我が家の床下で築くハーレム王国

りょう

第55話トリナディア幽霊屋敷冒険録 後編

 その後一通り幽霊屋敷の探索をしたものの、目ぼしい情報は手に入らなかったので、屋敷から出る事に。
 ただ、出る事に問題があるわけだが。

「ど、ど、どうしよう。またあの女の人と遭遇なんかしたら」

「そ、その時はまた全力で逃げるしか」

 ハナティアとビクビクしながら階段を慎重に下りていると突然、背筋に寒気が走る。

「しょ、しょ、翔平」

「いいか、振り返るな。せーので逃げるぞ」

『せーの!』

 俺とハナティアは振り返りもせずに全力で駆け抜ける。不幸中の幸いか、一階には誰かがいる気配がしない。ここから外へ出るチャンスは今しかない。

「翔平、早く出よう」

「ああ。確かここから入ってきたんだから、ここを開ければ外だ」

 俺達は入ってきた入口を見つけるなり、扉を開け放った。

「って、あれ?」

 外に出た事には出たのだが、俺達が出たのはいつものトリナディア。確かこの屋敷の玄関先には、庭があって門もあったはずだ。なのに、その気配がない。

「中庭見たいのあったよなこの屋敷」

「うん。あれ? 翔平後ろ見て」

「後ろ?」

 ハナティアに言われて振り返るが、出てきたはずの屋敷の姿がどこにもなかった。つまり、俺とハナティアが扉を開けたのとほぼ同時に、屋敷は消滅した事になる。もしくは、今ここまで見てきたのが幻覚だったとか。

「何だったんだこの屋敷は」

「うーん、数日前トリナディアでこの存在を他の人も確認しているから、私達の幻覚というわけではないはず」

「そもそも二人して同じ幻覚を見ることも、普通ないしな」

 俺達は屋敷があったと思える場所から離れていく。幽霊屋敷という割には全てが作り込まれていたし、中はかなり綺麗だった。それに気になるのはあの屋敷に住んでいるあの女。ビジュアル的には某有名な貞から始まるあれみたいなものに見えなくもなかった。

「もうあんな怖い場所、私は二度と行きたくないな」

「俺はもう一度改めて調べたいな」

 そんな謎が多い幽霊屋敷に俺は少しながら興味を持ってしまった。別にハナティアみたいに幽霊が怖いわけでもないし、こういうのはスリルがあって少しだけ楽しかったりする。

「もう一度行きたいの?! あんなに怖い思いしたのに」

「怖い思いはしたけど、それ以上に気になる事があの屋敷には多い。調べられるものなら、また調べたいけど」

「もしかして翔平はドエ……」

「おっと、それ以上は言わないでくれ」

 それは建前なだけで、本当のところ俺の失っている本当の記憶の鍵を、あの屋敷が握っている気がする。ハナティアが書斎で俺に言った言葉もそうだけど、俺はかつてここに本当の家族と住んでいたのかもしれない。

(写真にちらっと写ってたあの屋敷ももしかしたら……)

「翔平、もしかして何かに気がついた?」

「いいや。まだ何も言えない」

「何も言えないって?」

「全部調べてから結論を出したいんだ。たとえハナティアが何かを知っていたとしても」

「翔平がそうしたいなら私は何も言えないけど。でもどちらにしても私はあの屋敷には二度と入りたくないかな」

「そうは言うと思ってたから、今度は一人で調べるよ」

「え? 翔平が一人なら私も……」

「やっぱり行きたいのか?」

「ち、違うわよ」

 ともかくまだまだ調べる余地はありそうだ。

 ■□■□■□
 とりあえず城に戻ったハナティアと俺は、サクヤに屋敷の報告をしに行こうとした。

「あ、平ちゃん。ハナちゃん」

「おかえりなさい、お二人とも」

 だが先客がおり、なぜかその相手がキャロルだった。

「キャロル、どうしたのサクヤに話なんて」

「ちょっとサクヤさんには話があって来たの。平ちゃん達は?」

「ちょっとある調査の報告をだな」

「それで結果はいかがでしたか?」

 俺はサクヤにあの屋敷の事を一通り説明する。今はその姿がなくなってしまったが、どちらにしてもただの幽霊屋敷ではない事は分かった。

「消えたんですか?」

「ああ。本当に突然。俺達が屋敷から出た途端にさ」

「まるでそれだと、咲田様達が来るのを待っていたみたいですね」

「でも待っていたにせよ、あの女性は誰だったんだよ。明らかに幽霊だったぞ」

「その方ももしかしたら、深く関係しているのかもしれませんよ」

「うーん、そうとは思えないけど」

 でも言われてみれば、向こうは俺達を襲うとかそんな事はしなかった。ましてや勝手に逃げたのは俺達だけで、向こうは別に俺達を追いかけてきてはいない気がする。

「ちなみにハナティア様はどうお考えですか?」

「私は二度と行きたくない」

「即答ですか。相当怖い思いしたのですね」

「でも行きたいんだってさ。俺を一人で行かせたくないから」

「ちょ、何でそれ言うのよ馬鹿!」

 それが彼女なりの優しさだと分かっていて、俺はあえてからかう。今日だって本当は怖いのについて来てくれたのだって、同じ事だと俺は考えている。

(まあ、真意は分からないけど)

「咲田様は機会があればもう一度調べたいとお考えだったりするんですか?」

「正直気になる事が多すぎるんだよ。俺はあの屋敷をもう一度調べて、関係があるのか無関係なのか知りたい」

「もしかして翔平様、あの屋敷に何か覚えがあるのですか?」

「あるかなんて分からない。けど、俺はあの屋敷に若干ながら見覚えがあるんだ」

 まだ蘇ってないかもしれない記憶の断片が、俺に語りかけていた。あの屋敷と俺は何かしらの関係があると。

「翔平様、何かを知ろうとしているのなら私は止めません。しかし、知りすぎるのも良くないと思います」

「何だよその言い方。まるで俺には知られたくない事があるみたいだな」

「そ、そうではありませんよ。ねえ、ハナティア様」

「そ、そうねサクヤ」

 急に挙動不審になる二人。あの、その態度明らかに怪しいのですが……。

「しょうがない、キャロルを今度連れてくか」

「ちょっとどうして私なの! 平ちゃん」

「その方が面白いから、かな」

「私ってまさかのネタ要因なの?!」

 時々しか会えないし、いいネタになりそうだから面白いと思うんだけどなぁ。

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