我が家の床下で築くハーレム王国
第100話二人の距離
あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
気が付けば俺の目の前にはクレナティアさんの姿はなかった。その代わりにいたのは演説を終えたであろうハナティア。
「無事終わったのか? 演説」
「うん、私が伝えたかった思い全部伝えてこれたと思う」
「そうか、よかった」
「ねえ翔平、もしかして怒ってる?」
「いや、別に怒ってなんか」
「絶対怒ってるよね?  それは私だって何も話さなかったのは悪かったと思ってるわよ。でもそれは、色々な事を考えた上で」
「だから怒ってないってば!」
自分でも何故イライラしているのか分からないが、ハナティアに強めに当たってしまう俺。でも怒っていないのは事実。
「しょ、翔平?」
「悪い……。強く当たるつもりはなかったんだ。でも俺は怒っていないのは本当なんだ」
「え、でも……」
「だけど怒ってはいないが、その分裏切られた気持ちになったよ」
「ごめんなさい。でも私、あれから翔平が時々寂しそうにしているのを見ると、その気持ちの方が大きくなってきてたの」
「寂しそう? 俺が?」
「多分翔平自身は気づいてないんだと思う。時々だけどすごく寂しそうな顔をしている時があるの」
「そっか……」
だからハナティアには見破られていたんだな。俺の中に眠っている本当の気持ちが。
言葉ではいくら言ったって、その気持ちが残ってさえいれば自然的に顔に出てしまう。俺はそんな表情を時折ハナティアに……。
(クレナティアさんがああ言うのも当たり前か。俺にはここで王として暮らす資格どころか……)
その覚悟すら足りていなかったんだ。
「やっぱりクレナティアさんが言っていた事は正解なんだな」
「お姉ちゃんが何か言ったの?」
「俺にはお前の隣に……トリナディアの王女のお前の隣に立つ資格はないんだってさ。よく考えたらそうだよな、こんなに俺未練たらたらじゃあ国どころかハナティアを引っ張ることすらできないんだよな」
「そんな事ない! 私の知っている翔平は、そんなに弱い人じゃないよ」
「だったら! だったらどうしてお前は……」
言葉が詰まる。これ以上は言ってはいけない。今これを言ったらさっき言ったこととまるで違う。
怒ってなんかいない。俺が怒っているのは俺自身なんだ。こんなにも情けない自分が、王としてこの場に立つだなんてあまりにも甘すぎた。
「俺は悲しいんだよ……。お前に余計な心配までさせて、更には自分の全てを捨てさせようとしているなんて考えたら、凄く悲しいんだよ」
「余計な心配だなんてそんな事ない! 私が勝敗を心配するのは当たり前でしょ! だってあなたは私の大切な人なんだから」
「だからそれが辛いんだよ! お前が自分の幸せよりも他人の幸せを願っている姿を見るのが」
お互いの溜めていた気持ちを吐露するかのように、言い合う俺とハナティア。でもその言葉に嘘は一つもなく、本心をそのままにむき出していた。
それがたとえ、互いの心を傷つける事になろうとしても。
「皆の幸せの願う事に何が悪いのよ! 私はこの国を支える王女なの。自分の幸せは翔平がここにいてくれるだけ、それでいいの!」
「それ以外はいいのかよ! もしお前があの演説の通りの事をしたら、もうこの場所には戻ってこれなくなるんだぞ」
「それでもいい! それが翔平の本当の幸せに繋がるなら」
「ハナティア……」
彼女の言葉一つ一つが胸を苦しめる。その苦しみについに耐えきれなくなった俺は、立ち上がってハナティアに背を向けた。
「ちょっとどこ行くのよ翔平!」
「散歩。大丈夫、すぐに帰ってくるから」
「だったら私も」
「少しだけでいいんだ、一人にしてくれ」
俺の言葉を聞いても尚止めようとするハナティアを無視して、その場から去る。ちゃんと戻ってくるつもりなんだけど、戻ってきたら気まずくなるんだろうな……。
(とりあえず今は気持ちを落ち着かせないと……)
余計な事を言ってしまいかねない。
■□■□■□
翔平が一人でどこかへ行ってしまった後、一人取り残された私は呆然とその場に立ち尽くしていた。
(翔平、どうして……)
「ハナティア様、ここにおられたんですね。翔平様が一人でどこかへ行かれましたけど、何かあったのですか?」
それと入れ替わるようにサクヤが部屋に入ってくる。私はサクヤの顔を見るなり、涙が堪えきれなくなっていた。
「は、ハナティア様、どうされましたか?!」
「サクヤ、私やっぱり間違っていたのかな……。翔平、凄く怒ってたの」
「一体何があったのですか?」
私は涙を流しながら先程のやり取りをサクヤに話す。
「それは……。確かにハナティア様に原因がありますね」
「やっぱり、そうなの?」
「正直な話私も今回の事に関しては怒っています。いくらハナティア様でも少々やり過ぎかと」
「でもそれが一番に決まっているじゃない! それが翔平にとっても幸せだし、誰も辛い思いをしなくて済むのよ」
「ではその場合、ハナティア様は辛くないのですか?」
「それは……。でもそれは今は関係ないもん」
「恐らく翔平様は、それについて怒っているのかと思います」
「……え?」
「ハナティア様は自分の事よりも他の方の事ばかりを考えすぎなのです。決して悪いとは言いませんが、もう少しハナティア様は自分の事も考えた方がよろしいのではないかと思います」
「自分の幸せ……」
翔平が隣にいるだけで充分だとは思っていたけど、それよりも私にとっての幸せは……。
「それに追わなくてよろしいのですか? 翔平様を」
「でも翔平は一人にして欲しいって」
「そういう時ほど誰かが支えてあげないといけないものですよ?」
「っ!?」
サクヤの言葉を聞くなり気が付けば私は翔平を追って、城の外へと駆け出していた。
気が付けば俺の目の前にはクレナティアさんの姿はなかった。その代わりにいたのは演説を終えたであろうハナティア。
「無事終わったのか? 演説」
「うん、私が伝えたかった思い全部伝えてこれたと思う」
「そうか、よかった」
「ねえ翔平、もしかして怒ってる?」
「いや、別に怒ってなんか」
「絶対怒ってるよね?  それは私だって何も話さなかったのは悪かったと思ってるわよ。でもそれは、色々な事を考えた上で」
「だから怒ってないってば!」
自分でも何故イライラしているのか分からないが、ハナティアに強めに当たってしまう俺。でも怒っていないのは事実。
「しょ、翔平?」
「悪い……。強く当たるつもりはなかったんだ。でも俺は怒っていないのは本当なんだ」
「え、でも……」
「だけど怒ってはいないが、その分裏切られた気持ちになったよ」
「ごめんなさい。でも私、あれから翔平が時々寂しそうにしているのを見ると、その気持ちの方が大きくなってきてたの」
「寂しそう? 俺が?」
「多分翔平自身は気づいてないんだと思う。時々だけどすごく寂しそうな顔をしている時があるの」
「そっか……」
だからハナティアには見破られていたんだな。俺の中に眠っている本当の気持ちが。
言葉ではいくら言ったって、その気持ちが残ってさえいれば自然的に顔に出てしまう。俺はそんな表情を時折ハナティアに……。
(クレナティアさんがああ言うのも当たり前か。俺にはここで王として暮らす資格どころか……)
その覚悟すら足りていなかったんだ。
「やっぱりクレナティアさんが言っていた事は正解なんだな」
「お姉ちゃんが何か言ったの?」
「俺にはお前の隣に……トリナディアの王女のお前の隣に立つ資格はないんだってさ。よく考えたらそうだよな、こんなに俺未練たらたらじゃあ国どころかハナティアを引っ張ることすらできないんだよな」
「そんな事ない! 私の知っている翔平は、そんなに弱い人じゃないよ」
「だったら! だったらどうしてお前は……」
言葉が詰まる。これ以上は言ってはいけない。今これを言ったらさっき言ったこととまるで違う。
怒ってなんかいない。俺が怒っているのは俺自身なんだ。こんなにも情けない自分が、王としてこの場に立つだなんてあまりにも甘すぎた。
「俺は悲しいんだよ……。お前に余計な心配までさせて、更には自分の全てを捨てさせようとしているなんて考えたら、凄く悲しいんだよ」
「余計な心配だなんてそんな事ない! 私が勝敗を心配するのは当たり前でしょ! だってあなたは私の大切な人なんだから」
「だからそれが辛いんだよ! お前が自分の幸せよりも他人の幸せを願っている姿を見るのが」
お互いの溜めていた気持ちを吐露するかのように、言い合う俺とハナティア。でもその言葉に嘘は一つもなく、本心をそのままにむき出していた。
それがたとえ、互いの心を傷つける事になろうとしても。
「皆の幸せの願う事に何が悪いのよ! 私はこの国を支える王女なの。自分の幸せは翔平がここにいてくれるだけ、それでいいの!」
「それ以外はいいのかよ! もしお前があの演説の通りの事をしたら、もうこの場所には戻ってこれなくなるんだぞ」
「それでもいい! それが翔平の本当の幸せに繋がるなら」
「ハナティア……」
彼女の言葉一つ一つが胸を苦しめる。その苦しみについに耐えきれなくなった俺は、立ち上がってハナティアに背を向けた。
「ちょっとどこ行くのよ翔平!」
「散歩。大丈夫、すぐに帰ってくるから」
「だったら私も」
「少しだけでいいんだ、一人にしてくれ」
俺の言葉を聞いても尚止めようとするハナティアを無視して、その場から去る。ちゃんと戻ってくるつもりなんだけど、戻ってきたら気まずくなるんだろうな……。
(とりあえず今は気持ちを落ち着かせないと……)
余計な事を言ってしまいかねない。
■□■□■□
翔平が一人でどこかへ行ってしまった後、一人取り残された私は呆然とその場に立ち尽くしていた。
(翔平、どうして……)
「ハナティア様、ここにおられたんですね。翔平様が一人でどこかへ行かれましたけど、何かあったのですか?」
それと入れ替わるようにサクヤが部屋に入ってくる。私はサクヤの顔を見るなり、涙が堪えきれなくなっていた。
「は、ハナティア様、どうされましたか?!」
「サクヤ、私やっぱり間違っていたのかな……。翔平、凄く怒ってたの」
「一体何があったのですか?」
私は涙を流しながら先程のやり取りをサクヤに話す。
「それは……。確かにハナティア様に原因がありますね」
「やっぱり、そうなの?」
「正直な話私も今回の事に関しては怒っています。いくらハナティア様でも少々やり過ぎかと」
「でもそれが一番に決まっているじゃない! それが翔平にとっても幸せだし、誰も辛い思いをしなくて済むのよ」
「ではその場合、ハナティア様は辛くないのですか?」
「それは……。でもそれは今は関係ないもん」
「恐らく翔平様は、それについて怒っているのかと思います」
「……え?」
「ハナティア様は自分の事よりも他の方の事ばかりを考えすぎなのです。決して悪いとは言いませんが、もう少しハナティア様は自分の事も考えた方がよろしいのではないかと思います」
「自分の幸せ……」
翔平が隣にいるだけで充分だとは思っていたけど、それよりも私にとっての幸せは……。
「それに追わなくてよろしいのですか? 翔平様を」
「でも翔平は一人にして欲しいって」
「そういう時ほど誰かが支えてあげないといけないものですよ?」
「っ!?」
サクヤの言葉を聞くなり気が付けば私は翔平を追って、城の外へと駆け出していた。
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