竜と王と剣と盾
王太子殿下のご挨拶が……大丈夫ですか?
一応後宮騎士団の挨拶を受けた4人は、じたばたする少女を叱りつけて引っ張っていこうとする同年代の少年に、
「あれ?セイ?どうしたの?」
「綾が、怖いから帰るって。だーかーら‼綾が心配しなくてもいいんだって」
近づいてきた二人をアルドリーは示し、
「俺……私からの挨拶の前に紹介します。彼が、私達の従兄、成時です。年は二つ上で、7の月に18才です」
「はじめまして、私は、アルドリーの母上、セイラの兄の息子の成時と申します。よろしくお願いいたします」
落ち着きと品は、父親や祖父に似たらしい。
「そして、こちらは、父の妹の綾です。2の月生まれなので、18才です。ほら、綾……大丈夫だから……」
「……あ、綾だ。よろしくお願いする……」
びくびく怯える様は庇護欲を掻き立てる……その上、成時は栗色の髪と瞳の童顔の少年だが、綾は漆黒の髪と瞳の、冷たそうに見えるが清楚な美少女……。
すぐにでも婚約者を指名した方がいいんじゃないか?
それか騎士を……。
「成時様、綾様、よろしくお願いいたします」
と、頭を下げると、くしゃっと顔が歪む。
「えっ?」
挨拶だったのだが……と狼狽える面々の前で、
『こ、コワイコワイコワイ……‼』
イヤイヤと首を振り、成時がだきよせても逃げようとする。
「あ、綾‼大丈夫だから‼」
『イヤァァァ‼』
成時の手を逃れ走り出そうとした綾は、ドーンと何かにぶつかり反動で倒れかける。
「わぁぁ‼ご、ごめんなさい!」
その声と共に、支えられるというよりも抱き締められる。
「大丈夫でしたか?申し訳ありません。ちょっと前が明るくなって……」
『も、申し訳ない……』
綾ははっとして頭をあげると、ドアップのアイスブルーの瞳の超絶美貌に唖然とし、
「ど、どうしましたか?やっぱり不細工……」
という声を聞きつつ気絶したのだった。
「え、えぇぇ‼や、やっぱり不細工だから?ごめんなさい‼ど、どど、どうしよう‼ウェイト先輩‼」
祖父だというヴィクターにより、髪をきちんとしなさいと諭され……と言うよりも、祖母の顔が見ていたいと泣きつかれ、髪を縛り直したカイが、焦りぎみに振り返る。
その顔に茫然とする面々の中で、一番に立ち直ったアルドリーが、
「カイ兄さん‼その子、俺の叔母に当たる、綾ちゃん‼騎士として、淑女に尽くしてください‼怖がりだから一杯いいこいいこして‼よろしく‼」
「え、あ、はい‼かしこまりました。えと、休ませてあげた方がよろしいですね‼行って参ります‼」
そっと抱き上げて去っていったカイの姿に、
「あの顔ずっと見ていたら、心臓に悪くない?」
呟いたのはエドワードだった。
「えーと、では、改めて、私は、アルドリー・ランスロットです。年は今日で16歳です。アルドリーは仰々しいので、グランディアでの名前の幸矢か、アルと呼んでください。一応、シエラシール卿に剣術に学問を、芸術は造形がないというわけではなくて、下手で、術は使えません。よろしくお願いいたします」
頭を下げた横で、
「幸矢は、芸術よりも動くのが得意だもんね。あ、でも、剣舞は本当に美しいんだよ。それとかグランディアの巫女の代わりに、奉納するのは、女性の格好で踊るもんね?」
「綾ちゃんは踊れないし、あれは本当に体力がいって、さーやや六槻には無理‼仕方ないだろ」
「あ、ごめんなさい。僕は、アーサー・セドリシアンです。アーサーはよくある名前なので、グランディアの名前の蒼記と呼んでください。僕は一応、剣術もそこそこ、術も荒いって言われて、勉強もそこそこでっす‼」
その一言に、愕然とする騎士団メンバーの前で、ポカッと弟を叩くアルドリー。
「そこそこって言うのは、中途半端。お前は剣術は俺の次、学問は俺たちの中では一番下だけど大学院入学レベル‼術は彗の次、そして、これでいて芸術面は最高レベル。あぁ、このガキ大将がってじい様に嘆かれたじゃないか」
「言うか、勝てない時点で、僕には許せないんだ‼特に彗に負けたくない‼」
「あぁ、又始まったよ……面倒‼」
エドワードが顔をしかめる。
「あ、改めまして、エドワード・ローウェルです」
「えっ?アルレイシア・レアン……」
呟きかけたウェイトをぎっと睨み、
「今のはなし‼忘れてくれると嬉しいです‼11の月に16になります。剣は苦手なので、一応体術鍛えました。術は、扱えますが、視力が悪く精度が良くありません。暴発どんとこいです。学問は徹底的に学びました。グランディアの名前の彗か、エディでお願いします。で、さーや?」
今まで後ろに匿われていた形の少女が間から出てくる。
瞳は右目が蒼、左目が真紅のオッドアイに髪の毛は銀色の、アルドリーに良く似ている。
しかし、あどけない顔である。
ちょこんと可愛らしくお辞儀をした少女は、
「はじめまして。さー……私は、清夜と言います。こちらの名前はまだです。ママンセラ……お母様のお名前と一文字違うので、さーやと呼ばれています。お年は、6の月に14歳になります。よろしくお願いします」
「はぁ……せ、セリカ様だ……」
ウェイトが溜め息を漏らす。
「お会いしたことはないけれど、セリカ様……先代正妃セリカ様の絵姿に良く似ていらっしゃる……」
「良く言われるのです。似てますか?」
こてん、首をかしげるさまに、エリオットが、鼻血を噴く。
「ウワッ!お前、何してんだ‼この既婚者が‼」
従兄のルーが蹴り飛ばす。
「すみません。こいつはとことん絞めますので、お許しくださいませ」
「えっと……エリオット兄さんは置いといて、幸矢の方は?」
アーサーの問いにルーが真面目に、
「ナルシストと呼ばれたくないのと、最近結婚したばかりの妻に泣かれたくないので、一応制御しています」
「あ、でも、この顔には反応したんだ」
「言うか、こいつの方が萌えていると思います。ファー承認ですので」
一応上司のウェイトを示す。
「間近で見る?ウェイト兄さん」
「後でじっくり堪能させてください。先程の萌え……カイをようやく遊び倒せる……フフフ……なんて幸せなんだ‼」
「あ、六槻ちゃん‼」
駆け出すフィア。
べしょっと転ぶ寸前である。
「大丈夫?」
「うぇぇぇ……フィアちゃぁぁん。だっこ‼」
「あ、ベソかいてるってことは、疲れてぐずってるんだ、六槻」
エドワードの言葉に振り返ると、フィアは軽々と六槻を抱き上げてくるくるっと回り、抱き締める。
「はいはい。ねんねしようね?」
「くるくる、もう一回‼もう一回‼」
「はいはい。もう一回ね?ほーら、くるくる~」
「わーい‼もう一回‼」
「明日ね?明日は一杯遊ぼうね?」
抱き締めた六槻と共に歩いてくる。
目を擦ろうとする六槻に、
「ダメだよ。お目めが真赤になっちゃう」
「フィアちゃぁぁん‼もう一回‼」
「じゃぁ、後でね?その前に初めましてって言おうね?」
フィアは立ち止まり、
「にいさまたちにウィンねえ様とリジーに紹介します。カズール家のルーンの従姉になる、六槻ちゃんです。お年は8の月で15才……だよね?」
「うん。15の日に生まれたの。はじめましゅて、むーちゃん……あたくちは、六槻・アエラ・アルカサール・フェリシア・サラ・カズールともうしゅましゅ。よろしゅくおねがいいたちましゅ」
だっこでフィアの首にしがみついているので、もじもじとしつつえへっとわらう、年齢に見えない幼い少女と、これ又童顔のフィアに、
「ファー……私、本気で萌えたいのだけど……」
と呟いたウェイトに、奥方はにこにこと嬉しそうに答える。
「フィアは私の親友ですし、それに六槻様もとっても愛らしくて、私もお友達になりたいですわ。王太子殿下もとてもお優しい方ですし、ウィリー様の大好きな着せ替えを思う存分。あ、でも……」
「でも?」
手を繋いでいる妻を見下ろしたウェイトに、もじもじと、
「私も、忘れないでくださいね?」
「キャァァ‼忘れるわけないじゃない‼ファーはわたくしの可愛い奥さんですもの‼いくら他に萌えを求めても、貴女の事は忘れたりなんてしなくてよ~‼」
「う、嬉しいです‼私もウィリー様のことが一番‼」
「当たり前でしょう?わたくしの一番は、貴女なのに~‼」
と、イチャイチャ夫婦の横で、フィアは、
「はーい、くるくる~」
「キャァァ~‼お空飛んでるみたい~‼」
「明日は本当にお空を飛ぶからね?」
「わぁい‼」
と、こちらも周囲を気にしない様子に、アーサーが、
「ねぇ、幸矢?いい加減、目を覚まさせた方がいいと思うんだけど、どう?」
「う、ん……」
返事の声にはっとしたアーサーとずっとエスコートされていたルゥが見上げると、真っ青な顔のアルドリー。
「大丈夫か?アル‼」
「えっと、目の前グラグラ……気持ち悪い……」
ガタガタっと崩れそうになるアルドリーをすんでで支えたのは俊敏なルー。
「おい、エリオット‼血は止まったか‼すぐ運べ‼顔を見ずに運べ‼又吹いたら、命はない‼」
「解った‼」
「オラァァ‼殿下を担げと言ったんじゃない‼抱けと言ったんだ‼」
肩に担ごうとした従兄弟を殴り、膝の裏と背中を支えるようにそっと抱き上げさせる。
「行くぞ‼おい、ウェイト‼来い‼フィアとウィンは他の殿下方を。リジー。アーサー殿下と、いろいろ話して、情報のやり取りを頼んだよ‼」
一応ルーも騎士団長経験者。
指示も的確である。
そして、萌えから脱出した面々はそれぞれ動くのだった。
「あれ?セイ?どうしたの?」
「綾が、怖いから帰るって。だーかーら‼綾が心配しなくてもいいんだって」
近づいてきた二人をアルドリーは示し、
「俺……私からの挨拶の前に紹介します。彼が、私達の従兄、成時です。年は二つ上で、7の月に18才です」
「はじめまして、私は、アルドリーの母上、セイラの兄の息子の成時と申します。よろしくお願いいたします」
落ち着きと品は、父親や祖父に似たらしい。
「そして、こちらは、父の妹の綾です。2の月生まれなので、18才です。ほら、綾……大丈夫だから……」
「……あ、綾だ。よろしくお願いする……」
びくびく怯える様は庇護欲を掻き立てる……その上、成時は栗色の髪と瞳の童顔の少年だが、綾は漆黒の髪と瞳の、冷たそうに見えるが清楚な美少女……。
すぐにでも婚約者を指名した方がいいんじゃないか?
それか騎士を……。
「成時様、綾様、よろしくお願いいたします」
と、頭を下げると、くしゃっと顔が歪む。
「えっ?」
挨拶だったのだが……と狼狽える面々の前で、
『こ、コワイコワイコワイ……‼』
イヤイヤと首を振り、成時がだきよせても逃げようとする。
「あ、綾‼大丈夫だから‼」
『イヤァァァ‼』
成時の手を逃れ走り出そうとした綾は、ドーンと何かにぶつかり反動で倒れかける。
「わぁぁ‼ご、ごめんなさい!」
その声と共に、支えられるというよりも抱き締められる。
「大丈夫でしたか?申し訳ありません。ちょっと前が明るくなって……」
『も、申し訳ない……』
綾ははっとして頭をあげると、ドアップのアイスブルーの瞳の超絶美貌に唖然とし、
「ど、どうしましたか?やっぱり不細工……」
という声を聞きつつ気絶したのだった。
「え、えぇぇ‼や、やっぱり不細工だから?ごめんなさい‼ど、どど、どうしよう‼ウェイト先輩‼」
祖父だというヴィクターにより、髪をきちんとしなさいと諭され……と言うよりも、祖母の顔が見ていたいと泣きつかれ、髪を縛り直したカイが、焦りぎみに振り返る。
その顔に茫然とする面々の中で、一番に立ち直ったアルドリーが、
「カイ兄さん‼その子、俺の叔母に当たる、綾ちゃん‼騎士として、淑女に尽くしてください‼怖がりだから一杯いいこいいこして‼よろしく‼」
「え、あ、はい‼かしこまりました。えと、休ませてあげた方がよろしいですね‼行って参ります‼」
そっと抱き上げて去っていったカイの姿に、
「あの顔ずっと見ていたら、心臓に悪くない?」
呟いたのはエドワードだった。
「えーと、では、改めて、私は、アルドリー・ランスロットです。年は今日で16歳です。アルドリーは仰々しいので、グランディアでの名前の幸矢か、アルと呼んでください。一応、シエラシール卿に剣術に学問を、芸術は造形がないというわけではなくて、下手で、術は使えません。よろしくお願いいたします」
頭を下げた横で、
「幸矢は、芸術よりも動くのが得意だもんね。あ、でも、剣舞は本当に美しいんだよ。それとかグランディアの巫女の代わりに、奉納するのは、女性の格好で踊るもんね?」
「綾ちゃんは踊れないし、あれは本当に体力がいって、さーやや六槻には無理‼仕方ないだろ」
「あ、ごめんなさい。僕は、アーサー・セドリシアンです。アーサーはよくある名前なので、グランディアの名前の蒼記と呼んでください。僕は一応、剣術もそこそこ、術も荒いって言われて、勉強もそこそこでっす‼」
その一言に、愕然とする騎士団メンバーの前で、ポカッと弟を叩くアルドリー。
「そこそこって言うのは、中途半端。お前は剣術は俺の次、学問は俺たちの中では一番下だけど大学院入学レベル‼術は彗の次、そして、これでいて芸術面は最高レベル。あぁ、このガキ大将がってじい様に嘆かれたじゃないか」
「言うか、勝てない時点で、僕には許せないんだ‼特に彗に負けたくない‼」
「あぁ、又始まったよ……面倒‼」
エドワードが顔をしかめる。
「あ、改めまして、エドワード・ローウェルです」
「えっ?アルレイシア・レアン……」
呟きかけたウェイトをぎっと睨み、
「今のはなし‼忘れてくれると嬉しいです‼11の月に16になります。剣は苦手なので、一応体術鍛えました。術は、扱えますが、視力が悪く精度が良くありません。暴発どんとこいです。学問は徹底的に学びました。グランディアの名前の彗か、エディでお願いします。で、さーや?」
今まで後ろに匿われていた形の少女が間から出てくる。
瞳は右目が蒼、左目が真紅のオッドアイに髪の毛は銀色の、アルドリーに良く似ている。
しかし、あどけない顔である。
ちょこんと可愛らしくお辞儀をした少女は、
「はじめまして。さー……私は、清夜と言います。こちらの名前はまだです。ママンセラ……お母様のお名前と一文字違うので、さーやと呼ばれています。お年は、6の月に14歳になります。よろしくお願いします」
「はぁ……せ、セリカ様だ……」
ウェイトが溜め息を漏らす。
「お会いしたことはないけれど、セリカ様……先代正妃セリカ様の絵姿に良く似ていらっしゃる……」
「良く言われるのです。似てますか?」
こてん、首をかしげるさまに、エリオットが、鼻血を噴く。
「ウワッ!お前、何してんだ‼この既婚者が‼」
従兄のルーが蹴り飛ばす。
「すみません。こいつはとことん絞めますので、お許しくださいませ」
「えっと……エリオット兄さんは置いといて、幸矢の方は?」
アーサーの問いにルーが真面目に、
「ナルシストと呼ばれたくないのと、最近結婚したばかりの妻に泣かれたくないので、一応制御しています」
「あ、でも、この顔には反応したんだ」
「言うか、こいつの方が萌えていると思います。ファー承認ですので」
一応上司のウェイトを示す。
「間近で見る?ウェイト兄さん」
「後でじっくり堪能させてください。先程の萌え……カイをようやく遊び倒せる……フフフ……なんて幸せなんだ‼」
「あ、六槻ちゃん‼」
駆け出すフィア。
べしょっと転ぶ寸前である。
「大丈夫?」
「うぇぇぇ……フィアちゃぁぁん。だっこ‼」
「あ、ベソかいてるってことは、疲れてぐずってるんだ、六槻」
エドワードの言葉に振り返ると、フィアは軽々と六槻を抱き上げてくるくるっと回り、抱き締める。
「はいはい。ねんねしようね?」
「くるくる、もう一回‼もう一回‼」
「はいはい。もう一回ね?ほーら、くるくる~」
「わーい‼もう一回‼」
「明日ね?明日は一杯遊ぼうね?」
抱き締めた六槻と共に歩いてくる。
目を擦ろうとする六槻に、
「ダメだよ。お目めが真赤になっちゃう」
「フィアちゃぁぁん‼もう一回‼」
「じゃぁ、後でね?その前に初めましてって言おうね?」
フィアは立ち止まり、
「にいさまたちにウィンねえ様とリジーに紹介します。カズール家のルーンの従姉になる、六槻ちゃんです。お年は8の月で15才……だよね?」
「うん。15の日に生まれたの。はじめましゅて、むーちゃん……あたくちは、六槻・アエラ・アルカサール・フェリシア・サラ・カズールともうしゅましゅ。よろしゅくおねがいいたちましゅ」
だっこでフィアの首にしがみついているので、もじもじとしつつえへっとわらう、年齢に見えない幼い少女と、これ又童顔のフィアに、
「ファー……私、本気で萌えたいのだけど……」
と呟いたウェイトに、奥方はにこにこと嬉しそうに答える。
「フィアは私の親友ですし、それに六槻様もとっても愛らしくて、私もお友達になりたいですわ。王太子殿下もとてもお優しい方ですし、ウィリー様の大好きな着せ替えを思う存分。あ、でも……」
「でも?」
手を繋いでいる妻を見下ろしたウェイトに、もじもじと、
「私も、忘れないでくださいね?」
「キャァァ‼忘れるわけないじゃない‼ファーはわたくしの可愛い奥さんですもの‼いくら他に萌えを求めても、貴女の事は忘れたりなんてしなくてよ~‼」
「う、嬉しいです‼私もウィリー様のことが一番‼」
「当たり前でしょう?わたくしの一番は、貴女なのに~‼」
と、イチャイチャ夫婦の横で、フィアは、
「はーい、くるくる~」
「キャァァ~‼お空飛んでるみたい~‼」
「明日は本当にお空を飛ぶからね?」
「わぁい‼」
と、こちらも周囲を気にしない様子に、アーサーが、
「ねぇ、幸矢?いい加減、目を覚まさせた方がいいと思うんだけど、どう?」
「う、ん……」
返事の声にはっとしたアーサーとずっとエスコートされていたルゥが見上げると、真っ青な顔のアルドリー。
「大丈夫か?アル‼」
「えっと、目の前グラグラ……気持ち悪い……」
ガタガタっと崩れそうになるアルドリーをすんでで支えたのは俊敏なルー。
「おい、エリオット‼血は止まったか‼すぐ運べ‼顔を見ずに運べ‼又吹いたら、命はない‼」
「解った‼」
「オラァァ‼殿下を担げと言ったんじゃない‼抱けと言ったんだ‼」
肩に担ごうとした従兄弟を殴り、膝の裏と背中を支えるようにそっと抱き上げさせる。
「行くぞ‼おい、ウェイト‼来い‼フィアとウィンは他の殿下方を。リジー。アーサー殿下と、いろいろ話して、情報のやり取りを頼んだよ‼」
一応ルーも騎士団長経験者。
指示も的確である。
そして、萌えから脱出した面々はそれぞれ動くのだった。
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