多いのと、門そのものを一つ所有していたことでどうにかそのシステムも俺だけで再現することができた。

「──さて、今回は大雑把な説明だけにしておいて……先ほど話題に出た農業区へ向かうことにするぞ」

 空間魔法を使えば、テレビでよくある瞬間移動の演出も簡単にできる。
 というわけで、意味もなく足を地から話したところで“空間転位リロケート”を発動した──





 視界は切り替わり、都会だった光景は農村のようなものへ。
 住民は魔子鬼中心ではなく、普人フーマン中心の光景へ……いやまあ、差別じゃないんだぞ。

 農村の住民──元ラルゴ村の者たち用の住宅もリーンには用意されているのだが、仕事優先なのか……大半がこちらに住んでいる。

「いろいろと問題ありの宗教に参加し、なぜか王城に向けて祈りを捧げている彼ら。普段はとても明るく、例の事件も無かったみたいに振る舞えているのはいいんだけどな……」

 彼らは邪神教云々の問題で生贄とされるため、奴隷という形で囚われていた。
 俺はそこに駆けつけて彼らを偽善で救い、衣食住を提供したわけだ。

 ……ただ、なんだか俺のことを神格化している節があってな。

 なんだろうか、贄にされそうだったことが関係しているのか?
 それなら精神面のケアもできないので、放置しておくしかないわけだが……。

「俺は時々国民に会うと、鑑定をするかを聞いている。俺は鑑定スキルのレベルを上げられるし、国民たちの中でステータスを調べられない者は知ることができる……いちおうはWinWinの関係なんだよな」

 自分で知る方法は──鑑定スキル、ギルドのカードに搭載された機能などが該当する。
 ただしギルドカードは簡易的なものだし、鑑定スキルも人によっては一部が不明だ。

 俺は上級鑑定なので、特殊なスキル以外はほぼ確実に開示できる。
 さらに看破スキルも持つため、固有スキルでも持っていない限りは完全開示だ。

「そして……面白いスキルを見つけた」

 それは二人の少女のスキルだった。
 初めはまったく鑑定を受け付けず、何度も視ようと苦戦したものだ。

「っと、ちょうど二人が居るな。最近はやることも無くなってきたし、良い能力も認識できた……一度、試してみるか?」

 俺の中でふつふつと湧いてくる、偽善をやりたいという衝動。
 そんな【傲慢】な想いを果たすため……俺は彼女たちの下へ向かった。


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 面白いステータス+【封印】の詳細

 人族の鑑定の場合、祈念者とほぼ同じ機構で表示されます
 自由民はSPの制度が無いため、スキルレベルのシステムもございません

 そこは[眷軍強化]同様、実は『%』による熟練度制が採用されています
 もちろん、『Lv-』と祈念者の場合表示されるようなスキルには、熟練度もございません

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ステータス
名前:■■■(女)
種族:(普人族Lv12)
職業:(村人Lv12)・(【英雄:封印】Lv-)

状態異常:『封印:EX』

HP:150
MP:100
AP:100

ATK:15
VIT:25
AGI:25
DEX:30
LUC:15

武術
なし
魔法
なし
身体
(病気耐性)
技能
(耕作)(家事)
特殊
(英雄ノ卵:封印:職業)【封印】

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ステータス
名前:■■■(女)
種族:(普人族Lv10)
職業:(村人Lv10)・(【英雄:封印】Lv-)

状態異常:『封印:EX』

HP:110
MP:170
AP:110

ATK:15
VIT:30
AGI:15
DEX:25
LUC:8

武術
なし
魔法
なし
身体
(病気耐性)
技能
(耕作)(家事)
特殊
(英雄ノ卵:封印:職業)【封印】

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特殊:【封印】

状態異常『封印:EX』を永続的に発現する
所持者の持つ固有級以下の種族/職業能力とスキルを発動不可にする
このスキルが発動中、一般スキルの習得速度とレベル成長速度が低下する
また、状態異常に罹りやすくなる
このスキルは■■■■を達成した場合のみ、解除される
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 その他、第一世界情報(抜粋)

 フィールド情報

  北 :極寒フィールド
 北 東:暴風フィールド
  東 :自然フィールド
 南 東:砂漠フィールド
  南 :海洋フィールド
 南 西:墓地フィールド
  西 :山脈フィールド
 北 西:夢幻フィールド
 中 央:魔子鬼国リーン──の上空に浮かぶ天空フィールド

 リーン国の歴史

 王により、草原が創られる
     ↓二日後
 国が誕生、人間語の学習開始
     ↓約一週間後
 魔中鬼に進化する者が
     ↓約二週間後
 魔子鬼たちの王が鬼人に
     ↓約一週間 今ココ
 一部の魔中鬼が大鬼や鬼人に



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