異世界転移したら大金舞い込んできたので高原暮らしを始める
第十一話 来訪者②
「なるほど、つまり解雇されたと……」
「ち、違います! どかまでも飛ぶ翼がある君にこの場所は狭すぎるから明日から来なくていいって言われたんです! つまり送り出されたんですよ!」
「いや、解雇だよねそれ」
「ぐっ……」
とりあえず話だけ聞こうとソファーに座らせたが、どうにも五日程前にあの銀行を解雇されたらしい。そういえば確かにお金を預けた時この子はいなかった。
「で、一応聞くけど君、本当に就職のアテがなく路頭に迷って一人で旅してるんだよね?」
「はい……。社員寮だったので家もありませんし、別に問題起こしたわけでもないのに銀行解雇された事を言ったらどこも雇ってもらえず……というか私が横領するとでも思ってるのでしょうか! 許せません!」
「まぁ他人から見ると分からないからなー。それはそうと今解雇って認めたよな」
「なっ……! はめましたね!?」
「いやはめないから……」
まぁとりあえず背後に騎士団がついてるとかそういう感じじゃなさそうだ。ついでに言えばユミと王都に出たのが昨日の事だからそもそも王都で何かお触れが出ててもこの子は把握してないだろう。
「ユミ、降りてきていいぞー」
言ってやると、梯子から降りてきたユミが人外の速さで俺の元までやってきた。いやでもほんとに速くなかった? 気のせい?
「もしかしてお兄ちゃんの彼女!? そうなの!?」
開口一番、ユミがそんな事を言ってくるので否定しようとすると、俺よりも先に元銀行員の女の子が言葉を放った。
「ッ! そんなわけないじゃないですか! なんでこんな極めて普通そうな人に私が惚れなきゃならないんですか!?」
「悪かったな」
事実だけど。
「やっぱそうですよねー! こんな自尊意識の低い面倒くさそうな男好きなる方がどうにかしてます」
「そうですよ!」
ひどい言われようだなおい……。でも妹から放たれた言葉はむしろお兄ちゃんウェルカムなんだよなぁ!
「でもだとすればご関係は……?」
ユミが小鳥も顔負けの可愛さで首をかしげるので答えてやる。
「俺がこの世界に来た日、金を預けようとした時対応してくれたのがこの子だったんだよ」
「なるほどなるほど」
まぁそれはさておき、とりあえずユミと二人きりの空間に異物が混入するのは望ましくない。何かありそうなので思わず引き入れてしまったが早急におかえりいただこう。
「それで、なんで君はうちに?」
聞くと、女の子は申し訳なさそうに頬を染めもじもじしつつも口を開く。
「ああ、その実はですね……食べ物を少し譲っていただけないかと思いまして……。麓に来るまでの村で運送猫車に鞄を忘れてしまったみたいで無一文になり……」
「なるほど、それは大変だ」
ドジにもほどがあると思うけどな、それは。まぁいい。
俺はすぐ立ち上がると、台所から適当に保存食を見繕って机の上に置く。
「これで二日分、じゃあ行ってどうぞ」
「い、意外と優しいんですね……ありがとうございます」
あっさりと渡したからか、意外そうにつぶやくと、女の子は腰を上げる。
「二人とも待って」
わざわざ扉の方まで見送ってやろうと開きに行こうとすると、ユミが少し離れた場所に行き俺に手招きしてくるので、俺は一応女の子に断りを入れつつユミの元へと行く。
「どうしたユミ?」
「こんな女の人一人で旅なんて絶対危ないと思うんだユミ」
まぁ、多少は危ないかもしれない。でも俺の知ったこっちゃない。
「それでどうかな? しばらく家に泊めてあげるっていうのは」
「は?」
何を言うかと思えばこの妹は……。
「悪いなユミ。いくらお前の頼みでもそれは却下だ」
「えーなんで?」
「お前、人が一人増えるってけっこう大変だなんだぞ。食費とかかさむし他にも色々」
「でも絶対危ないよ」
「いやまぁそうかもしれないけど……」
この世界ってちゃんと魔物も存在するらしいしな。
「でもあれだ。そもそも女の子だってうちに泊まりたいとは思ってないと思うぞ」
「そうかなぁ……」
ユミと小会議していると、女の子が後ろから声をかけてくる。
「あの、そろそろ行ってもいいですか?」
「ああ、うん。ごめん。とりあえず行ってくれたらいいから」
「えー?」
不服そうな表情を見せるユミだが、やはり色々と良くないのでお帰りいただく事にした。
「あっ」
ふと、何かを思い出したのか、女の子を見送るとユミが声を出す。
「お風呂だよ、お風呂!」
ああ覚えていたか……。まぁ、仕方ない。その件に関してなら一応打開策は思いついたところだ。
「ち、違います! どかまでも飛ぶ翼がある君にこの場所は狭すぎるから明日から来なくていいって言われたんです! つまり送り出されたんですよ!」
「いや、解雇だよねそれ」
「ぐっ……」
とりあえず話だけ聞こうとソファーに座らせたが、どうにも五日程前にあの銀行を解雇されたらしい。そういえば確かにお金を預けた時この子はいなかった。
「で、一応聞くけど君、本当に就職のアテがなく路頭に迷って一人で旅してるんだよね?」
「はい……。社員寮だったので家もありませんし、別に問題起こしたわけでもないのに銀行解雇された事を言ったらどこも雇ってもらえず……というか私が横領するとでも思ってるのでしょうか! 許せません!」
「まぁ他人から見ると分からないからなー。それはそうと今解雇って認めたよな」
「なっ……! はめましたね!?」
「いやはめないから……」
まぁとりあえず背後に騎士団がついてるとかそういう感じじゃなさそうだ。ついでに言えばユミと王都に出たのが昨日の事だからそもそも王都で何かお触れが出ててもこの子は把握してないだろう。
「ユミ、降りてきていいぞー」
言ってやると、梯子から降りてきたユミが人外の速さで俺の元までやってきた。いやでもほんとに速くなかった? 気のせい?
「もしかしてお兄ちゃんの彼女!? そうなの!?」
開口一番、ユミがそんな事を言ってくるので否定しようとすると、俺よりも先に元銀行員の女の子が言葉を放った。
「ッ! そんなわけないじゃないですか! なんでこんな極めて普通そうな人に私が惚れなきゃならないんですか!?」
「悪かったな」
事実だけど。
「やっぱそうですよねー! こんな自尊意識の低い面倒くさそうな男好きなる方がどうにかしてます」
「そうですよ!」
ひどい言われようだなおい……。でも妹から放たれた言葉はむしろお兄ちゃんウェルカムなんだよなぁ!
「でもだとすればご関係は……?」
ユミが小鳥も顔負けの可愛さで首をかしげるので答えてやる。
「俺がこの世界に来た日、金を預けようとした時対応してくれたのがこの子だったんだよ」
「なるほどなるほど」
まぁそれはさておき、とりあえずユミと二人きりの空間に異物が混入するのは望ましくない。何かありそうなので思わず引き入れてしまったが早急におかえりいただこう。
「それで、なんで君はうちに?」
聞くと、女の子は申し訳なさそうに頬を染めもじもじしつつも口を開く。
「ああ、その実はですね……食べ物を少し譲っていただけないかと思いまして……。麓に来るまでの村で運送猫車に鞄を忘れてしまったみたいで無一文になり……」
「なるほど、それは大変だ」
ドジにもほどがあると思うけどな、それは。まぁいい。
俺はすぐ立ち上がると、台所から適当に保存食を見繕って机の上に置く。
「これで二日分、じゃあ行ってどうぞ」
「い、意外と優しいんですね……ありがとうございます」
あっさりと渡したからか、意外そうにつぶやくと、女の子は腰を上げる。
「二人とも待って」
わざわざ扉の方まで見送ってやろうと開きに行こうとすると、ユミが少し離れた場所に行き俺に手招きしてくるので、俺は一応女の子に断りを入れつつユミの元へと行く。
「どうしたユミ?」
「こんな女の人一人で旅なんて絶対危ないと思うんだユミ」
まぁ、多少は危ないかもしれない。でも俺の知ったこっちゃない。
「それでどうかな? しばらく家に泊めてあげるっていうのは」
「は?」
何を言うかと思えばこの妹は……。
「悪いなユミ。いくらお前の頼みでもそれは却下だ」
「えーなんで?」
「お前、人が一人増えるってけっこう大変だなんだぞ。食費とかかさむし他にも色々」
「でも絶対危ないよ」
「いやまぁそうかもしれないけど……」
この世界ってちゃんと魔物も存在するらしいしな。
「でもあれだ。そもそも女の子だってうちに泊まりたいとは思ってないと思うぞ」
「そうかなぁ……」
ユミと小会議していると、女の子が後ろから声をかけてくる。
「あの、そろそろ行ってもいいですか?」
「ああ、うん。ごめん。とりあえず行ってくれたらいいから」
「えー?」
不服そうな表情を見せるユミだが、やはり色々と良くないのでお帰りいただく事にした。
「あっ」
ふと、何かを思い出したのか、女の子を見送るとユミが声を出す。
「お風呂だよ、お風呂!」
ああ覚えていたか……。まぁ、仕方ない。その件に関してなら一応打開策は思いついたところだ。
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