殺人鬼の3怪人と不思議な少女

鬼怒川 ますず

悪夢を始める者

『対象を見つけました。第三者とシュガー隊長も一緒にいます』

「ご苦労、もう少しの間ジッとしてろ。今警備と警報装置の細工が終わる。指示があるまで第一支援隊は全員持ち場で待機していろ」

『了解』


ガチャリ。
通信が切れ、太陽光を遮光したバンの中で『スペースレンジャー』は備え付けのモニターに目を通す。
そこにはゲームセンター内の映像が出ている。
きらめく目に悪い色の光や騒音まで聞こえ、荒々しい映像で多くの人がゲームに興じている。
中でも1つの画面を凝視する。
そこには2人の見知らぬ男性と探していた対象者、そして何故か捕まったはずのシュガーが他の人間と同じようにゲームで遊んでいた。

映像からわかる対象者とシュガーの笑顔。
彼はそれを見ながら不思議に思う。


なぜ、あんな男たちがこんな気味の悪い子供を保護して、それを取り戻すはずのシュガーが一緒になって遊んでいるのか…と。


疑問はそれだけではない、対象者の捕獲のため建物に入った時捨てられていた死体もそうだ。
首が無い、臓物が一部ない、バラバラに分解されて死んでいた女子高生。
現場は異常だった。

その情報をシュガーは知っているはずだ。
作戦遂行前に教えたはずだ。
あの男たちの得体も知れない正体を。

ならば何故、あんなに楽しそうにできるのか?

雰囲気に飲まれた。
吊り橋効果。
それか演技か。

シュガーの考えがわからないスペースレンジャーは理解できないモノに頭を悩ませるが、その時通信が入る。

『こちら第五支援工作部隊より本隊へ、警備室の占拠と警報装置の除去、外部への通信の妨害装置の設置が完了しました。いつでもOKです』

「ご苦労、ことが終わり次第撤収作業の準備も進めておけ」

『了解』

スペースレンジャーは通信が切れたのを確認してから今度は違う部隊に通信を飛ばす。

「本隊より各部隊へ、これより対象の捕獲と実施実験を行う。現在指定していたエリア内にいる一般人を含めて殺害するので後処理の部隊は目撃者を漏らさずに殺せ。モルモットとして使う第一支援隊の死者数の確認、生き残った残党と対象の保護を念頭に置いておけ」


『こちら第18支部支援部隊長、了解です』
『23支援隊了解』
『45部隊、りょ、了解です』

確認を終えた各部隊の返事を聞き、今度は違う回線で第一支援隊の面々に通達する。

「これより作戦を開始する。お前たちの異常脳力で対象を速やかに保護しろ。なるべく死者は出さないようにしろ」

『了解致しました』
『うす』
『はい』
『yes』

『モルモット』として扱われていると知らない彼らはそう返事をしてから通信を切る。
そんなバカな、バカな異常脳力者達にスペースレンジャーは笑いながらモニターに目を向ける。

「さぁて、俺もやったことがないおぞましい実験を始めちまうかぁ」

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