コマンド見えるようになったので、ハーレム作ります!

片山樹

敏感系主人公

 俺が富田さんに好きと伝えたことはあったか? 
――ノー。

と言うわけで、俺は答える。

「えっ? なんだって?」

どこかのライトノベルの鈍感系主人公がヒロインに愛の告白的な何かを唐突に言われた時に秘技を。

富田さんの震えていた手は固まってしまい、目は俺を睨みつけている。

それだけで理解できない奴はやはり鈍感系なのかもしれないけれど、俺は敏感系だ。

だから気づく。

自分が地雷を踏んでいることに。

「もう一回、言ってくれませんか?
先輩……?」
目が虚ろになって、焦点が合っていない。

これは危険である。

人間も動物なので本能的に気づく。

「あ、あ。えぇーとだなぁー。
えぇーっと」

言葉を濁し、空気を濁す。
これぞ、正にクズの道。
どうやら俺の本心はこの状況を打破する作戦を探しているらしく、言葉が上手く出てこない。

「先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩」

「どうしたんだ?」

相手の言動を聞いて異常と分かっているのに訊ねるなんて……死亡フラグが立っている。

こんな時はしょうが無い。

逃げるしかねぇ〜な。

俺は富田さんの身体を押し退け、部屋を出る。
部屋を出るとそこには我が妹がいた。

「あ、おにぃー起きたんだ?
それよりそのどうしたの? 目が赤いんだけど」

柚葉が驚いた表情で見つめていた。

後ろからギシギシと聞こえるので確認すると、

「せ、先輩……今、わたしを押し退けましたよね?」

あれ? 顔が赤い気がする。

「あぁーあれはちょっと命の危険を感じて、そのあれだ。正当防衛だ! 防衛本能なのだ!」

「そうですか。そうですか。先輩にとってわたしの存在は押し退けるほどの存在ってことですか。わたしは捨てられた女ってことですか……」

富田さん、あまりにも悲観的になりすぎだろ。

「俺は絶対、富田さんを見捨てたりしない!
だからさ、元気になってくれよ」

「あぁぁぁーおにぃー! ずるいずるい!?
わたしにもわたしにも!」

柚葉が顔をプクッとさせ、俺をポカポカと殴ってくる。

「はいはい、わかったよ。柚葉、俺はお前を大事にしてるよ」

「はぁぁぁぁ……意外と大胆さんですね。おにぃーは……」

頬が一気に染まり、恥ずかしがる柚葉の姿は可愛かった。可愛すぎた。

「ふふっ、失敗してしまいました。
ぶっ壊そうとしていたのに……」

「ぶ、ぶっ壊す? どういうこと?」

富田さんに訊ねてみる。

「今のは無かったことでお願いします!」

「なんで?」

「ん? 愛美ちゃんなんて言ったの?」

「何も言ってないよ」

汗がタラタラと流れているので動揺しているのが、見てすぐに分かるが

「あ、そうなんだぁー」

柚葉は正真正銘の馬鹿なのか、それとも天然なのか、はたまた気を遣って誤魔化したのかは定かではないが、富田さんは助かったみたいな顔をしていた。

俺も今回は場の空気を読んで知らないふりをしておこうと思った。

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