我が家の床下で築くハーレム王国
第77話もう一人の親友が眠る場所
アルバイト二日目。俺達は朝七時に起きて孤児院の掃除を行っていた。
「お前よく朝から起きれるよな。俺まだ眠いんだけど」
「文句言うなよ正志。雪音なんて朝から張り切ってるぞ」
「女子って朝弱い方じゃなかったのかよ」
朝早いせいか正志が愚痴を漏らす。これでも遅い方だって沙羅は言っていたけど、当の本人はまだ起きていないようだ。
(そういえば寝る前の時に様子見に行ったら、元気なかったな)
制作具合を見に行ったのだが、どこか元気がない様子だった沙羅。俺は少しだけそれが気になっていたけど、起きてこない事と何か関係あるのだろうか。
「なあ翔平、俺一つ気になってたんだけどさ」
「ん?」
「お前さ沙羅さんとは中学生の頃から知り合いで、高校生の時もよくここに来てたって言ってたけど、そもそもどうしてお前がここに来ていたんだ?」
「それは、まあ友達だからな」
「友達だけか? 俺達に隠れて会うくらいだから。実はお前……」
「さあな。でも正志が考えているような事はないって、一応否定しておく」
「お前って本当分かりやすいよな」
いくらでも言ってろ、と思いながらも朝の清掃を続ける。ちなみに真相はどうかというと、そういう関係があったといえばあった。ただ事故とか色々あって、こうして離れる形にはなったけど、沙羅自身がどう思っているかは俺には分からない。
「ふわぁ、おはよう。ごめん私が寝坊しちゃって」
掃除する事しばらく、欠伸をしながら沙羅が起床してくる。
「おはよう沙羅。昨日は寝れなかったのか?」
「音を作っていたのもあったけど、ちょっと考え事をしててね。そしたら寝れなかったの」
「無理だけはするなよ。元々無茶なお願いだったんだし」
「大丈夫。翔平君の頼みだから」
笑顔で沙羅は答えるが、その笑顔には少し無理を感じた。やっぱり彼女にはどこか無理させているところがあるのだろう。でも歌作りにしては、無理をしていない様子だし、もし原因があるとしたら、
(俺、だよな)
本当なら沙羅にはもう二度と会う事はないとおの時は思っていた。だけど、今こうして会いに来てしまっている。ハナティアの頼みだったとはいえ、こうして再会した事が彼女にとって何よりも……。
「どうした翔平」
「ん? いや、ちょっとな」
「悩むくらいならちゃんと話せよ」
「いや、そうではないけどさ」
幸せだったりするんだろうか。
■□■□■□
二日目もやる事は初日と一緒で、仕事を大方覚えた事もあってか、初日よりもテキパキと仕事をこなせた。
「いただきまーす」
仕事をこなしている内に、気がつけばお昼。皆が揃って食事をとる中、沙羅の姿だけがどこにもなかった。
「院長さん、そういえば沙羅はどこへ?」
「今日はちょっと昼頃から出かけているのよあの子。ほら、そろそろあの時期でしょ?」
「あ、そういえば」
院長さんに言われてある事に俺も気づく。そういえば盆休みは過ぎたけど、そろそろだったか。
「何だ翔平、今日が何の日か知っているのか?」
「何か特別な日でしょうか」
「特別な日、って程ではないけど。沙羅にとってはとても大事な日だよ」
「何だよそれ」
「まあ、正志達は知らなくても損はないよ」
(もう四年か……)
昼飯を食べながら、俺はちょうど四年前のこの時期を思い出す。丁度この日付近に彼女は交通事故に遭って、不自由な生活を送る事になる。ただ、それが理由で出かけているというわけではない。当時の事故でもう一人の被害者がいたのだ。
「院長さん、その、俺も午後から出かけていいですか?」
「夕方までは忙しくないし、いいですよ。その代わり夕方には帰ってきてください」
「はい、ありがとうございます」
その事を思い出した俺は、いてもたってもいられず動き出していた。恐らく沙羅も同じ場所に向かっているだろうし、すれ違う事もない。今から間に合ってくれればいいんだけど。
「何だよあいつまで出かけるなんて」
「仕方がないんですよ。沙羅さんにとっても翔平君にとっても、この日は大切な日なんですから」
「院長、その大切な日ってどういう事なんですか?」
「今から四年前の事です」
■□■□■□
「それで翔平君もわざわざ来てくれたんだ」
「院長さんが許可してくれたからさ」
移動する事一時間後。俺は目的地であるとある墓所へとやって来ていた。そこには既に沙羅の姿があり、俺がやって来た事に驚いてはいたけど、事情を説明すると納得してくれた。
「でもまさか、忘れていたなんて事はないよね」
「も、勿論だよ」
墓掃除をして線香を置いて手を合わせる。この墓に眠っているのは、四年前沙羅と共に同じく交通事故で命を落とした親友。
「それにしてもよく車椅子で一人で来ようと思ったな」
「もう移動にもすっかり慣れちゃって。結構ここには一人で来る事が多いの」
「危ないとは思わなかったのか?」
「最初は……道路に出るのも怖かったけど、最近やっと慣れてきたの。時間の経過って怖いね」
「あれから四年、確かにあっという間だな」
「うん。でも私、一度もあの日の事を忘れてないんだ」
「俺も忘れてないよ」
忘れもしない。四年前の夏休みが明けてすぐに俺達の仲を壊す事になった交通事故。それは沙羅にとっても、俺にとっても一生消える事のない傷を残す事になった。
『沙羅と美優が交通事故……?』
それは一本の電話から全てが始まった。
「お前よく朝から起きれるよな。俺まだ眠いんだけど」
「文句言うなよ正志。雪音なんて朝から張り切ってるぞ」
「女子って朝弱い方じゃなかったのかよ」
朝早いせいか正志が愚痴を漏らす。これでも遅い方だって沙羅は言っていたけど、当の本人はまだ起きていないようだ。
(そういえば寝る前の時に様子見に行ったら、元気なかったな)
制作具合を見に行ったのだが、どこか元気がない様子だった沙羅。俺は少しだけそれが気になっていたけど、起きてこない事と何か関係あるのだろうか。
「なあ翔平、俺一つ気になってたんだけどさ」
「ん?」
「お前さ沙羅さんとは中学生の頃から知り合いで、高校生の時もよくここに来てたって言ってたけど、そもそもどうしてお前がここに来ていたんだ?」
「それは、まあ友達だからな」
「友達だけか? 俺達に隠れて会うくらいだから。実はお前……」
「さあな。でも正志が考えているような事はないって、一応否定しておく」
「お前って本当分かりやすいよな」
いくらでも言ってろ、と思いながらも朝の清掃を続ける。ちなみに真相はどうかというと、そういう関係があったといえばあった。ただ事故とか色々あって、こうして離れる形にはなったけど、沙羅自身がどう思っているかは俺には分からない。
「ふわぁ、おはよう。ごめん私が寝坊しちゃって」
掃除する事しばらく、欠伸をしながら沙羅が起床してくる。
「おはよう沙羅。昨日は寝れなかったのか?」
「音を作っていたのもあったけど、ちょっと考え事をしててね。そしたら寝れなかったの」
「無理だけはするなよ。元々無茶なお願いだったんだし」
「大丈夫。翔平君の頼みだから」
笑顔で沙羅は答えるが、その笑顔には少し無理を感じた。やっぱり彼女にはどこか無理させているところがあるのだろう。でも歌作りにしては、無理をしていない様子だし、もし原因があるとしたら、
(俺、だよな)
本当なら沙羅にはもう二度と会う事はないとおの時は思っていた。だけど、今こうして会いに来てしまっている。ハナティアの頼みだったとはいえ、こうして再会した事が彼女にとって何よりも……。
「どうした翔平」
「ん? いや、ちょっとな」
「悩むくらいならちゃんと話せよ」
「いや、そうではないけどさ」
幸せだったりするんだろうか。
■□■□■□
二日目もやる事は初日と一緒で、仕事を大方覚えた事もあってか、初日よりもテキパキと仕事をこなせた。
「いただきまーす」
仕事をこなしている内に、気がつけばお昼。皆が揃って食事をとる中、沙羅の姿だけがどこにもなかった。
「院長さん、そういえば沙羅はどこへ?」
「今日はちょっと昼頃から出かけているのよあの子。ほら、そろそろあの時期でしょ?」
「あ、そういえば」
院長さんに言われてある事に俺も気づく。そういえば盆休みは過ぎたけど、そろそろだったか。
「何だ翔平、今日が何の日か知っているのか?」
「何か特別な日でしょうか」
「特別な日、って程ではないけど。沙羅にとってはとても大事な日だよ」
「何だよそれ」
「まあ、正志達は知らなくても損はないよ」
(もう四年か……)
昼飯を食べながら、俺はちょうど四年前のこの時期を思い出す。丁度この日付近に彼女は交通事故に遭って、不自由な生活を送る事になる。ただ、それが理由で出かけているというわけではない。当時の事故でもう一人の被害者がいたのだ。
「院長さん、その、俺も午後から出かけていいですか?」
「夕方までは忙しくないし、いいですよ。その代わり夕方には帰ってきてください」
「はい、ありがとうございます」
その事を思い出した俺は、いてもたってもいられず動き出していた。恐らく沙羅も同じ場所に向かっているだろうし、すれ違う事もない。今から間に合ってくれればいいんだけど。
「何だよあいつまで出かけるなんて」
「仕方がないんですよ。沙羅さんにとっても翔平君にとっても、この日は大切な日なんですから」
「院長、その大切な日ってどういう事なんですか?」
「今から四年前の事です」
■□■□■□
「それで翔平君もわざわざ来てくれたんだ」
「院長さんが許可してくれたからさ」
移動する事一時間後。俺は目的地であるとある墓所へとやって来ていた。そこには既に沙羅の姿があり、俺がやって来た事に驚いてはいたけど、事情を説明すると納得してくれた。
「でもまさか、忘れていたなんて事はないよね」
「も、勿論だよ」
墓掃除をして線香を置いて手を合わせる。この墓に眠っているのは、四年前沙羅と共に同じく交通事故で命を落とした親友。
「それにしてもよく車椅子で一人で来ようと思ったな」
「もう移動にもすっかり慣れちゃって。結構ここには一人で来る事が多いの」
「危ないとは思わなかったのか?」
「最初は……道路に出るのも怖かったけど、最近やっと慣れてきたの。時間の経過って怖いね」
「あれから四年、確かにあっという間だな」
「うん。でも私、一度もあの日の事を忘れてないんだ」
「俺も忘れてないよ」
忘れもしない。四年前の夏休みが明けてすぐに俺達の仲を壊す事になった交通事故。それは沙羅にとっても、俺にとっても一生消える事のない傷を残す事になった。
『沙羅と美優が交通事故……?』
それは一本の電話から全てが始まった。
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