(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
名状しがたい黄衣の王・4 ~ドラゴンメイド喫茶"if"~
俺は話を聞き終えて、何も言えなかった。
まさかそれほどまでに深い話を聞くことになるとは思いもしなかったからだ。
黄衣の王の話は続く。
「物語はこれで終わりだ。誰も救われない、悲しんでいる人間しかいない。絶望した登場人物しかいない。しかしながら、これが現実。これが事実だ。……申し訳なかったな、辛い話を聞かせてしまった」
「いえ、それは……」
そんなことは関係なかった。
別に俺は、お客さんの話をよく聞くことがあるから聞き手に徹していることが多い。だからそれについては問題ないのだけれど。
「ケイタ、料理できたよ」
メリューさんが言ったのはちょうどそのタイミングでのことだった。そうだった。忘れていたかもしれないけれど、ここは喫茶店。つまりお客さんが食事を食べる場所である。だから料理を提供するということは喫茶店である以上当然の行為であった。
「あ、料理ができたみたいなので少々お待ちください」
俺はそう言ってカウンターから厨房へと向かった。
◇◇◇
厨房のテーブルに置かれていたのは、変わったものだった。
いや、正確に言えばそれは変わったものではない。一つのランチプレートにお椀をさかさまにした形で盛り付けられたチキンライス、ハンバーグ、ナポリタンスパゲッティ、エビフライ、フライドポテトにから揚げが載せられている。余った部分にはゼリーも載せられているし、そのランチプレートの隣にはオレンジジュースの紙パックも置いてある。お誂え向きにチキンライスのてっぺんには爪楊枝と紙で作られた白い旗が刺さっている。
そう、そこにあったのは紛れもなく、俗にいう『お子様ランチ』だった。
「あ。あの……メリューさん?」
俺はメリューさんに問いかけた。
「どうした?」
「いや、あの……これ、お子様ランチですよね?」
「だからどうした?」
「いや……だから……その……もう、何でもないです……」
もうメリューさんが何を考えているのか解らない。
だがメリューさんも何も考えなしでこれを提供するとは思えない。取り敢えず今はメリューさんに従っていくしかないだろう。そう思った俺はお子様ランチを手に持ってカウンターへと向かうのだった。
◇◇◇
「……なんだ、これは?」
それを見て黄衣の王は何も言えなかった。ま、当然だろう。いくら食べたいもの――といってもそれが具体的に視覚化されていたものを想像していたのか、それともなんとなくのイメージで掴んでいたかによって驚きは違ってくるはずだ。
そして今、黄衣の王がとった反応からして――恐らく後者のイメージであると思う。
食べたいものは解っていたけれど、あくまでただのイメージでしか考えていなかったからこそ、結局驚きを隠せない。
ここはそういうところだ。
「……これが、私が食べたかったもの……?」
「そういうことになりますね。まあ、食べてください。美味しいですよ。言い忘れていましたが、メリューさんの作る料理は天下一品ですから」
「そ、そうか……」
そして。
黄衣の王はスプーンでチキンライスを一口掬い、それを口に運んだ。
黄衣の王は食べた直後は何の感想も抱かなかったようだったが、食べるスピードは徐々に上がってきている。それはすなわち、その料理を食べたくて食べたくて仕方がない状態を意味していた。
一種の麻薬といっても過言ではないそれは、メリューさんの料理の特徴ともいえるかもしれない。
まさかそれほどまでに深い話を聞くことになるとは思いもしなかったからだ。
黄衣の王の話は続く。
「物語はこれで終わりだ。誰も救われない、悲しんでいる人間しかいない。絶望した登場人物しかいない。しかしながら、これが現実。これが事実だ。……申し訳なかったな、辛い話を聞かせてしまった」
「いえ、それは……」
そんなことは関係なかった。
別に俺は、お客さんの話をよく聞くことがあるから聞き手に徹していることが多い。だからそれについては問題ないのだけれど。
「ケイタ、料理できたよ」
メリューさんが言ったのはちょうどそのタイミングでのことだった。そうだった。忘れていたかもしれないけれど、ここは喫茶店。つまりお客さんが食事を食べる場所である。だから料理を提供するということは喫茶店である以上当然の行為であった。
「あ、料理ができたみたいなので少々お待ちください」
俺はそう言ってカウンターから厨房へと向かった。
◇◇◇
厨房のテーブルに置かれていたのは、変わったものだった。
いや、正確に言えばそれは変わったものではない。一つのランチプレートにお椀をさかさまにした形で盛り付けられたチキンライス、ハンバーグ、ナポリタンスパゲッティ、エビフライ、フライドポテトにから揚げが載せられている。余った部分にはゼリーも載せられているし、そのランチプレートの隣にはオレンジジュースの紙パックも置いてある。お誂え向きにチキンライスのてっぺんには爪楊枝と紙で作られた白い旗が刺さっている。
そう、そこにあったのは紛れもなく、俗にいう『お子様ランチ』だった。
「あ。あの……メリューさん?」
俺はメリューさんに問いかけた。
「どうした?」
「いや、あの……これ、お子様ランチですよね?」
「だからどうした?」
「いや……だから……その……もう、何でもないです……」
もうメリューさんが何を考えているのか解らない。
だがメリューさんも何も考えなしでこれを提供するとは思えない。取り敢えず今はメリューさんに従っていくしかないだろう。そう思った俺はお子様ランチを手に持ってカウンターへと向かうのだった。
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「……なんだ、これは?」
それを見て黄衣の王は何も言えなかった。ま、当然だろう。いくら食べたいもの――といってもそれが具体的に視覚化されていたものを想像していたのか、それともなんとなくのイメージで掴んでいたかによって驚きは違ってくるはずだ。
そして今、黄衣の王がとった反応からして――恐らく後者のイメージであると思う。
食べたいものは解っていたけれど、あくまでただのイメージでしか考えていなかったからこそ、結局驚きを隠せない。
ここはそういうところだ。
「……これが、私が食べたかったもの……?」
「そういうことになりますね。まあ、食べてください。美味しいですよ。言い忘れていましたが、メリューさんの作る料理は天下一品ですから」
「そ、そうか……」
そして。
黄衣の王はスプーンでチキンライスを一口掬い、それを口に運んだ。
黄衣の王は食べた直後は何の感想も抱かなかったようだったが、食べるスピードは徐々に上がってきている。それはすなわち、その料理を食べたくて食べたくて仕方がない状態を意味していた。
一種の麻薬といっても過言ではないそれは、メリューさんの料理の特徴ともいえるかもしれない。
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