我が家の床下で築くハーレム王国

りょう

第98話王女の演説〜演説中の再会〜

「ねえサクヤ、翔平にとっての幸せって何なのかな」

 翔平が正式にトリナディアに住み始めた日の夜、部屋にやって来たサクヤに私はそんな言葉を漏らしていた。

「どうしたんですかハナティア様。らしくない事ばかり言って、翔平様も心配していましたよ」

「らしくないって何よ。私だってこんな事を言いたくなる日だってあるんだから」

「そうでしたか。それでどうしてそのような質問を?」

「ちょっと思う事があってね。こんな事翔平に聞かなきゃよかったって後悔しているんだけどね」

「ハナティア様?」

 私はサクヤから目線を逸らすように窓の外の景色を見る。そこに写っているのはこれから成長を遂げようとしているトリナディアの景色。
 何度も見て来たこの景色も、これから新しい姿に変わり始める。だけどその場所には足りないものがある。

「ねえサクヤ」

「はい」

「私この国の姫になってしばらく経つけど、ずっと何かが足りないって思っていたの」

「それは翔平様の事ではなくてですか?」

「それもある。だけど、本来私が立っているこの場所に、本当なら立つべき人がいたでしょ?」

「それって……クレナティア様の事でしょうか?」

 サクヤの言葉に私は何も答えない。ただ黙って、トリナディアの景色を眺め続けていた。

「でもそれと翔平様の幸せとは関係ないのでは」

「確かに関係はないけど、お姉ちゃんがもしこの場所に立てば私と翔平はきっと……」

 その先は言葉にはしなかった。それは私にとってある種の逃げであり、今までの全てを崩す答えだったから。

 でもそれは、翔平だけじゃなくてお姉ちゃんも幸せにできる事。だってお姉ちゃんは今でもきっと……。

 ■□■□■□
 その日を境に、私は演説の内容を考えながらもその究極の選択について考え続けていた。勿論この答えが国民にも、そして翔平にも衝撃を与えてしまう事だって分かっていた。

「突然の事で国民の皆さんには不安を与えてしまうかもしれませんが、あくまでそれは出産が終わった話なので、すぐではありません」

 でも幸せの在り方について考えた時、最終的にたどり着く答えはそれだった。だから私は今日この場でその答えを述べた。勿論すぐの話というわけにはいかないけど、このお腹の子が生まれた後には新しい幸せが待っていると私は考えている。

「こんな勝手な話、受け入れるのには時間がかかると思います。しかしこれは私が決めた事なんです。そして何よりこれを望んでいるのは、他でもない私の姉だと思うんです」

 この演説が終わった後にどれだけの人に叩かれるか少し怖いけど、これは私にとってある種の改革だった。国を変えていくなら、私達王室の事も変えていかなければならない。

 そう、私が無事に子供を産んで、呪いなんてそんなのはないと証明する。

 お姉ちゃんが安心してこの場所に戻って来られるように。

「勝手すぎる話だとは思いますが、どうか受け入れてくれないでしょうか。それがこの国を変えるための一歩に」

「ふざけるな!」

 頭を下げて頼む私の言葉を遮って別の声が、その場に響く。その声の主は、

「何だよそれ、勝手すぎるだろ! お前はそれでいいのかよハナティア」

 他でもない翔平だった、

 ■□■□■□
 本気で怒ってはいなかった。ただ俺はハナティアが出した答えに対して、すごく悲しかった。

 彼女はここまで国民の事を思って一人で戦ってきた。

 彼女は誰よりも国を思っていた。

 彼女は誰よりも俺の事を好きでいてくれた。

 それが彼女の幸せだと思っていた俺は、約半年彼女を支え続けていた。なのに結局、ハナティアは自分の幸せではなくて、自分の姉の幸せを取ろうとした。

 クレナティアさんの気持ちも考えずに、勝手にそれが幸せなんだと決めつけて。

「私がそれでいいって決めたから、そうしたのよ。だってそれが何よりも一番の幸せじゃない」

「何がどうして幸せなんだよ」

 我慢しきれなかった俺は、ついに舞台に上がってしまう。演説を聞きに来た人達は少々ざわついているが、俺は彼女にこんな事を言わせるためにこの部隊を作ったわけではない。

「だって翔平、本当はトリナディアで暮らすより絶対に元いた地上で暮らした方が幸せでしょ? だったら私がこの地位から降りて、トリナディアから出て一緒に地上で暮らした方が全然いいでしょ」

「それは……そうかもしれないけど、そしたらお前はどうなるんだよ」

「トリナディアから出るんだから勘当に決まっているじゃない。けどそれで救える人だっているじゃない」

「それがクレナティアさんか? お前どうしてそんなにも姉の事を」

「本当、勝手すぎるんじゃないかしら。私がいない間に成長したかなって思ったけど、そうでもなかったみたいね」

「え?」

 突然入って来た第三者の声。その声に誰もが反応した。そしてその声に誰よりも反応を示したのはハナティアだった。

「お姉ちゃん?」

 沢山の人達を掻き分けて、声の主、クレナティアさんが俺達の手前までやって来る。

「クレナティアさん、どうして」

「本当は黙って帰ろうって思ったけど、そうもいかなくなっちゃったわね。元気にしてた? ハナティア」

「お姉ちゃん!」

 ハナティアは舞台から降りてクレナティアさんの元に抱きつく。本来なら姉妹の感動の再会、のはずなのだが今はそうはいかない。

「私がこの場所に戻るのが幸せ? 勝手な事言うわよねあなたは」

「だってお姉ちゃんは、本当は勘当なんかされていないし、この場所に戻って来たっておかしくないし」

「他人の幸せを勝手に決めるんじゃないわよ!」

 パチン

 響き渡るのは平手打ちの音。クレナティアさんはハナティアを離したと思うと、その直後に彼女にビンタした。

「お姉……ちゃん?」

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