AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

02-41 報酬確認:幻歌の王譜



 始まりの町

「……はぁ~、やっと終わった」

 あれから数日、迷宮ダンジョンを俺の世界に行き渡らせることに成功した。
 リーンと(過去の)ネイロ王国の王たちとそれぞれ話し合い、安全性を保障して迷宮を少し離れた場所に設置したのだ。

 もちろん、常識がある分ネイロ王国の方は揉めに揉めた。
 だが国王自らによる迷宮視察などもあり、どうにか貴族たちに認めさせたのだ。

 レンと相談し、溜めたDPを消費することで『ダミーコア』というアイテムを数個手に入れた。
 これは迷宮核とリンクし、遠隔地で迷宮を造ることができるようになるアイテムだ。

 それを使い、魔物が出現しない迷宮を生みだした……ということにしてある。
 中では植物の栽培が行われており、誰でも安全に採取ができるように改良した。

 これはお偉いさん方に大うけ。
 貴重な素材などがガッポリなので、迷宮を産業の一つに組み込もうとする動きがあるとあとでジークさんが教えてくれた。

「もちろん、好からぬ考えを持つ者もな」

 だからこそ、対策はしてある。
 魔物などはいないが、代わりに条件を満たしてしまった愚か者には瀕死の刑に遭ってもらうようにトラップを施した。

 そちらはまた、別の時に。
 まだ誰も手を出そうとはしていないが、いずれは知ることになるだろう……迷宮を悪用しようとすればどういった目に遭うのかを。

「さて、たしか今日が発表日だって言ってたよな……」

 公式の情報は知らないが、たしかそんなことをクラスの誰かが言っていた。
 ──過去の王都イベント、その成績発表が行われると。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ピンポンパンポーン

 しばらく待っていると、そんな軽快な音声が頭に直接流れてきた。
 同じように音を聞いたプレイヤーたちもまた、足を止めて続きを待つ。

 そして、声が聞こえてくる。

≪皆さま、お久しぶりです。ただいまより、先に行われたアップデート前イベント『幻歌の王譜』の成績を発表いたします≫

 懐かしの女神様……ではなく、なぜか俺の友人になっているレイさんの声だ。
 イベントの担当者は、始まりと終わりの両方でアナウンスをするのだろう。

 周りのプレイヤーたちがその声にうっとりしている様子に不思議と満足感を得ながら、アナウンスに意識を傾ける。

  □   ◆   □   ◆   □



≪公開される順位は、ソロ・パーティーそれぞれ上位十名とさせていただきます≫

≪ランキングには上位者の職業が表示されます。また、パーティー部門の場合はリーダーだった方の職業が表記されます≫

≪まずはパーティー部門から──≫

---------------------------------------------------------
1位:【??】→6120P
2位:冒険者→5500P
3位:魔道師→5350P
4位:【??】→5000P
5位:中級槍士→4790P
6位:重鎧戦士→4650P
7位:【??】→4580P
8位:闇魔法士→4500P
9位:【??】→4300P
10位:拳師→4000P
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≪続いて、ソロ部門──≫

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1位:【???】→3000P
2位:双剣士→1300P
3位:探索者→1280P
4位:【??】→1200P
5位:重鎧戦士→1190P
6位:【??】→1080P
7位:冒険者→980P
8位:回復魔法士→970P
9位:【??】→960P
10位:【??】→930P
---------------------------------------------------------

≪おめでとうございます。上位入賞をなさった皆さまには、放送終了後にアイテムを配布いたします≫

≪また、今回は入賞とは別に秘匿イベントの達成者にも報酬が用意されております。こちらは今イベントにおいて、イベントエリアの命運を大きく作用させたクエストや状態を総称したものです≫

≪これより、その内容と達成したパーティーのリーダーが就いている職業名を公開いたします──≫

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クエスト
『贄成る運命の奴隷たち』:【???】
『誘う陥落、堕ちる人々』:盗賊頭
『惨状、希望を奪う怪盗』:冒険家
『齎された黒き死点』:回復魔法士
『絶景かな、絶刑かな』:双剣士
『防衛戦:王城の乱』:【???】

システム
『迷宮核の喪失』:【???】
『Sランク冒険者』:【???】
隠しボス『レイブン】討伐:【???】
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≪なお、【??】は特定条件を満たした方のみが就くことのできる固有職となります。皆さま、奮ってお探しください≫

≪これにて、放送を終了いたします──≫



  □   ◆   □   ◆   □

 ピコーン

「おっと、やっぱり二件か……」

 心当たりのあるクエスト名が載っていた。
 そして何より、短い間とはいえ戦った奴の名前が告げられたのだ……間違いなく、秘匿イベントの複数達成者は俺だろう。

「さてさて、報酬はーっと」

 さすがに最後のレイドイベントに参加しなかったため、多人数でポイントを稼いでいるパーティー部門にはランクインしなかった。
 だが、単独であれば他を圧倒する優秀な成績を叩き出している……そりゃあ強敵と戦いまくったからな。

 では、メールをオープン──!

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件名:おめでとうございます

 ソロランキング1位です
 これを祝い

 ・称号:『イベントランキング・ソロ1位:幻歌の王譜』
 ・スキル枠+3拡張券
 ・職業枠+2拡張券
 ・転生の宝珠
 ・インスタントポータル
 ・スキル覚醒券

 ──を配布します。

 これからも、AFOの世界をお楽しみください
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件名:おめでとうございます

 秘匿イベントを五つクリアしました
 これを祝い

 ・スキル枠+5拡張券
 ・職業枠+5拡張券
 ・ランダムスキル会得券×5
 ・スキル覚醒券×5

 ――を配布します。

 これからも、AFOの世界をお楽しみください

 p.s.
 このメールの中に、闘技大会の報酬を入れておきました──byレイ
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「~~~~~~~~~~~ッ!」

 声にならない叫びが上がる。
 衝動を抑え、誰も居ない場所へコソコソと移動し……風魔法で辺りに音が響かないようにしてから、思いっ切り叫ぶ。

 レイさん、貴女って方は……最高だよ!
 正直、言うだけ言っておいてすっかり忘れていた物を、ここぞというタイミングでサプライズですか!?

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……!」

 思わず人としてどうなんだろう、となんだか遠い目で自分の狂声を認識する俺。
 だがそれも仕方が無いか、と思えるほどに非常識なアイテムを入手したのだ。

 たしかにメールの中に添付されたアイテムリスト、そこにはメールに記された物以外に一つだけアイテムの名前が載っていた。
 すぐにそれを受け取り、[アイテムボックス]の中から詳細をチェックする。

 そこには、望んだことができる特別な品が記されていた──

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システムコンソール

神器:機械
ランク:X  耐久値:∞

神の使いたるGMに与えられた権限──その一部を機械に封じた特殊な装置
使用することで、祈念者に与えられたシステム干渉権限と同一の権利を行使できる
ただし、持ち主として認証された『メルス』か『メルス』に認証された者しか扱えない
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 ──システムコンソール。

 それは、本来プレイヤーに与えられないはずの代物。
 VR世界において、これはゲーム内からシステムに干渉するための装置として用いる。

 ただ、プログラミングについて特に詳しくもない俺、別に何か特別なことがしたいわけじゃなかった……どちらかといえば、プレイヤーに与えられた権利を守りたかったのだ。

「これで、何があっても[メニュー]が行使できる……称号に書かれていた可能性を、気にしておかないとな」

 かつて称号『野生児』の説明テキストに書かれていた事象──『デスゲーム』。
 それは、ログアウトが不可能な状況で死ぬことで起きてしまうことが多い。

 可能性はゼロではない、それ故に無限の自由があるこの世界では、決して起きないとも言えないのが恐ろしいところだ。

 だからこそ、俺はレイさんにシステムコンソールを用意してもらった。
 決して剥奪されない[メニュー]の権限、それはログアウトをいつでも可能とする。

「他は別にどうでもいいと思ってたけど……この説明なら、こっちのヤツに同じことをさせられるみたいだな」

 まあ、[アイテムボックス]とかは無理だろうが……[スキル習得]や[ステータス]なら、可能かもしれない。

「よし、まずは検証……だけど、先にこっちのアイテムを使うべきか」

 おざなりに扱ってしまったが、新アイテム『転生の宝珠』と『ランダムスキル会得券』はそれなりに使える。

 前者は俺には不必要だが、種族を変更する際に使えるらしい。
 そして後者は……その名前が何を示しているのかすぐに分かるだろう。

 ──というわけで、ちゃっちゃと使ってスキルを会得しよう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

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転生の宝珠 

説明:転生をする際に必要なアイテム
条件を満たさなければ使えない
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ランダムスキル会得券

説明:使用することで、ランダムでスキルを最低限のSPで習得可能にする
当たったスキルがすでにその条件を満たしていた場合、SPを消費しないでそのスキルを習得可能にする
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