我が家の床下で築くハーレム王国
第121話二人の王女
「それは……どういう事なの? キャロル」
その言葉を聞いたハナティアは、その場で脱力して座り込んでしまう。
「さっきも言ったよ。私はずっと嘘をついてきたって」
「でもそれは、キャロルの両親の話であって、キャロルには直接関係は」
「親子なのに関係がないわけないでしょ」
「そんな、どうして!」
「私達の国の為だよハナちゃん」
「私達の……国?」
その言葉が何を示しているの、憶測ではあるが俺は分かってしまった気がする。
サクヤが言っていた出会うべきじゃなかった二人という言葉。
そしてキャロルが言っていた私達の国。
「あーあ、身分を隠すのも大変だったなぁ。二十年近く、ずっと小さい頃からここで暮らしてたから、自分の本当の名前も忘れそうになっちゃった」
「何を言っているの? ねえ、あなたは一体何を」
「まだ分からないの? なら、平ちゃんにでも聞いてみれば?」
「翔平?」
ハナティアが絶望に染まった顔でこちらを見る。彼女は気づいていないかもしれないけど、俺はようやくその答えにたどり着けた。
よく考えてみれば、あの旅行からずっとキャロルの姿をトリナディアでは見る事はなかった。かと言って地上に居続けているわけでもない。
なら彼女はどこにいたのか。
「セレスティアナ」
俺はその言葉を口にしてしまった。この言葉が何を意味しているのか、ハナティアが一番分かっているのだから。
「う……そ……」
「流石は平ちゃんだね。でも私、平ちゃんが考えるほど偉い立場ではないの。この国に送り込まれるくらいだから」
「おいキャロル、それ以上は」
「でもそれはあくまで生まれた頃の話。残念だけど、最近になってその時が来ちゃったの。だからもう会えない」
こちらが事実を飲み込めぬ内に、キャロルは淡々と新たな事実を積み重ねていく。まるで隠していた全てを吐き出すかのように。
「ただそれはあくまで親友の私としての話。今度次に会う時は、私も今のハナちゃんみたいに綺麗な格好でお話ができるかも」
「いい加減にしろキャロル!それ以上話すなら」
「話すならどうするの? 私を……殺す?」
「キャロル!」
我慢ができなくなった俺は、部屋を飛び出る。けどそこにはキャロルの姿はなく、残されたのは確かに彼女がそこにいた事を示す残香だけだった。
「っ! くそ」
怒りが抑えられない俺は、壁を拳で殴りつける。どうして……どうしてこんな事になってしまったんだ。
(キャロル、お前は俺達をみてどう思ったんだ。たとえお前が異国の王女だとしても、ハナティアとは親友じゃないのか?!)
それを誰よりもキャロル自身が分かっているはず。それなのに、何故彼女はこんな別れ方を……。
「翔平……」
部屋の入口からハナティアが俺を呼ぶ。あまりにショックな出来事だったのか、ハナティアはかなり弱っていた。
「何でこんな日に、こんな事にならないといけないんだよ。こんな形で別れるなんて、許せるのか? キャロル」
「もういいよ翔平。キャロルの意思はもう伝わったから」
「ハナティア……」
「ほら、披露宴に戻ろう? サクヤ達困らせちゃっているだろうし」
「……ああ」
結局俺達はモヤモヤしたまま、披露宴に戻り、そしてそのまま一連の行事を終える事になってしまったのだった。
■□■□■□
その日の夜遅く。
「ごめん翔平、今日もここで寝かせて」
今日はそれぞれの部屋で寝る予定だったのだが、ハナティアが夜中にこっそり部屋にやって来たので、結局二人で三日連続一緒に寝ることになった。
「やっぱり寝れないのか?」
「うん。疲れているはずなのに、やっぱり眠れない」
「俺もだ」
今日はお互い背を向けて布団に入っているので、今ハナティアがどんな顔をしているのかは分からない。でも彼女は、ここに来る前からきっと……。
「私ね、まだ信じられないんだ。キャロルが、その、セレスティアナの王女だったなんて」
「最近即位することになったんだろ。でもキャロルはお前と出会った時から」
「それ以上は言わないで。悲しくなるから」
ずっと涙声のハナティア。今日のこの結婚式で、彼女は手に入れたものもあれば失ったものもあった。でもきっと今は、失ったものの方が彼女は大きいのかもしれない。
「悲しいからここに来たんだろ?」
「……」
「だったら沢山泣けよ。俺達はもう恋人じゃなくて夫婦なんだから。悲しいことも楽しい事も全部一緒に受け入れよう」
「翔平ぃ……」
何か動く音がすると共に、背中に何かが触れた感触がする。
「キャロルを、大切な友達をずっと信じてたのに。あんな事があっても、キャロルは友達だって信じてたのに。なのに、なのに」
今度は服が擦れる感触。そして背中が僅かに濡れる。
「私友達失っちゃったよ。キャロルが……キャロルが居なくなっちゃったよぉ……」
ずっと我慢してきたであろう感情を爆発させるハナティア。俺はそれを、あえて黙って聞き、全てを受け止めた。
「キャロル……キャロルぅぅ……」
俺にとって人生で初めての結婚式は、幸せな事が多かったけど、それと同じくらいの悲しみを生んだとてもとても辛いものになった。
そして季節は冬へ。月日は十一月へと移ろいで行く……。
その言葉を聞いたハナティアは、その場で脱力して座り込んでしまう。
「さっきも言ったよ。私はずっと嘘をついてきたって」
「でもそれは、キャロルの両親の話であって、キャロルには直接関係は」
「親子なのに関係がないわけないでしょ」
「そんな、どうして!」
「私達の国の為だよハナちゃん」
「私達の……国?」
その言葉が何を示しているの、憶測ではあるが俺は分かってしまった気がする。
サクヤが言っていた出会うべきじゃなかった二人という言葉。
そしてキャロルが言っていた私達の国。
「あーあ、身分を隠すのも大変だったなぁ。二十年近く、ずっと小さい頃からここで暮らしてたから、自分の本当の名前も忘れそうになっちゃった」
「何を言っているの? ねえ、あなたは一体何を」
「まだ分からないの? なら、平ちゃんにでも聞いてみれば?」
「翔平?」
ハナティアが絶望に染まった顔でこちらを見る。彼女は気づいていないかもしれないけど、俺はようやくその答えにたどり着けた。
よく考えてみれば、あの旅行からずっとキャロルの姿をトリナディアでは見る事はなかった。かと言って地上に居続けているわけでもない。
なら彼女はどこにいたのか。
「セレスティアナ」
俺はその言葉を口にしてしまった。この言葉が何を意味しているのか、ハナティアが一番分かっているのだから。
「う……そ……」
「流石は平ちゃんだね。でも私、平ちゃんが考えるほど偉い立場ではないの。この国に送り込まれるくらいだから」
「おいキャロル、それ以上は」
「でもそれはあくまで生まれた頃の話。残念だけど、最近になってその時が来ちゃったの。だからもう会えない」
こちらが事実を飲み込めぬ内に、キャロルは淡々と新たな事実を積み重ねていく。まるで隠していた全てを吐き出すかのように。
「ただそれはあくまで親友の私としての話。今度次に会う時は、私も今のハナちゃんみたいに綺麗な格好でお話ができるかも」
「いい加減にしろキャロル!それ以上話すなら」
「話すならどうするの? 私を……殺す?」
「キャロル!」
我慢ができなくなった俺は、部屋を飛び出る。けどそこにはキャロルの姿はなく、残されたのは確かに彼女がそこにいた事を示す残香だけだった。
「っ! くそ」
怒りが抑えられない俺は、壁を拳で殴りつける。どうして……どうしてこんな事になってしまったんだ。
(キャロル、お前は俺達をみてどう思ったんだ。たとえお前が異国の王女だとしても、ハナティアとは親友じゃないのか?!)
それを誰よりもキャロル自身が分かっているはず。それなのに、何故彼女はこんな別れ方を……。
「翔平……」
部屋の入口からハナティアが俺を呼ぶ。あまりにショックな出来事だったのか、ハナティアはかなり弱っていた。
「何でこんな日に、こんな事にならないといけないんだよ。こんな形で別れるなんて、許せるのか? キャロル」
「もういいよ翔平。キャロルの意思はもう伝わったから」
「ハナティア……」
「ほら、披露宴に戻ろう? サクヤ達困らせちゃっているだろうし」
「……ああ」
結局俺達はモヤモヤしたまま、披露宴に戻り、そしてそのまま一連の行事を終える事になってしまったのだった。
■□■□■□
その日の夜遅く。
「ごめん翔平、今日もここで寝かせて」
今日はそれぞれの部屋で寝る予定だったのだが、ハナティアが夜中にこっそり部屋にやって来たので、結局二人で三日連続一緒に寝ることになった。
「やっぱり寝れないのか?」
「うん。疲れているはずなのに、やっぱり眠れない」
「俺もだ」
今日はお互い背を向けて布団に入っているので、今ハナティアがどんな顔をしているのかは分からない。でも彼女は、ここに来る前からきっと……。
「私ね、まだ信じられないんだ。キャロルが、その、セレスティアナの王女だったなんて」
「最近即位することになったんだろ。でもキャロルはお前と出会った時から」
「それ以上は言わないで。悲しくなるから」
ずっと涙声のハナティア。今日のこの結婚式で、彼女は手に入れたものもあれば失ったものもあった。でもきっと今は、失ったものの方が彼女は大きいのかもしれない。
「悲しいからここに来たんだろ?」
「……」
「だったら沢山泣けよ。俺達はもう恋人じゃなくて夫婦なんだから。悲しいことも楽しい事も全部一緒に受け入れよう」
「翔平ぃ……」
何か動く音がすると共に、背中に何かが触れた感触がする。
「キャロルを、大切な友達をずっと信じてたのに。あんな事があっても、キャロルは友達だって信じてたのに。なのに、なのに」
今度は服が擦れる感触。そして背中が僅かに濡れる。
「私友達失っちゃったよ。キャロルが……キャロルが居なくなっちゃったよぉ……」
ずっと我慢してきたであろう感情を爆発させるハナティア。俺はそれを、あえて黙って聞き、全てを受け止めた。
「キャロル……キャロルぅぅ……」
俺にとって人生で初めての結婚式は、幸せな事が多かったけど、それと同じくらいの悲しみを生んだとてもとても辛いものになった。
そして季節は冬へ。月日は十一月へと移ろいで行く……。
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