復讐のパラドクス・ロザリオ

殻守

第14話 別れの森

「これで最後かな」
ベルフ神父と別れた後、エルケードは自宅へと戻り壊れた部屋の片付けをしていた。既に家としての機能は攻撃により失われており、住み続けるには不適切だった。
「それで、これからどうするんですか?エルケード様。」
一緒に片付けをしてくれていた村人の1人がそう聞いてきた。
エルケードは少し考えた様な顔をすると
「俺は村を出ることにするよ」
そう言った。村人達は特に驚く様子もなく、そうですかと言うと作業を再開した。
「寂しくなるな…」
村人の1人がそう嘆いているのをエルケードは胸が痛くなる想いで見つめていた。

「エルケード様、お気を付けて。我々は貴方ともう一度会えることを楽しみにしています。」
一夜明けた早朝に村人全員が村の出入り口にエルケードを見送ろと集まっていた。
「ああ、2年間世話になったな。」
エルケードは荷物の入った革袋を背中に背負うと背を向け村を離れようとした。
「!」
突然何かぶつかった様な衝撃がきて驚いているて振り向くと、幼い男の子がエルケードに抱きついていた。
エルケードは優しく引き離し、頭を軽く撫でた。
「必ずまた来るよ」
男の子は大粒の涙をボロボロと流しながら
「本当に?」
と震える声で言った。
エルケードは優しい笑顔を作り、
「ああ、本当さ。だから泣くんじゃない。男の子だろ?」
男の子はうんうんと頷きながら涙を腕で拭い、
「僕、お兄ちゃん見たいな騎士になる!」
と大きな声でそう言った。エルケードはもう一度頭を撫でると、
「そうか、頑張れよ。」
と優しく言った。
「うん!」
男の子は眩しい程の笑顔でそう言った頷いた。

手を振り村と村人達に別れを告げたエルケードはゆっくりと王都へ向かう道を歩いていた。木々が生い茂っているせいか薄暗く、風の音がハッキリと聞こえる程静かだった。そしてエルケードがちょうど道の半分くらいに来た頃、エルケードの後ろで風が乱れた。エルケードは一瞬で剣を抜き後ろに向け振った。すると金属音と共に辺り風が吹いた。そしてエルケードをまるで包むかのように風が乱れ始め、凄まじい風圧と共にエルケード目掛けて突っ込んで来た。しかしエルケードは全方位から来るその風圧を剣1本で捌ききった。その動きは既に超人と言っても過言ではない程の人間離れした動きだった。
「流石、この程度で倒すのは無理でしたか。」
背後から声をかけられエルケードは剣を抜いたまま振り向いた。そこには大きな木製の弓と無数の矢を持った濃い緑のフードを着た少年が立っていた。フードの間から見える顔には見覚えがあり、こちらを睨みつけていた。
「何のつもりだ?フォルス。」
フォルスはフードを外し、弓矢を構えて
「悪いがアンタをここから出す訳には行かない。」
そしてフォルスの周りの風が乱れ始め、
「その腕は切り落とさせて貰う。」
と言ってエルケードに矢を放った。

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