もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら
第26話 終幕
集合体の口が開き、その口からレイザー光線が翔馬に向かって放たれる。
(えっ、光線放てるの?)
予想外の攻撃だった。
翔馬のグラビティ・アーマーは光線も弾ける。
だから、その光線自体は翔馬には掠りもしない。
しかし、その光線の熱量は別だ。
アーマー内の熱が篭っていき危機的状況に追い込まれる前に、翔馬は体に纏っていた重力の膜を広げ、逆に集合体に光線が反射するように半球体状にする。
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉ――――――!」
雄叫びのような声を上げながら集合体の体が削れていく。
だが次の瞬間、魔物達が集まり、その穴が埋まっていく。
「うーん、これはベルゼビュートを倒さないと駄目なやつだな……」
しかし、ベルゼビュートの場所が分からない。
恐らくは頭か心臓にいるのだろうが、もし体中を移動できるのだとしたらかなりの手間が掛かる。
学園を覆っているデス・フィールドを解除すれば何とかなるのだが、それもできない。
「面倒くさいけど削りまくるか……」
両手を前に構え、その中心に重力の塊を作る。
「グラビティ・ボール」
その塊が子どもの頭ほどにすると、集合体に向けて放つ。
最初は頭に当てる。
グラビティ・ボールが当たった頭の右半分が一瞬で削れる。
「外れか……次!」
次に左半分、左胸、右胸、右肩、左肩と削っていく。
しかし、一向にベルゼビュートに当たらない。
削られた箇所も、一瞬で埋まる。
ベルゼビュートもやられてばかりではない。
翔馬を叩き落そうと、その大きな手で殴りつけてくる。
「うらぁ!」
翔馬は迫り来るその拳を、右腕で殴りつけ吹き飛ばす。
「ぐおおおおぉぉぉぉぉ―――――!」
手首から先を消し飛ばされた集合体は雄叫びを上げながら更に攻撃を繰り出してくる。
「持久力勝負……?」
翔馬がベルゼビュートを見つけるか、翔馬の力が尽きるのが先か。
翔馬にはまだまだ余力が残っている。
だが翔馬も人だ。いずれ限界が来る。
「多少無理をしても短期決戦が吉、かな」
両手で握り潰そうとしてくる集合体を移動してかわしながらそう呟く。
「いくぞ!」
気合をいれ両手を広げると、先程まで一つずつしか作っていなかったグラビティ・ボールが一気に十個以上現れる。
それを一気にぶつけられたことにより、集合体は穴だらけにされる。
「居た!」
ほんの一瞬だけだが、ベルゼビュートの姿が集合体の右腹に見えた。
もう一度グラビティ・ボールを十個ほど作り、右腹を中心に削り落としていく。
だがそこにはすでにベルゼビュートの姿はなかった。
「やっぱり移動できるのか……。まあ予想通りだけどね」
ちゃんといることが分かったのならそれだけで儲けものだ。
グラビティ・ボールを十個ほど作り、頭から順にローラー作戦を開始する。
ベルゼビュートも翔馬が更に力を入れ、自分を探し始めたことに危機感を抱く。
見た目からは想像もつかない程俊敏な動きをした集合体は、翔馬に近付きその両手でまた握り潰してくる。
見えないほどではないものの、百メートル以上もある巨大な物体がかなりの速度で動くというのは中々の迫力があった。
ついうっかり見上げてしまった翔馬は動き出すのが一歩遅れてしまう。
「かわせない? なら!」
自分を中心に半径五メートルほどの斥力フィールドを作り出す。
その強力なフィールドに両手を叩きつけるかと思いきや、斥力フィールドにぶつかる前で停止する。
(ん? ぶつけてこない? じゃあいったい……)
先程とは違うベルゼビュートの攻撃を疑問に思い、魔物達を見渡す。
そこで気付いた。
今、自分の周りを囲んでいたのは羽があり自ら飛ぶことができる魔物ばかりだった。
「目眩ましか!」
斥力フィールドを更に広げ、周りを囲んでいた魔物達を範囲内にいれ、吹き飛ばす。
「ベルゼビュートは何処だ?」
視界が晴れ周りを見回すが、百メートル以上あった巨大な集合体が消えていた。
逃げるにしろ、バラけるにしろ、あれほどの魔物を見失うはずがない。
周りを見渡した後、下を見る。
「ん?」
平地の地上に黒い点があった。
それは段々大きくなっていく。
「穴? 違う、影か!」
慌てて翔馬は上を見る。
落下していく速度も併せて、魔物ごと翔馬を押し潰す気だった。
流石の翔馬でも、あれだけの魔物を支えることはできない。
だが半径二メートル程に斥力フィールドを狭めれば何とかなる。
顔を守るように腕を十字に組み、身体を丸め、衝撃に備える。
集合体と翔馬の距離がみるみる狭まっていき、とうとう両者が激突する。
魔物達が通り過ぎていく怨嗟のような音と、翔馬の障壁にぶつかり魔物が弾ける音が辺りに響き渡る。
「ぐっ……」
流石にきつい。
だが耐えられないほどではない。
(何が目的なんだ?)
魔物の軍勢が物凄い速さで通り過ぎていくのを待ちながら翔馬は考える。
相手の狙いが読めない。
翔馬に運悪くぶつかった魔物は上と下からの圧力によりペチャンコになっていく。
魔物の数だって無限ではないだろうに、こんな雑な扱いをすればいずれ尽きてしまうだろう。
どう見ても一か八かの無謀な突撃にしか思えない。
迫り来る魔物の軍勢から少しでも状況を得ようと、しっかりと目を開け、通り過ぎていく魔物達を見る。
その瞬間……。
翔馬は首を傾ける。
その横を細い物体が翔馬の頬を掠める。
翔馬が範囲を狭めた強力な斥力フィールドを貫いて、だ。
驚愕で一瞬体が固まるが、傷口が少し痺れる。
(毒か!)
その事実に気付き、反射的に行動する。
毒の対応策は知識にある。
頬の傷口から重力で吸い込むように血ごと体外に排出する。
翔馬の頬からは無理やり血を掻き出した為、傷口からは本来流れる以上の血が流れる。
だが、その程度だ。
「何故……ワシの槍に、気付けた?」
魔物が落下する速度と同等の速さで目の前から出てくる槍を避けられるほど、翔馬の動体視力は言い訳ではない。
それでも翔馬が避けられた理由、それは……。
「昔、同じ事をした奴がいたんだよ。まあそいつは槍じゃなくて刃だったんですけどね」
自分の肩の傷口を触りながら答える。
翔馬の斥力フィールドの弱点は、侵入する面積が小さければその大きさに比例してその効果は小さくなっていく。
過去にその弱点を突かれ、大怪我を負ったのだ。
その経験を思い出し、ギリギリのタイミングで避けることができたのだった。
「そうか……」
ベルゼビュートは呟く。
「もう、逃がしません」
魔物達は全て地面に落ちていき、今この空中には翔馬と翔馬に槍を突き刺した状態で固まるベルゼビュートだけが浮いていた。
「一矢……報いてやったぞい……」
「……お見事です」
翔馬とベルゼビュートの実力差は歴然だった。
ベルゼビュートが己の命を犠牲にして、やっと一矢報いることができるほどに……。
「魔王、としての、誇りは、見せられたかのぅ……?」
「はい、充分に」
その言葉には嘘偽りはない。
あの経験がなければ翔馬は顔を貫かれ死んでいた。
「そうか……それはよかった……」
翔馬がそう頷くと、ベルゼビュートは儚くも納得したような表情をして、次の瞬間、その肉体は塵に変わっていく。
配下の魔物達も同様に塵になる。
ザザザ、という砂が擦れる音を盛大に残しながら、魔物達は全て塵に変わり、魔物の集合体は崩れ落ちていった。
(えっ、光線放てるの?)
予想外の攻撃だった。
翔馬のグラビティ・アーマーは光線も弾ける。
だから、その光線自体は翔馬には掠りもしない。
しかし、その光線の熱量は別だ。
アーマー内の熱が篭っていき危機的状況に追い込まれる前に、翔馬は体に纏っていた重力の膜を広げ、逆に集合体に光線が反射するように半球体状にする。
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉ――――――!」
雄叫びのような声を上げながら集合体の体が削れていく。
だが次の瞬間、魔物達が集まり、その穴が埋まっていく。
「うーん、これはベルゼビュートを倒さないと駄目なやつだな……」
しかし、ベルゼビュートの場所が分からない。
恐らくは頭か心臓にいるのだろうが、もし体中を移動できるのだとしたらかなりの手間が掛かる。
学園を覆っているデス・フィールドを解除すれば何とかなるのだが、それもできない。
「面倒くさいけど削りまくるか……」
両手を前に構え、その中心に重力の塊を作る。
「グラビティ・ボール」
その塊が子どもの頭ほどにすると、集合体に向けて放つ。
最初は頭に当てる。
グラビティ・ボールが当たった頭の右半分が一瞬で削れる。
「外れか……次!」
次に左半分、左胸、右胸、右肩、左肩と削っていく。
しかし、一向にベルゼビュートに当たらない。
削られた箇所も、一瞬で埋まる。
ベルゼビュートもやられてばかりではない。
翔馬を叩き落そうと、その大きな手で殴りつけてくる。
「うらぁ!」
翔馬は迫り来るその拳を、右腕で殴りつけ吹き飛ばす。
「ぐおおおおぉぉぉぉぉ―――――!」
手首から先を消し飛ばされた集合体は雄叫びを上げながら更に攻撃を繰り出してくる。
「持久力勝負……?」
翔馬がベルゼビュートを見つけるか、翔馬の力が尽きるのが先か。
翔馬にはまだまだ余力が残っている。
だが翔馬も人だ。いずれ限界が来る。
「多少無理をしても短期決戦が吉、かな」
両手で握り潰そうとしてくる集合体を移動してかわしながらそう呟く。
「いくぞ!」
気合をいれ両手を広げると、先程まで一つずつしか作っていなかったグラビティ・ボールが一気に十個以上現れる。
それを一気にぶつけられたことにより、集合体は穴だらけにされる。
「居た!」
ほんの一瞬だけだが、ベルゼビュートの姿が集合体の右腹に見えた。
もう一度グラビティ・ボールを十個ほど作り、右腹を中心に削り落としていく。
だがそこにはすでにベルゼビュートの姿はなかった。
「やっぱり移動できるのか……。まあ予想通りだけどね」
ちゃんといることが分かったのならそれだけで儲けものだ。
グラビティ・ボールを十個ほど作り、頭から順にローラー作戦を開始する。
ベルゼビュートも翔馬が更に力を入れ、自分を探し始めたことに危機感を抱く。
見た目からは想像もつかない程俊敏な動きをした集合体は、翔馬に近付きその両手でまた握り潰してくる。
見えないほどではないものの、百メートル以上もある巨大な物体がかなりの速度で動くというのは中々の迫力があった。
ついうっかり見上げてしまった翔馬は動き出すのが一歩遅れてしまう。
「かわせない? なら!」
自分を中心に半径五メートルほどの斥力フィールドを作り出す。
その強力なフィールドに両手を叩きつけるかと思いきや、斥力フィールドにぶつかる前で停止する。
(ん? ぶつけてこない? じゃあいったい……)
先程とは違うベルゼビュートの攻撃を疑問に思い、魔物達を見渡す。
そこで気付いた。
今、自分の周りを囲んでいたのは羽があり自ら飛ぶことができる魔物ばかりだった。
「目眩ましか!」
斥力フィールドを更に広げ、周りを囲んでいた魔物達を範囲内にいれ、吹き飛ばす。
「ベルゼビュートは何処だ?」
視界が晴れ周りを見回すが、百メートル以上あった巨大な集合体が消えていた。
逃げるにしろ、バラけるにしろ、あれほどの魔物を見失うはずがない。
周りを見渡した後、下を見る。
「ん?」
平地の地上に黒い点があった。
それは段々大きくなっていく。
「穴? 違う、影か!」
慌てて翔馬は上を見る。
落下していく速度も併せて、魔物ごと翔馬を押し潰す気だった。
流石の翔馬でも、あれだけの魔物を支えることはできない。
だが半径二メートル程に斥力フィールドを狭めれば何とかなる。
顔を守るように腕を十字に組み、身体を丸め、衝撃に備える。
集合体と翔馬の距離がみるみる狭まっていき、とうとう両者が激突する。
魔物達が通り過ぎていく怨嗟のような音と、翔馬の障壁にぶつかり魔物が弾ける音が辺りに響き渡る。
「ぐっ……」
流石にきつい。
だが耐えられないほどではない。
(何が目的なんだ?)
魔物の軍勢が物凄い速さで通り過ぎていくのを待ちながら翔馬は考える。
相手の狙いが読めない。
翔馬に運悪くぶつかった魔物は上と下からの圧力によりペチャンコになっていく。
魔物の数だって無限ではないだろうに、こんな雑な扱いをすればいずれ尽きてしまうだろう。
どう見ても一か八かの無謀な突撃にしか思えない。
迫り来る魔物の軍勢から少しでも状況を得ようと、しっかりと目を開け、通り過ぎていく魔物達を見る。
その瞬間……。
翔馬は首を傾ける。
その横を細い物体が翔馬の頬を掠める。
翔馬が範囲を狭めた強力な斥力フィールドを貫いて、だ。
驚愕で一瞬体が固まるが、傷口が少し痺れる。
(毒か!)
その事実に気付き、反射的に行動する。
毒の対応策は知識にある。
頬の傷口から重力で吸い込むように血ごと体外に排出する。
翔馬の頬からは無理やり血を掻き出した為、傷口からは本来流れる以上の血が流れる。
だが、その程度だ。
「何故……ワシの槍に、気付けた?」
魔物が落下する速度と同等の速さで目の前から出てくる槍を避けられるほど、翔馬の動体視力は言い訳ではない。
それでも翔馬が避けられた理由、それは……。
「昔、同じ事をした奴がいたんだよ。まあそいつは槍じゃなくて刃だったんですけどね」
自分の肩の傷口を触りながら答える。
翔馬の斥力フィールドの弱点は、侵入する面積が小さければその大きさに比例してその効果は小さくなっていく。
過去にその弱点を突かれ、大怪我を負ったのだ。
その経験を思い出し、ギリギリのタイミングで避けることができたのだった。
「そうか……」
ベルゼビュートは呟く。
「もう、逃がしません」
魔物達は全て地面に落ちていき、今この空中には翔馬と翔馬に槍を突き刺した状態で固まるベルゼビュートだけが浮いていた。
「一矢……報いてやったぞい……」
「……お見事です」
翔馬とベルゼビュートの実力差は歴然だった。
ベルゼビュートが己の命を犠牲にして、やっと一矢報いることができるほどに……。
「魔王、としての、誇りは、見せられたかのぅ……?」
「はい、充分に」
その言葉には嘘偽りはない。
あの経験がなければ翔馬は顔を貫かれ死んでいた。
「そうか……それはよかった……」
翔馬がそう頷くと、ベルゼビュートは儚くも納得したような表情をして、次の瞬間、その肉体は塵に変わっていく。
配下の魔物達も同様に塵になる。
ザザザ、という砂が擦れる音を盛大に残しながら、魔物達は全て塵に変わり、魔物の集合体は崩れ落ちていった。
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