殺人鬼の3怪人と不思議な少女

鬼怒川 ますず

びゃくろく

「びゃく…ろく…」


お粥を少しずつ食べつつ、桃缶とほうれん草のお惣菜を頬張る少女が初めて呟いた言葉がそれだった。

葛原は「なんだそれ」と聞くと少女は自分の方を指差しながら何かを訴えようとしていた。


「きっとこのお嬢ちゃんの名前だろ…っと言うよりかはここではまず日本語が通じることに驚く方が正しいな。見るからに日本人とは違って外人さんだし」


葉隠はくれが少女の伝えたいことをフォローすると白緑はソレにコクリと頷く。
葛原も名前を聞いただけでも収穫と考え、どうして追われていたのかについてはまだ聞かないでおこうと考えた。


「んじゃまずは飯だ飯! ファミレスやさっきの人間を喰ってたけどこんな良い匂い嗅いでたら腹が減ったし俺たちも食おうぜ!」

「豪語するけど、駐車場のブロックに座って食べるのって良いのかな…」

「この時間にコンビニ寄る車なんて早々ないだろう。黒田はそこら辺気にしすぎだ」

「君らがガサツなだけだよ…」


そう言いながらも黒田はブロックにハンカチを敷いて座り、3分経ったカップ麺に箸をさして食べ始める。

同じように2人も自分のカップ麺を食べ始め、一時的に静かになった。

誰もが無言で、風の吹く音と枯葉が重なり擦り合う音だけが彼らの周りに響く。


「…げふ……ごちそうさまでした…かな?」


白緑びゃくろくは礼儀正しく手を合わせて食事を終わらせる。
食べた事で少しだけだが動けるようになった。
白緑びゃくろくは立ち上がると、まだ食事中だった三人に向けて頭を下げてお礼を言った。

「ありがとうございます…かな? 美味しかったです」


3人はお礼を言われる事には慣れていなかったのか、全員顔を合わせて照れ始めた。


(やべぇ! 俺子供にお礼言われるの初めてだわ!)

(半世紀まで天涯孤独だったしな…これは少し…気恥ずかしい)

(僕も僕も! )


そうヒソヒソと会話していのを見て、白緑は満足した顔で彼らから離れる。
トコトコと、裸足のまま公道沿いに出て、自分にとって大切な人を求めて再び歩こうとする。
だが、白緑びゃくろくの肩を誰かが掴んできたので振り向く。
そこには葛原がいた。


「おいおい、びゃくろく…ちゃんよ、どこ行く気よ?」

「何処って…これ以上あなた達と一緒にいたら黒い奴らに殺されちゃうかもしれないからどこかに行こうと…」

「さっき襲ってきた連中のことを言ってるのか?そんなモン俺たちにとっては雑魚だから大丈夫大丈夫! 」

「でも……私は探さないといけないから…」

「探す?」


葛原が聞き返すと、白緑は自身が探しいているものについて喋り始める。


「私に色をくれた人が言ってた『私にとって大切な人』を」

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