我が家の床下で築くハーレム王国
第20話肉食系女子
夕食やら何やら色々と済ませ迎えた夜。
「予想はしていたけど、本当お前って容赦ないよな」
「だってこれから私達は、そういう夜がある方が多いんだから慣れておかないと」
「慣れって言われてもな……」
俺とハナティアは同じ布団で眠っていた。布団が一つしかないのも原因の一つだが、それ以上にハナティアが意地でも二人で寝たいと強引に誘ってきたのだ。
(いきなりはハードだろ、絶対)
つい先日もサクヤがダブルベッドを購入するとか言っていたし、トリナディアの人達はどうも肉食系なのだろうか。
「それに翔平には、これ以上にこれから頑張ってもらわないといけない事が多いんだから。少しは我慢して」
「まあ、日常生活が壊れない程度なら構わないけどさ」
改めてハナティアにそう言われて俺は思う。計画に参加するのは俺の善意だし、もう決心した事だ。しかし、俺には俺の生活だってある。たとえ何歳も年が離れていようとも、俺には大切な親友がいる。
俺はあくまで非現実の中で、日常生活を求めていきたいと思っていた。
「私も別に翔平の日常を奪おうとは考えてないよ。むしろ翔平のお友達とも仲良くなりたいと思っているもん」
「正志と雪音とか?」
「うん。私もっと友達ほしいから。そしてもっと外へ出かけたい」
「そうか」
その言葉は多分偽りないと俺は思った。彼女は一国の姫として長い間仲のいい友達がいなかったのだろう。いても恐らくキャロルやミルだろうし、姫である立場上自由に遊びに出かける事もできない。
だから彼女は純粋に一人の人として友達という存在を求めているのかもしれない。
「その位は俺が叶えてやるよ」
「本当に?」
「ああ。二人もお前に好感持っているみたいだし、また近い内会わせてあげるよ」
「ありがとう、翔平」
だから俺はその願い位は叶えてやりたいと思った。他に俺が出来る事は微々たるものに過ぎないかもしれないけど、これなら彼女の力になれる。一人で大きなものを抱えている彼女の力に。
「なあハナティア」
「ん?」
「俺ってこれからどうなるのかな」
「どうなるって?」
「さっきも言ったけど、これから俺はどちらかというと非現実的な生活もする事になるんだよな」
「うん」
「仮にこの後大学卒業して、正志達とも別れて社会人になっていくんだけど、その時も俺はトリナディアにいるのかなって」
「それは……私にも分からないかな。これがどのくらいの時間がかかるか分からないし、もっと翔平の日常生活を縛る事になるかもしれない。だけど、それが全て本当なのかも分からない」
「先が見えないか……。まあ、そうなるとは思っていたけどさ。得体の知れない計画だし」
「やっぱり翔平からはそう見えちゃうよね」
「俺からしたらこういうのって、ラノベとかのレベルの世界だからさ」
「らのべ?」
「ようは現実では絶対起きないような話の事だよ」
今俺はその世界の中にいる。それが未だに信じられないけど、目の前で起きている事なのだから、信じるしかない。
(自分が記憶喪失だったなんて、考えられないよな尚更)
でもそれは全て事実。
「本当にこういうのって運命だったりするのかな」
「翔平はそう思う?」
「分からない。けどそんな運命も悪くはないのかもな」
運命の人と結婚だなんて、どこのロマンチストだと言ってやりたいけど、将来俺にもやってくる事だと思うと、少しだけニヤけてしまう。
「柚お姉ちゃんも本当はいたのかな、運命の人って」
「いたんじゃないか? お前みたいに積極的な男性が」
「ちょっとどういう意味よ」
「いや、分かるだろそれは」
姉ちゃんがそれに対してどんな反応を示していたか、少しだけ興味はあるけど。
「ハナティアは姉ちゃんの事って覚えているのか?」
「私もまだ小さかったから、詳しくは覚えてないけど優しいお姉ちゃんだったよ。私が憧れちゃうくらい」
「へえ。憧れるくらいか」
俺の中の姉ちゃんもとても優しいイメージがあったから、やはりその通りだったのかもしれない。記憶喪失だったとしても残っている声と温もり。それは確実にハナティアにも受け継がれていた。
「ハナティアもきっと柚姉ちゃんと同じくらいの人間になれるよ」
「本当?」
「ああ、俺が保証する」
誰よりもくにをおもうかのじょだからこそ、きっとその思いは引き継げていると俺は信じている。
「さて、そろそろ寝るか。おやすみ」
「うん、おやすみ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
六月を明日に控えたある日。梅雨の季節が近づいただけあって、天気も悪い。
「くそ、傘持ってくるべきだったな」
運悪く傘を忘れてしまった俺は、あいにくの天気の中ダッシュで帰宅中。とりあえず一旦雨宿りをするために、近くの建物の下に避難する。帰りの電車の駅まではまだ距離があるので、バスの方が良かったのかもしれない。
(帰りの途中までは降ってなかったのにな……)
雨が弱まるのを待ちながら、濡れたものを乾かしていると、俺と同じ目にあったのか一人の女性が隣に雨宿りしてきた。
「もう最悪」
女性もかなりの被害にあっているのか、先程から最悪とばかり連呼している。何というか少しだけ気まづい。主に透けている部分とかは見れない。
「あなたも雨の被害に?」
そんな女性が唐突に話しかけてきた。ここで無視するのもあれなので答える。
「まあ、そんな感じです。傘を忘れてたんで」
「本当最悪よね。天気予報は晴れだったのに」
「そんな日もありますよ」
ただ真面目に答えるのも面倒くさいので、適当に答えていると、女性は突然こんな事を聞いてきた。
「ところであなた、突然こんな事聞くのも変だけど、日本の地下にもう一つ国があるって噂聞いた事ない?」
「え? 何ですか突然」
「ほら、二ヶ月くらい前にニュースでやってたでしょ? どこかの家の床に突然大きな穴が開いていて、住人が行方不明になったって」
「そ、そんな事ありましたね」
その当事者が自分なので、少し動揺してしまう。それにしても地下にあるもう一つの国って、トリナディアの事だろうか?
「その事件をキッカケで、最近そんな噂が流れているの。あなた知らない?」
「し、知りませんけど」
どこからそんな噂が流れているかは知らないけど、間違ってはいない。
「そう、残念。でもここだけの話、私それが本当だって知っているの」
「え?」
トリナディアの事を? そんなまさか。
「君は知らないと思うけど、かなり前に何か大きな事故が起きたらしくて、その被害者が地上ではなく地下から運ばれてきたみたいなの。マンホールの中からとか、そういう物理的な話じゃなくて」
「地下からですか?」
「所在も不明な地下から。だから多分、その噂って本当なんじゃないかって」
かなり前の大きな事故?
地下から出てきた被害者?
所在不明の場所?
それってもしかして、
(俺が遭遇したあの事件の事か?)
「気になったなら調べてみるといいよ。きっといい勉強になると思うから」
「覚えていたら、調べてみます」
ちょっとだけ調べる事が怖いけど、俺は一度調べてみるのもいいかもしれない。己を知る為にも。
「予想はしていたけど、本当お前って容赦ないよな」
「だってこれから私達は、そういう夜がある方が多いんだから慣れておかないと」
「慣れって言われてもな……」
俺とハナティアは同じ布団で眠っていた。布団が一つしかないのも原因の一つだが、それ以上にハナティアが意地でも二人で寝たいと強引に誘ってきたのだ。
(いきなりはハードだろ、絶対)
つい先日もサクヤがダブルベッドを購入するとか言っていたし、トリナディアの人達はどうも肉食系なのだろうか。
「それに翔平には、これ以上にこれから頑張ってもらわないといけない事が多いんだから。少しは我慢して」
「まあ、日常生活が壊れない程度なら構わないけどさ」
改めてハナティアにそう言われて俺は思う。計画に参加するのは俺の善意だし、もう決心した事だ。しかし、俺には俺の生活だってある。たとえ何歳も年が離れていようとも、俺には大切な親友がいる。
俺はあくまで非現実の中で、日常生活を求めていきたいと思っていた。
「私も別に翔平の日常を奪おうとは考えてないよ。むしろ翔平のお友達とも仲良くなりたいと思っているもん」
「正志と雪音とか?」
「うん。私もっと友達ほしいから。そしてもっと外へ出かけたい」
「そうか」
その言葉は多分偽りないと俺は思った。彼女は一国の姫として長い間仲のいい友達がいなかったのだろう。いても恐らくキャロルやミルだろうし、姫である立場上自由に遊びに出かける事もできない。
だから彼女は純粋に一人の人として友達という存在を求めているのかもしれない。
「その位は俺が叶えてやるよ」
「本当に?」
「ああ。二人もお前に好感持っているみたいだし、また近い内会わせてあげるよ」
「ありがとう、翔平」
だから俺はその願い位は叶えてやりたいと思った。他に俺が出来る事は微々たるものに過ぎないかもしれないけど、これなら彼女の力になれる。一人で大きなものを抱えている彼女の力に。
「なあハナティア」
「ん?」
「俺ってこれからどうなるのかな」
「どうなるって?」
「さっきも言ったけど、これから俺はどちらかというと非現実的な生活もする事になるんだよな」
「うん」
「仮にこの後大学卒業して、正志達とも別れて社会人になっていくんだけど、その時も俺はトリナディアにいるのかなって」
「それは……私にも分からないかな。これがどのくらいの時間がかかるか分からないし、もっと翔平の日常生活を縛る事になるかもしれない。だけど、それが全て本当なのかも分からない」
「先が見えないか……。まあ、そうなるとは思っていたけどさ。得体の知れない計画だし」
「やっぱり翔平からはそう見えちゃうよね」
「俺からしたらこういうのって、ラノベとかのレベルの世界だからさ」
「らのべ?」
「ようは現実では絶対起きないような話の事だよ」
今俺はその世界の中にいる。それが未だに信じられないけど、目の前で起きている事なのだから、信じるしかない。
(自分が記憶喪失だったなんて、考えられないよな尚更)
でもそれは全て事実。
「本当にこういうのって運命だったりするのかな」
「翔平はそう思う?」
「分からない。けどそんな運命も悪くはないのかもな」
運命の人と結婚だなんて、どこのロマンチストだと言ってやりたいけど、将来俺にもやってくる事だと思うと、少しだけニヤけてしまう。
「柚お姉ちゃんも本当はいたのかな、運命の人って」
「いたんじゃないか? お前みたいに積極的な男性が」
「ちょっとどういう意味よ」
「いや、分かるだろそれは」
姉ちゃんがそれに対してどんな反応を示していたか、少しだけ興味はあるけど。
「ハナティアは姉ちゃんの事って覚えているのか?」
「私もまだ小さかったから、詳しくは覚えてないけど優しいお姉ちゃんだったよ。私が憧れちゃうくらい」
「へえ。憧れるくらいか」
俺の中の姉ちゃんもとても優しいイメージがあったから、やはりその通りだったのかもしれない。記憶喪失だったとしても残っている声と温もり。それは確実にハナティアにも受け継がれていた。
「ハナティアもきっと柚姉ちゃんと同じくらいの人間になれるよ」
「本当?」
「ああ、俺が保証する」
誰よりもくにをおもうかのじょだからこそ、きっとその思いは引き継げていると俺は信じている。
「さて、そろそろ寝るか。おやすみ」
「うん、おやすみ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
六月を明日に控えたある日。梅雨の季節が近づいただけあって、天気も悪い。
「くそ、傘持ってくるべきだったな」
運悪く傘を忘れてしまった俺は、あいにくの天気の中ダッシュで帰宅中。とりあえず一旦雨宿りをするために、近くの建物の下に避難する。帰りの電車の駅まではまだ距離があるので、バスの方が良かったのかもしれない。
(帰りの途中までは降ってなかったのにな……)
雨が弱まるのを待ちながら、濡れたものを乾かしていると、俺と同じ目にあったのか一人の女性が隣に雨宿りしてきた。
「もう最悪」
女性もかなりの被害にあっているのか、先程から最悪とばかり連呼している。何というか少しだけ気まづい。主に透けている部分とかは見れない。
「あなたも雨の被害に?」
そんな女性が唐突に話しかけてきた。ここで無視するのもあれなので答える。
「まあ、そんな感じです。傘を忘れてたんで」
「本当最悪よね。天気予報は晴れだったのに」
「そんな日もありますよ」
ただ真面目に答えるのも面倒くさいので、適当に答えていると、女性は突然こんな事を聞いてきた。
「ところであなた、突然こんな事聞くのも変だけど、日本の地下にもう一つ国があるって噂聞いた事ない?」
「え? 何ですか突然」
「ほら、二ヶ月くらい前にニュースでやってたでしょ? どこかの家の床に突然大きな穴が開いていて、住人が行方不明になったって」
「そ、そんな事ありましたね」
その当事者が自分なので、少し動揺してしまう。それにしても地下にあるもう一つの国って、トリナディアの事だろうか?
「その事件をキッカケで、最近そんな噂が流れているの。あなた知らない?」
「し、知りませんけど」
どこからそんな噂が流れているかは知らないけど、間違ってはいない。
「そう、残念。でもここだけの話、私それが本当だって知っているの」
「え?」
トリナディアの事を? そんなまさか。
「君は知らないと思うけど、かなり前に何か大きな事故が起きたらしくて、その被害者が地上ではなく地下から運ばれてきたみたいなの。マンホールの中からとか、そういう物理的な話じゃなくて」
「地下からですか?」
「所在も不明な地下から。だから多分、その噂って本当なんじゃないかって」
かなり前の大きな事故?
地下から出てきた被害者?
所在不明の場所?
それってもしかして、
(俺が遭遇したあの事件の事か?)
「気になったなら調べてみるといいよ。きっといい勉強になると思うから」
「覚えていたら、調べてみます」
ちょっとだけ調べる事が怖いけど、俺は一度調べてみるのもいいかもしれない。己を知る為にも。
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