我が家の床下で築くハーレム王国
第40話旅行明けの事件
旅行明けの月曜日、朝から大学があった俺は、まだ部屋で寝ているハナティアを起こさないように家を出た。
『私もしかしたら、柚お姉ちゃんに恨まれているのかもしれない』
昨晩ハナティアの口から放たれた言葉を思い出す。その言葉はあまりに衝撃的で、起きた後も鮮明に残っていた。
それに対して俺は特に答えも出せず、ハナティアを余計に苦しませる事になってしまった。
(恨まれてなんていないって、ハッキリ言えなかったんだ俺は。何も分かってない俺に彼女を救える言葉なんて……)
「おはようございます、翔平君」
その途中、雪音が合流して声をかけてくる。
「ああおはよう、雪音」
「何だか元気がありませんがどうかしましたか?」
「ちょっと考え事してて」
「ハナティアちゃんの事ですか?」
「まあな」
雪音に昨日の事を話そうか悩んだ。彼女は俺よりも過去の事を知っている。だから彼女ならもしかしたらと思ったけどこれを解決すべきなのは俺なのかもしれない。
「雪音はさ俺の姉ちゃんの事覚えているんだよな」
「はい」
「俺の姉ちゃんって、どんな人だった?」
「随分と大雑把な質問ですね。柚姉は誰からも慕われていて、とても優しくて、ハナティアちゃん同様私の憧れの存在でした」
「やっぱりそうだよな……」
そんな人が恨むとかそんな事を思わない、と俺は信じている。それはハナティアも理解しているはずだ。でも理解しているからこそ、彼女は余計に苦しいのかもしれない。
「もしかしてハナティアちゃんに何かあったんですか?」
「あったと言えばあったよ。ただ、俺には何も言えなくてさ」
「もしかして柚姉の事って……」
「そうなんだよ。昨日ハナティアはこう言っていたんだ。姉さんに恨まれているかもしれないって」
「恨まれているなんて、そんな……」
「それはハナティアも分かっているんだよきっと。でもアイツは……」
と言いかけたところで、大学へ到着してしまう。
「ハナティアちゃんの事はもう一度ゆっくり話したほうがいいですよ翔平君。きっとそれを望んでいると思うから、ハナティアちゃんも」
「そうだな」
ただ、話し合おうにも俺には彼女を救う言葉が見つからない。どうすれば俺はハナティアを……。
「もしどう言葉をかければいいか悩んでいるなら、素直な言葉を述べればいいと思いますよ」
さらに思いつめる俺に雪音は最後にそう言葉をかけた。
「素直な言葉?」
それはつまり、ハナティアがどう思っているかとかではなく、俺の考えている事を素直に言えって事だろうか。もしかしたら、それが一番なのかもしれない。
(俺が考えた事、それは……)
「それが一番だと思います。シプルザベストです」
「……分かったよ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
昨晩はほとんど眠る事ができなかった。翔平がに色々言われたけど、それでも私の中にあるものは一度も消えず、夜はいつ聞こえてくるか分からない声に、ただ怯えるばかりだった。
(翔平、大学行っちゃったのかな)
その影響か、ようやく眠りについて再び起きた時には翔平の姿はなかった。テーブルの上にはわざわざ私のために用意してくれたのか、朝食と置手紙が置いてあった。
『あまり思い詰めすぎるなよ。辛くなったらいつでも話は聞いてやるからな』
手紙には一言そう記されていた。翔平の言う通り昨日から私はかなり思い詰めているのかもしれない。考えてはいけないと思っていても、ずっと悪い事ばかり考えてしまって、柚お姉ちゃんにも悪い事をしてしまっている。
(とりあえず一回トリナディアに帰らないと)
サクヤには一度連絡してあるものの、一度は帰っておかないと不安にさせてしまう。
そう、あの時だってそうだった。
『探し……ましたよ。ハナティア様、皆さんに……心配かけては駄目じゃないですか』
『放っておいてよ! どうして柚お姉ちゃんは私なんかを……』
いつも通りの手順でトリナディアに戻り、城へと戻る。しかし戻ってしばらくサクヤを探したけど、見当たらない。
(寝ているにしては、もうお昼の時間だし……アルバイトも今日はないし、どこに行ったんだろう)
いつもなら帰るとすぐに出迎えてくれる彼女の姿がないと、寂しい。一体どこへ行ってしまったのだろうか。
(昨日の電話では出かけるとかそんな事一度も言っていなかったけど……)
「あ、おかえりハナちゃん。どこに行っていたの二日間も」
その代わりに何故か城の中でキャロルと遭遇する。
「二日間旅行に行っていたんだけど、それよりもサクヤの姿がないんだけどキャロル知らない?」
「あれ、もしかしてハナちゃん何も聞いてないの?」
「聞いてないって何が?」
「サクヤさん、しばらくどころか多分ずっとトリナディアに帰ってこないと思うよ」
「……え?」
それは彼女と一緒に過ごしてきた時間の中で、最も衝撃的で信じられない言葉だった。
「サクヤが……帰らない?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
大学の昼休み、いつも通りご飯を食べていると電話がかかってきた。
『今翔平様の大学の近くに来ているんですが、今からお会いできないでしょうか』
相手はサクヤだった。運良く次の講義は何もなかったので、正志達に一言言って大学の外へ出ると、サクヤの姿があった。
「どうしたんだよこんな昼間に。トリナディアにいなくていいのか?」
「実はその件でお話ししたいことがありまして」
いつになく真剣な目でサクヤは何かを俺に言おうとしているので、近くのベンチで話を聞くことに。
(トリナディアで何かあったのかな)
「ハナティアと喧嘩でもしたのか?」
「そうではありません。ただ多分今ハナティア様は怒っていらっしゃると思います」
「喧嘩もなしに怒るって、どういう意味だよそれ」
「私の格好を見て気がつきませんか?」
そう言われてある事に気がつく。そう言えば見慣れていたから気が付かなかったけど、サクヤがメイド服を着ていない。バイト先でも着ている彼女が一体どうして。
「わたくし誠に勝手ながら、お暇をもらう事にしました」
それはサクヤとの別れを告げる言葉だった。そのあまりの唐突さに、しばらく言葉を失ってしまう。
「お暇って……お前、ハナティアのメイドをやめるのか?」
「はい」
「いや、はいじゃなくて」
本人の許可なしに勝手すぎるだろそれ。
「ハナティア様には翔平様から直接話しておいてください。こんな事をして合わせる顔もないので」
「お前自身が話せよ」
「ですから、もう合わせる顔が……」
「そんなの関係ないだろ」
「とりあえず話だけを聞いてくださいよ」
「いや、聞くけどさ……」
旅行明け初日、大きな事件が俺を待ち迎えることになった。
『私もしかしたら、柚お姉ちゃんに恨まれているのかもしれない』
昨晩ハナティアの口から放たれた言葉を思い出す。その言葉はあまりに衝撃的で、起きた後も鮮明に残っていた。
それに対して俺は特に答えも出せず、ハナティアを余計に苦しませる事になってしまった。
(恨まれてなんていないって、ハッキリ言えなかったんだ俺は。何も分かってない俺に彼女を救える言葉なんて……)
「おはようございます、翔平君」
その途中、雪音が合流して声をかけてくる。
「ああおはよう、雪音」
「何だか元気がありませんがどうかしましたか?」
「ちょっと考え事してて」
「ハナティアちゃんの事ですか?」
「まあな」
雪音に昨日の事を話そうか悩んだ。彼女は俺よりも過去の事を知っている。だから彼女ならもしかしたらと思ったけどこれを解決すべきなのは俺なのかもしれない。
「雪音はさ俺の姉ちゃんの事覚えているんだよな」
「はい」
「俺の姉ちゃんって、どんな人だった?」
「随分と大雑把な質問ですね。柚姉は誰からも慕われていて、とても優しくて、ハナティアちゃん同様私の憧れの存在でした」
「やっぱりそうだよな……」
そんな人が恨むとかそんな事を思わない、と俺は信じている。それはハナティアも理解しているはずだ。でも理解しているからこそ、彼女は余計に苦しいのかもしれない。
「もしかしてハナティアちゃんに何かあったんですか?」
「あったと言えばあったよ。ただ、俺には何も言えなくてさ」
「もしかして柚姉の事って……」
「そうなんだよ。昨日ハナティアはこう言っていたんだ。姉さんに恨まれているかもしれないって」
「恨まれているなんて、そんな……」
「それはハナティアも分かっているんだよきっと。でもアイツは……」
と言いかけたところで、大学へ到着してしまう。
「ハナティアちゃんの事はもう一度ゆっくり話したほうがいいですよ翔平君。きっとそれを望んでいると思うから、ハナティアちゃんも」
「そうだな」
ただ、話し合おうにも俺には彼女を救う言葉が見つからない。どうすれば俺はハナティアを……。
「もしどう言葉をかければいいか悩んでいるなら、素直な言葉を述べればいいと思いますよ」
さらに思いつめる俺に雪音は最後にそう言葉をかけた。
「素直な言葉?」
それはつまり、ハナティアがどう思っているかとかではなく、俺の考えている事を素直に言えって事だろうか。もしかしたら、それが一番なのかもしれない。
(俺が考えた事、それは……)
「それが一番だと思います。シプルザベストです」
「……分かったよ」
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昨晩はほとんど眠る事ができなかった。翔平がに色々言われたけど、それでも私の中にあるものは一度も消えず、夜はいつ聞こえてくるか分からない声に、ただ怯えるばかりだった。
(翔平、大学行っちゃったのかな)
その影響か、ようやく眠りについて再び起きた時には翔平の姿はなかった。テーブルの上にはわざわざ私のために用意してくれたのか、朝食と置手紙が置いてあった。
『あまり思い詰めすぎるなよ。辛くなったらいつでも話は聞いてやるからな』
手紙には一言そう記されていた。翔平の言う通り昨日から私はかなり思い詰めているのかもしれない。考えてはいけないと思っていても、ずっと悪い事ばかり考えてしまって、柚お姉ちゃんにも悪い事をしてしまっている。
(とりあえず一回トリナディアに帰らないと)
サクヤには一度連絡してあるものの、一度は帰っておかないと不安にさせてしまう。
そう、あの時だってそうだった。
『探し……ましたよ。ハナティア様、皆さんに……心配かけては駄目じゃないですか』
『放っておいてよ! どうして柚お姉ちゃんは私なんかを……』
いつも通りの手順でトリナディアに戻り、城へと戻る。しかし戻ってしばらくサクヤを探したけど、見当たらない。
(寝ているにしては、もうお昼の時間だし……アルバイトも今日はないし、どこに行ったんだろう)
いつもなら帰るとすぐに出迎えてくれる彼女の姿がないと、寂しい。一体どこへ行ってしまったのだろうか。
(昨日の電話では出かけるとかそんな事一度も言っていなかったけど……)
「あ、おかえりハナちゃん。どこに行っていたの二日間も」
その代わりに何故か城の中でキャロルと遭遇する。
「二日間旅行に行っていたんだけど、それよりもサクヤの姿がないんだけどキャロル知らない?」
「あれ、もしかしてハナちゃん何も聞いてないの?」
「聞いてないって何が?」
「サクヤさん、しばらくどころか多分ずっとトリナディアに帰ってこないと思うよ」
「……え?」
それは彼女と一緒に過ごしてきた時間の中で、最も衝撃的で信じられない言葉だった。
「サクヤが……帰らない?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
大学の昼休み、いつも通りご飯を食べていると電話がかかってきた。
『今翔平様の大学の近くに来ているんですが、今からお会いできないでしょうか』
相手はサクヤだった。運良く次の講義は何もなかったので、正志達に一言言って大学の外へ出ると、サクヤの姿があった。
「どうしたんだよこんな昼間に。トリナディアにいなくていいのか?」
「実はその件でお話ししたいことがありまして」
いつになく真剣な目でサクヤは何かを俺に言おうとしているので、近くのベンチで話を聞くことに。
(トリナディアで何かあったのかな)
「ハナティアと喧嘩でもしたのか?」
「そうではありません。ただ多分今ハナティア様は怒っていらっしゃると思います」
「喧嘩もなしに怒るって、どういう意味だよそれ」
「私の格好を見て気がつきませんか?」
そう言われてある事に気がつく。そう言えば見慣れていたから気が付かなかったけど、サクヤがメイド服を着ていない。バイト先でも着ている彼女が一体どうして。
「わたくし誠に勝手ながら、お暇をもらう事にしました」
それはサクヤとの別れを告げる言葉だった。そのあまりの唐突さに、しばらく言葉を失ってしまう。
「お暇って……お前、ハナティアのメイドをやめるのか?」
「はい」
「いや、はいじゃなくて」
本人の許可なしに勝手すぎるだろそれ。
「ハナティア様には翔平様から直接話しておいてください。こんな事をして合わせる顔もないので」
「お前自身が話せよ」
「ですから、もう合わせる顔が……」
「そんなの関係ないだろ」
「とりあえず話だけを聞いてくださいよ」
「いや、聞くけどさ……」
旅行明け初日、大きな事件が俺を待ち迎えることになった。
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