我が家の床下で築くハーレム王国
第113話知っている想いと知らない想い
「何を言い出すんだよ三日前に突然」
あまりの突然の言葉に俺は最初は驚いたが、これまでの彼女の言動とかを踏まえると、どこかで言い出すとは思っていた。
だけどそれを受け入れられるわけがない。
「突然じゃないわよ。私はもうーーずっと前から決めてたから」
「じゃあ元から結婚するつもりがなかったのか? ここまでサクヤとかに協力してもらったりしたのに」
「だって、仕方がないことじゃない! 私が、私自身の幸せが何なのか、分からなくなってきちゃったんだから」
それは前にも聞いた言葉。彼女はこれまでに何度も自分の幸せに悩み、その度に衝突してきた。彼女にとって俺といることは、そんなにも幸せなことじゃないというのだろうか。
俺と家族になる事がそんなにもーー。
「そんなに嫌なのか? 俺と家族になって、子供も生まれて、この国を築き上げていく事が」
「それが幸せだというなら、私は否定するよ。だってそれって、誰かの犠牲の上に成り立っている事じゃない。それが本当の幸せだって言えるの?」
「何かの犠牲があってこその幸せなんじゃないのか!」
俺はずっとずっとイライラしていた。ハナティアに対してではない。彼女がどんな犠牲を払ってでも手に入れられる幸せを、自分が与えてやれない事を。
本当だったら犠牲がない方が断然いい。彼女の姉だってこの場所にいて、地上にも行き来できて雪音達も一緒にいて、呪いなんかもなくて……。
「犠牲を払わなきゃ幸せをつかめないなんて悔しいさ。ハナティアだってそれを望んでいるのもわかるよ。
だけど、もうそれは出来ない。俺達は沢山の犠牲を払ってでも、前を見なくちゃいけないんじゃないのか?!」
「もう分からないよ!  私たちに何が必要なのか」
「何が必要ってそれは……」
これ以上言葉をぶつけ合っても埒があかないのは分かっている。俺達は何度も何度も言葉をぶつけ合って、何度も離れそうになって、それでと互いが好きで……。
(何が必要なんだ? 言葉でなければ俺たちは何が必要なんだ)
好きなのも分かっている。ハナティアだって俺だってこんな喧嘩を嫌っているのも分かっている。そんなの言葉にしなくても分かる。
じゃあ分からない部分は?
ハナティアが式を挙げたくない本心は?
「なあハナティア、俺達がこんなにも喧嘩をするのって、お互いの事を理解しているようでできてないからじゃないのか?」
「お互いの……事?」
「俺達はお互いの事を分からないから、こんなにも互いを傷つけあって、傷ついているんだと思う。特に最近はお互いに言葉を交わしてすらいない」
「それは……翔平が絶対反対すると思ったから」
「確かに反対した。けど俺にだって反対する理由がある」
「私だってちゃんとした理由が」
「だったらちゃんと話し合おう。時間がかかってでも、お互いが分かり合えるまで」
もう知っている事はそれでいい。
でも知らない事は、知った方がいい。
お互いが好きな事は知っている。けどそこに隠れてしまっている想いは知らない。ハナティアがどれだけ姉を思っていて、どれだけこの国を思っているのか。
ただ好きだから結婚するのではない。そこにちゃんとした意味を持って、俺達は家族になればいい。
「でも私の気持ちは、多分変わらないと思う。私はお姉ちゃんに王女になってもらいたい、それだけだから」
「それもちゃんと話そう。お前が自分の姉を思っていることは分かっている。けど、それ以上の事を知らない。だから教えてくれないか?」
「……翔平はそれで分かってくれるの? 私の気持ち」
「それは話してみないと分からない。でも言葉ってその為にあるんだろ?」
だからその言葉を使って、もう一度見つめ直してみればいい。だって俺は、ハナティアと人生を歩みたいってもう決めたのだから。
「翔平がそこまで本気なら……分かった。わたしも翔平に沢山言葉をぶつける。私の事を分かってもらう為に」
「ありがとう、ハナティア」
これから俺が綴っていくのは、結婚式を三日前に控えた俺とハナティアの、互いの気持ちを、思いを、本気でぶつけ合った記録。
そしてこの先に俺達が掴み取った未来は……。
「ありがとう翔平、私今すごく幸せ。だから」
■□■□■□
私がこの事を言い出したら、翔平は絶対に反対するって分かっていた。でもその気持ちは多分ずっと前から私の中にあったんだと思う。
結婚するって何だろう。
幸せって何だろうって。
私は何度も何度も葛藤し続け、時には翔平に八つ当たりして。今だってそうだ。もし翔平が今の言葉を私にかけてくれなかったら、私はこの場所から逃げて、彼と言葉を交わすことすら無かったのかもしれない。
知らない事をお互いに言葉にして知る。
その上で本当の自分の気持ちを決める。
結婚をするのか。
それともやめるのか。
「翔平はどうしてお姉ちゃんがこの国にいないのかは知っているよね?」
「ああ。呪いをなくしたいから、だよな。結婚して子供も生まれたら、自分と同じような子供が生まれてしまう。おまけに自分の命も無くなったしまうかもしれない。それが嫌だったんだよな」
「そうなの。でも一つだけ、お姉ちゃんも知らない私しか知らない理由があるの」
「ハナティアだけが知っている理由?」
その物語はまだ翔平と再会する少し前。私が翔平を探して、たった一度だけ外に出た時の話。
「お姉……ちゃん? どうしてこんな所に」
あまりの突然の言葉に俺は最初は驚いたが、これまでの彼女の言動とかを踏まえると、どこかで言い出すとは思っていた。
だけどそれを受け入れられるわけがない。
「突然じゃないわよ。私はもうーーずっと前から決めてたから」
「じゃあ元から結婚するつもりがなかったのか? ここまでサクヤとかに協力してもらったりしたのに」
「だって、仕方がないことじゃない! 私が、私自身の幸せが何なのか、分からなくなってきちゃったんだから」
それは前にも聞いた言葉。彼女はこれまでに何度も自分の幸せに悩み、その度に衝突してきた。彼女にとって俺といることは、そんなにも幸せなことじゃないというのだろうか。
俺と家族になる事がそんなにもーー。
「そんなに嫌なのか? 俺と家族になって、子供も生まれて、この国を築き上げていく事が」
「それが幸せだというなら、私は否定するよ。だってそれって、誰かの犠牲の上に成り立っている事じゃない。それが本当の幸せだって言えるの?」
「何かの犠牲があってこその幸せなんじゃないのか!」
俺はずっとずっとイライラしていた。ハナティアに対してではない。彼女がどんな犠牲を払ってでも手に入れられる幸せを、自分が与えてやれない事を。
本当だったら犠牲がない方が断然いい。彼女の姉だってこの場所にいて、地上にも行き来できて雪音達も一緒にいて、呪いなんかもなくて……。
「犠牲を払わなきゃ幸せをつかめないなんて悔しいさ。ハナティアだってそれを望んでいるのもわかるよ。
だけど、もうそれは出来ない。俺達は沢山の犠牲を払ってでも、前を見なくちゃいけないんじゃないのか?!」
「もう分からないよ!  私たちに何が必要なのか」
「何が必要ってそれは……」
これ以上言葉をぶつけ合っても埒があかないのは分かっている。俺達は何度も何度も言葉をぶつけ合って、何度も離れそうになって、それでと互いが好きで……。
(何が必要なんだ? 言葉でなければ俺たちは何が必要なんだ)
好きなのも分かっている。ハナティアだって俺だってこんな喧嘩を嫌っているのも分かっている。そんなの言葉にしなくても分かる。
じゃあ分からない部分は?
ハナティアが式を挙げたくない本心は?
「なあハナティア、俺達がこんなにも喧嘩をするのって、お互いの事を理解しているようでできてないからじゃないのか?」
「お互いの……事?」
「俺達はお互いの事を分からないから、こんなにも互いを傷つけあって、傷ついているんだと思う。特に最近はお互いに言葉を交わしてすらいない」
「それは……翔平が絶対反対すると思ったから」
「確かに反対した。けど俺にだって反対する理由がある」
「私だってちゃんとした理由が」
「だったらちゃんと話し合おう。時間がかかってでも、お互いが分かり合えるまで」
もう知っている事はそれでいい。
でも知らない事は、知った方がいい。
お互いが好きな事は知っている。けどそこに隠れてしまっている想いは知らない。ハナティアがどれだけ姉を思っていて、どれだけこの国を思っているのか。
ただ好きだから結婚するのではない。そこにちゃんとした意味を持って、俺達は家族になればいい。
「でも私の気持ちは、多分変わらないと思う。私はお姉ちゃんに王女になってもらいたい、それだけだから」
「それもちゃんと話そう。お前が自分の姉を思っていることは分かっている。けど、それ以上の事を知らない。だから教えてくれないか?」
「……翔平はそれで分かってくれるの? 私の気持ち」
「それは話してみないと分からない。でも言葉ってその為にあるんだろ?」
だからその言葉を使って、もう一度見つめ直してみればいい。だって俺は、ハナティアと人生を歩みたいってもう決めたのだから。
「翔平がそこまで本気なら……分かった。わたしも翔平に沢山言葉をぶつける。私の事を分かってもらう為に」
「ありがとう、ハナティア」
これから俺が綴っていくのは、結婚式を三日前に控えた俺とハナティアの、互いの気持ちを、思いを、本気でぶつけ合った記録。
そしてこの先に俺達が掴み取った未来は……。
「ありがとう翔平、私今すごく幸せ。だから」
■□■□■□
私がこの事を言い出したら、翔平は絶対に反対するって分かっていた。でもその気持ちは多分ずっと前から私の中にあったんだと思う。
結婚するって何だろう。
幸せって何だろうって。
私は何度も何度も葛藤し続け、時には翔平に八つ当たりして。今だってそうだ。もし翔平が今の言葉を私にかけてくれなかったら、私はこの場所から逃げて、彼と言葉を交わすことすら無かったのかもしれない。
知らない事をお互いに言葉にして知る。
その上で本当の自分の気持ちを決める。
結婚をするのか。
それともやめるのか。
「翔平はどうしてお姉ちゃんがこの国にいないのかは知っているよね?」
「ああ。呪いをなくしたいから、だよな。結婚して子供も生まれたら、自分と同じような子供が生まれてしまう。おまけに自分の命も無くなったしまうかもしれない。それが嫌だったんだよな」
「そうなの。でも一つだけ、お姉ちゃんも知らない私しか知らない理由があるの」
「ハナティアだけが知っている理由?」
その物語はまだ翔平と再会する少し前。私が翔平を探して、たった一度だけ外に出た時の話。
「お姉……ちゃん? どうしてこんな所に」
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