もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第27話 英雄凱旋


「はぁ……終わったー……」

 激戦だった。
 久しぶりにこんな盛大に能力を使った。
 斬られた頬が痛い。
 そして、学園を見下ろす。
 そこでは多くの女生徒達が翔馬の戦いを見守っており、激闘の末勝利した翔馬を祝福していた。
一応周りを見回し、魔物がいないことを確認するとデス・フィールドを解除する。
 その後、ゆっくりと落ちて行き、仁王立ちで翔馬を見上げていたソフィアの下に行く。

「ご苦労であったぞ! 褒めて遣わす!」
「あ、有り難き幸せ……」

 疲れていたが、何となく空気を読んで膝をつき頭を下げる。
 それを満足げに見たソフィアは両手を広げて、集まった生徒達全員に聞こえるように声を張り上げ、翔馬の戦果を報告する。

「うむ! 皆の者、よく聞けぃ! 長年我らを脅かしてきた七人の魔王。その内の二体、アスタロトとベルゼビュートは我が騎士、坂上相馬が討ち取ったりぃ―――――!」
「「「「わぁぁぁぁぁ―――――!」」」」

 その瞬間、地鳴りがするほどの歓声を上げ喜んでいる。
 彼女達は口々に相馬の名前を口にしていた。

(相馬? あれ、ソフィア様、いましょじゃなくてそって言ったような……あ、俺がさっき適当に言った偽名か)

 今の状態は坂上翔馬ではなく、坂上相馬だった。
 口を覆っていた布はベルゼビュートに切られたものの、フードは付いたままで切れ味がよかったおかげかそれほど翔馬の顔は見えていない。
 坂上相馬は翔馬の兄という設定なので、兄弟だから似てるという言い訳が出来る。

「相馬様―、こっち見てー」

 だが、あまり見られるのもまずい。
 見る代わりに手を上げて応える。

「きゃー、相馬様がこっちにお手を振ってくださったわ!」
「……」

 反応に困る。

「では相馬も疲れたであろう! 皆の者、道を空けよ! 英雄の凱旋である!」

 それを察してくれたソフィアがそう叫ぶと、屋敷までの道が即座に開く。

「よろしい! では相馬、参るぞ!」
「はい……」

 疲れ気味に返事をしながらソフィアの後ろに付いて行き、屋敷の中へと入る。
 そこで気力が尽きてしまった。

「お疲れじゃったな。おわっ! な、何をする我の身はそう軽く……寝ておるのか? 全く、仕方のない奴じゃのぅ」

 ソフィアの胸の中に倒れこみ、そのまま段々意識が遠くなっていく。
 遠くから響いてくる子守唄のような声を聞きながら……。

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