もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第10話 編入

 次の日、朝食を食べた翔馬はソフィアから学園の制服をもらった。

「え、もう許可がでたのですか?」

 てっきり一週間は掛かるかと思っていたのに、こんなに早く許可が出るとは思わなかった。

「うむ、王様権限じゃ」
「暴君ですね……」

 相当強引な取引をしたのだろう。
 ニヤリと悪い笑顔を浮かべるソフィアに、翔馬は引き気味になる。

「まあそんなことはどうでもよい。では、お主、その紙に教室が書かれておるからそこへ向かうのじゃ」
「わかりました」

 素直に頷いた翔馬は部屋で制服に着替えてでて来る。

「おお、似合っておるではない!」
「ありがとうございます」

 基本的にソフィアの着ていた制服を男用にしたような服ではあるが、ネクタイだけは色が違った。
 翔馬が緑、ディオネが赤、そしてソフィアは黄色だった。

「ネクタイの色って男子が青、女子がピンクとかではないんですね」
「そうじゃ。魔法適正のある属性の色を着用することになっておる。二つある者はどちらかから好きな色を選べるが」
「え、でもソフィア様の黄色って」
「黄色は王族や大貴族の証じゃ。もし黄色のネクタイをしている者に話しかけられたら失礼のないようにな」
「なるほど、わかりました!」
「しかし! ナタリアには頭を下げる必要はないぞ。声を掛けられたらガンを飛ばしてやるのじゃ!」
「……」

 後ろにいたディオネが呆れて屋敷を出て行くのを見て、翔馬も何も言わずにそちらに向かった。

「おい! 我を無視して先に行くな! 待つのじゃ!」

 校舎までの道のど真ん中を堂々と歩いている途中、他の生徒達がこちらを見て噂を立てていた。

「ソフィア様の横にいらっしゃる方ってどなた?」
「知らないわ。従者かしら?」
「ネクタイが緑ってことは王侯貴族ではないって事よね?」
「この次期から入学が許されるってことはそれなりの地位のある方じゃないかしら」
「いえ、相当強力な魔術師という可能性もあるわよ」

 そんな話があちこちから聞こえてくる。

「早速噂になっておるな! 翔馬のよいお披露目になったようじゃ」
「私は翔馬がうっかり秘密を漏らさないか心配になってきました」
「ディオネは心配性じゃなぁ」
「ソフィア様はもっと気にしてください!」

 ディオネが脱力しながら言うと、ソフィアが豪快に笑う。
(俺って信用ないなー)
 翔馬は話に口を挟むことなく、心の中で溜息を吐く。
 そんな時だった。
 堂々と道の真ん中を歩く翔馬の元に一人の少女が歩いてくる。

「おはようございます、ソフィア様。ディオネさん、翔馬さん。翔馬さんを教室まで案内するように言われて来ました、ケレス・アイラと申します」
「うむ、ご苦労」
「よろしくお願いします」

 丁寧にお辞儀をした翔馬はソフィア達に振り返ると頭を下げる。

「では、行って来ます」
「うむ、ヘマをするでないぞ」
「はい」
「では、行きましょうか」

 ケレスがソフィアに一度お辞儀をして、先に行くのを後ろから付いていく。
 それを見送りながら、ソフィアとディオネが話す。

「彼は何者でしょう」

 ポツリとディオネが零す。

「昨日のテスト、奴の成績はどうじゃった」
「歴史以外はほぼ満点でした」

 その答えにソフィアは眉を顰める。

「満点じゃと?」
「はい、翔馬が通っていた学校は翔馬の世界でもトップクラスの学力を誇る有名な学園なのだそうです」
「ほぉ、つまり奴は向こうの世界でも天才ということじゃな?」
「そう言うことになります」

 ディオネが頷くと何故かソフィアは安心したような顔をする。

「如何なされました?」
「いやのぅ、それを聞いて安心したんじゃ」
「安心、ですか?」

 理由が分からないディオネが聞き返す。

「そうじゃ、だってそうじゃろ? 向こうの世界であやつのような者達で溢れかえっておったら我らが堪らぬわ。もし向こう側の人間が大挙して押し寄せたら、我らは調教された犬よりも従順に奴らの言うことを聞かなくてはならなくなる」
「……そうならない未来を望みます」
「当たり前じゃ」

 鼻を鳴らしながらソフィアは決意を新たにした。

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