殺人鬼の3怪人と不思議な少女

鬼怒川 ますず

ンフフフ

全裸の白緑びゃくろくの体に付いた水滴を拭きながら葛原は下着だけ身に付ける。
ついでに汗を落としたので葛原は鼻歌交じり気分良くに白緑に話しかける。

「さっぱりしたか?」

「ん…!」

「おうおうそれならいいんだわ。綺麗な方が良いからな」

食べるなら綺麗な方が良い。
これが最後の方に付いていたら葛原をよく表した言葉だったろう。
しかし、これでも言葉巧みに多くの人間を惑わし食した食人鬼。
それぐらいの我慢はできた。

「んじゃバンザイってしな」

「?」

「両手を上げるんだよ、ほらこうやってさ」

葛原が両手をあげる仕草を見せるので白緑も同じように両手をあげる。
その上から黒田の少しダボついた服をすぐさま着せる。
「あぁ、後は下か…、子供用の靴とスカートはデパートで買えば良いか、今はこの今まで使ってたので良いか」

パンツ……はとても汚れてたので嫌々ながらも水洗いし、備え付けのドライヤーで乾かそうとする。
その間白緑は葛原の顔をジーっと見る。

穴が空くほど見られたので葛原は問う。

「…どうしたんだよ白緑ちゃん、お話ししたいのか?」

「ううん…ただね、なんか嬉しのかなって…」

「あ?俺がか?」

変態に思われたのか!?
心で少しドキリとするが、白緑は首を振って違う事を示す。

「ううん、貴方じゃなくて私が。こんな事されたのはあの人以来だから」

「…常々疑問に思っていたが、あの人ってのは親なのか?」

そう聞くと白緑の今までの柔らかい表情が崩れた。

「あの人は、一緒の部屋で私に親切にしてくれた人。赤い人や親以上に色があった人なの」

「……そっか、なら良いわ。あんまり聞かないでおくわ」

そう言って葛原はある程度乾いたパンツを白緑に履かせると今度は彼女の髪の毛を乾かそうとする。

だが、その最中にガチャガチャとシャワー室のドアノブが回り出した。
利用者か。
葛原はビックリしながら、冷静に努めた声でドアを鳴らす者に『入ってます』と言っておいた。

そう言った直後、ドアが突然と突き破られドアノブの横に開いた穴から細い指の女性の手が出てくる。

「!?」

何事だよ!?

声にも出来ない恐怖が一瞬頭を過る。
手はツマミ状のカギを開け、ドアが開く。
ガチャン!
顔を真っ赤にし、苦しそうな表情の金髪の女性が入ってきた。

「うぉぉぉぉぉぉ!!?」

「た……ったはぁはぁ…苦しい…。た、対象者を発見…ってキャァァァ!!上も着なさいよ部外者の1人!!」

「え、なんかゴメンと言いたいけど、テメェ男が体洗ってる場所に無理やり入って来てそりゃねぇだろ」

「そうだそうだー」

「えぇー…私がそんな男の裸に興味あると思ってんのかよと。……ってそうじゃねぇ!そこの子供、私と一緒に来なさい!」

そう言いながらズカズカと脱衣所に入り込み白緑の腕を掴もうとする。
葛原は金髪女性が白緑を追っている何かの1人だと察し、『食事』を取られるわけにはいかないので彼女の目の前に立ちふさがろうとする。
だがその前に白緑の目が輝いたのを彼は見逃さなかった。

「おわっ!?それを喰らうもんか!」

対して女性は頬を膨らませて息を溜め込む。

「……ッ!?そんな、私の力が効かないの?」

「ンンンン……!ンフ、ンンンンー!!」

驚く白緑に対して迫る苦しそうな女性。
その2人に挟まりながら何が起きているのかわからない様子の葛原は、取り敢えず彼女の前に立ちふさがることにする。


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