我が家の床下で築くハーレム王国
閑話3 姫、アルバイトをする
ハナティアがバイトをしたいと言い出して三日後。彼女は俺の隣で同じように働いていた。
「ありがとうございました」
<a href="//10676.mitemin.net/i211030/" target="_blank"><img src="//10676.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i211030/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
営業スマイルをしながら、品物を渡すハナティア。完璧すぎるその笑顔に少しだけ感心しながらも、やはり同じように働いていることに違和感を感じる。
「いいかハナティア、いくら結婚すると言ってもまだ何にも決まってないのに公の場であんな事言うなよ」
「え? 駄目だったの」
「あのなぁ。俺の立場を考えてくれよ」
突然の妻宣言により先程までひと騒ぎがあった。なんせ結婚なんて話誰にもしていなかった上に、相手が見た目はまだ幼い子だ。そんな子が妻だと名乗ったら、世間体的にもアウトだ。店長にも散々からかわれるし、それの説明のためにかなりの労力を使ったし、バイト始める前からヘトヘトだった。
しかもおまけに夫婦でイチャイチャしてろと言わんばかりに、俺に彼女の指導役を任されるし、何もかもが最悪だった。
「てかよく面接受かったよな。見た目からしたら成人しているようには見えないし」
「サラッと酷いこと言うわね。翔平の妻ですと言ったら即合格してくれたの、店長さんが」
「全て分かっていて自己紹介もさせたんだな、店長」
あとで問い詰める必要がありそうだ。
「ともかく今俺達は人前に立っているんだ。そういうのだけは弁えてくれよ」
「えー、折角の愛の共同作業なのに」
「は、恥ずかしい事をバイト中に言うなよ!」
思わず叫んでしまう。お客さんや店員から浴びせられる視線がすごく痛い。サクヤとは何度かシフト被った事はあったけど、彼女はちゃんと場を弁えていた。それに対してハナティアときたら、もう何も隠す必要がないと言わんばかりに張り切っている。
(フラグ恐るべし)
結局俺は今日の出勤の間、いつハナティアが変な事を起こさないかひたすら監視する事に没頭して、仕事どころではなかった。
「店長、本当にハナティ……花を雇うんですか?」
「柏原君の奥さん、いい子じゃないか。仕事を覚えるのも早いし、最近の新人は本当に生きがいい。アレでまだ高校生なのが勿体無いくらいだ」
「店長、彼女はとっくに二十歳越えています」
店長はハナティアを気に入ったのか、この後もシフトをどんどん入れると言い出すし、俺ともなるべく一緒に入れるらしい。
(からかう気満々だよな店長も……)
まあどうせ九月の夏休みが終わったら、ハナティアも俺もここで働く事はなくなると思う。
「あ、店長。そういえば話したい事があるんです」
その事をまだ店長に話していなかったので、俺はこの日に思い切って話をした。
「じゃあ柏原君はこの九月にバイトを辞めるんだね?」
「はい。まだ確定ではありませんが、恐らく……」
「寂しくなるが仕方ないな。何か事情があるのだろ?」
「はい。詳しくは言えませんが、ちょっと家庭の事情で」
「そうか」
この話を切り出す事が少し怖かった。大した理由の説明もなくバイトをいきなり辞めるだなんて、常識的に考えてあり得ない話だ。
「分かった。ちゃんと日付が決まったら教えてくれな」
「店長……はい!」
でもそれを店長は受け入れてくれた。それが大人の優しさであり、それに触れた俺は少しだけ目頭が熱くなった。
「ところで結婚式には招待してくれるのか?」
「台無しです店長」
勿論招待する気なんてありません。
■□■□■□
ハナティアの初めてのバイトが終わった帰り道、いつものように我が家へ帰る途中でハナティアが突然足を止めた。
「ねえ翔平、あそこの店長さんすごくいい人だね」
「ああ。普通なら考えられない事をあの人は受け入れてくれた。感謝してるよ」
「一ヶ月も働けないのが私少し残念」
「それはまあ、仕方ないよ」
実はあのコンビニのアルバイトは、大学に入学する前からお世話になっていて、俺もそれなりの経験をあそこで積まさせてもらった。店長もすごくいい人で、従業員全員から好かれていた。ハナティアが第一印象としてそう感じた通りの人である。
「そもそもよく、三日でバイト先見つけたよな、お前」
「サクヤに聞いたらここが一番受かりやすいって聞いてたし、翔平の妻って言えば雇ってくれるとか言ってたの。まさかその通りに行くとは思っていなかったけど」
「犯人はあいつか!」
結局一番ノリノリだったのはサクヤだったようです。
(とんだ確信犯じゃねえか)
「それでどうだった? 今日一日働いてみて」
「私こういうの初めてだったから、大変かなと思ったけど、やってみると案外楽しいのね」
「決して楽しいばかりじゃないけどな。でもいい経験にはなると思う」
「明日からもますます頑張らないと」
「そうだな」
どういうわけかハナティアの新人教育まで任されてしまったので、明日からはもっと油断ならないアルバイトになりそうだけど、ハナティアも楽しめてる事だし夏休みが終わるまでは何とか頑張れそうだ。
「ところでさ翔平、これって持って帰ってきてよかったの?」
家に到着目前、ハナティアはあるものを取り出す。それは、検品ように使う機械だった。
「馬鹿野郎! それは置いてくるんだよ」
もう一度戻る事になりました。
八月も残りわずかになり、ハナティアも同じ場所でアルバイトをする事になった。九月に入れば俺もトリナディアへ居住するとなれば、色々な手続きが必要になる。そう、もう迷っている時間はない。
(もう決まってるようなものだけど、あとは……)
俺の夏休みはいよいよ後半戦に突入する。
「ありがとうございました」
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営業スマイルをしながら、品物を渡すハナティア。完璧すぎるその笑顔に少しだけ感心しながらも、やはり同じように働いていることに違和感を感じる。
「いいかハナティア、いくら結婚すると言ってもまだ何にも決まってないのに公の場であんな事言うなよ」
「え? 駄目だったの」
「あのなぁ。俺の立場を考えてくれよ」
突然の妻宣言により先程までひと騒ぎがあった。なんせ結婚なんて話誰にもしていなかった上に、相手が見た目はまだ幼い子だ。そんな子が妻だと名乗ったら、世間体的にもアウトだ。店長にも散々からかわれるし、それの説明のためにかなりの労力を使ったし、バイト始める前からヘトヘトだった。
しかもおまけに夫婦でイチャイチャしてろと言わんばかりに、俺に彼女の指導役を任されるし、何もかもが最悪だった。
「てかよく面接受かったよな。見た目からしたら成人しているようには見えないし」
「サラッと酷いこと言うわね。翔平の妻ですと言ったら即合格してくれたの、店長さんが」
「全て分かっていて自己紹介もさせたんだな、店長」
あとで問い詰める必要がありそうだ。
「ともかく今俺達は人前に立っているんだ。そういうのだけは弁えてくれよ」
「えー、折角の愛の共同作業なのに」
「は、恥ずかしい事をバイト中に言うなよ!」
思わず叫んでしまう。お客さんや店員から浴びせられる視線がすごく痛い。サクヤとは何度かシフト被った事はあったけど、彼女はちゃんと場を弁えていた。それに対してハナティアときたら、もう何も隠す必要がないと言わんばかりに張り切っている。
(フラグ恐るべし)
結局俺は今日の出勤の間、いつハナティアが変な事を起こさないかひたすら監視する事に没頭して、仕事どころではなかった。
「店長、本当にハナティ……花を雇うんですか?」
「柏原君の奥さん、いい子じゃないか。仕事を覚えるのも早いし、最近の新人は本当に生きがいい。アレでまだ高校生なのが勿体無いくらいだ」
「店長、彼女はとっくに二十歳越えています」
店長はハナティアを気に入ったのか、この後もシフトをどんどん入れると言い出すし、俺ともなるべく一緒に入れるらしい。
(からかう気満々だよな店長も……)
まあどうせ九月の夏休みが終わったら、ハナティアも俺もここで働く事はなくなると思う。
「あ、店長。そういえば話したい事があるんです」
その事をまだ店長に話していなかったので、俺はこの日に思い切って話をした。
「じゃあ柏原君はこの九月にバイトを辞めるんだね?」
「はい。まだ確定ではありませんが、恐らく……」
「寂しくなるが仕方ないな。何か事情があるのだろ?」
「はい。詳しくは言えませんが、ちょっと家庭の事情で」
「そうか」
この話を切り出す事が少し怖かった。大した理由の説明もなくバイトをいきなり辞めるだなんて、常識的に考えてあり得ない話だ。
「分かった。ちゃんと日付が決まったら教えてくれな」
「店長……はい!」
でもそれを店長は受け入れてくれた。それが大人の優しさであり、それに触れた俺は少しだけ目頭が熱くなった。
「ところで結婚式には招待してくれるのか?」
「台無しです店長」
勿論招待する気なんてありません。
■□■□■□
ハナティアの初めてのバイトが終わった帰り道、いつものように我が家へ帰る途中でハナティアが突然足を止めた。
「ねえ翔平、あそこの店長さんすごくいい人だね」
「ああ。普通なら考えられない事をあの人は受け入れてくれた。感謝してるよ」
「一ヶ月も働けないのが私少し残念」
「それはまあ、仕方ないよ」
実はあのコンビニのアルバイトは、大学に入学する前からお世話になっていて、俺もそれなりの経験をあそこで積まさせてもらった。店長もすごくいい人で、従業員全員から好かれていた。ハナティアが第一印象としてそう感じた通りの人である。
「そもそもよく、三日でバイト先見つけたよな、お前」
「サクヤに聞いたらここが一番受かりやすいって聞いてたし、翔平の妻って言えば雇ってくれるとか言ってたの。まさかその通りに行くとは思っていなかったけど」
「犯人はあいつか!」
結局一番ノリノリだったのはサクヤだったようです。
(とんだ確信犯じゃねえか)
「それでどうだった? 今日一日働いてみて」
「私こういうの初めてだったから、大変かなと思ったけど、やってみると案外楽しいのね」
「決して楽しいばかりじゃないけどな。でもいい経験にはなると思う」
「明日からもますます頑張らないと」
「そうだな」
どういうわけかハナティアの新人教育まで任されてしまったので、明日からはもっと油断ならないアルバイトになりそうだけど、ハナティアも楽しめてる事だし夏休みが終わるまでは何とか頑張れそうだ。
「ところでさ翔平、これって持って帰ってきてよかったの?」
家に到着目前、ハナティアはあるものを取り出す。それは、検品ように使う機械だった。
「馬鹿野郎! それは置いてくるんだよ」
もう一度戻る事になりました。
八月も残りわずかになり、ハナティアも同じ場所でアルバイトをする事になった。九月に入れば俺もトリナディアへ居住するとなれば、色々な手続きが必要になる。そう、もう迷っている時間はない。
(もう決まってるようなものだけど、あとは……)
俺の夏休みはいよいよ後半戦に突入する。
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