(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
ボルケイノとの出会い・4
とまあ、あとはどうにかこうにか彼が仕事をするようになって、なぜか知らないがこの店も客がよく来るようになった。なぜかは知らないが、もしかしたら招き猫か何かだったのかもしれないな。まあ、それはただのジョークになるわけだけれど。
さて、物語はそれでおしまい。そろそろ食事を作ることにしようか。食前酒としては長くなってしまって、すっかりお腹も空いてしまっているだろう? 大変申し訳ないね。いまティアが出かけているものだから私しか店員が居ないんだよ。だからてんてこまいでね。申し訳ないが、いつもより少々時間がかかってしまう。だから、少しだけ待ってくれ。いいか、そのまま待つんだぞ。よろしくな。
◇◇◇
さて。
ここで語り手はいつもの俺にバトンタッチ。
昨日はお休みをもらったのでその分働かないとな。
……しかし、まったくよくない噂が流れている。まずはそれを訂正してもらわねばなるまい。
「メリューさん、ちょっといいですか」
「ん? どうしたんだい?」
「最近メリューさんまた誤った噂を流していると聞いて」
「誤った噂? 私が何か間違っていることを言ったかな」
「言いましたよ。俺のここに入ったエピソード。あれ、だいたいあってますけど、最後が違うじゃないですか」
「最後? ……ああ、君から就職したいって言ったハナシ?」
「それですよ!」
俺は思わずカウンターをバン! とたたいてしまったが、そのまま話を続ける。
「ほんとうは、メリューさんのほうから『働かないか?』といったくせに!」
そう。
実際客に美談めいて流れているエピソードは、俺が直接メリューさんにここで働きたいと懇願しているオチになっているが、それはまったくの誤りだ。デタラメと言ってもいい。
正解は、むしろ逆。
俺はそんなこと言っていない。むしろメリューさんが唐突にここで働かないかといっただけなのだ。
「それを今度は訂正してくださいよ! あと次から話すときはそこは修正してください! 絶対に!」
「ええ~、別にいいじゃない。そんな、減るモンでもないし」
「減るとか減らないとか、そういう問題じゃないんですよ! 間違った知識が広まっていること自体が問題なんですから!!」
メリューさんは踵を返して――ずっと背を向けて話をしていた――、俺に言った。
「なあ、ケイタ。――今、楽しいか?」
唐突な質問だった。
「楽しいか、って……ここで働いていて、ってことですか?」
「あたりまえだろ。それ以外、何がある」
「まあ、いろいろとあるじゃないですか。俺の人生とか。……まあ、そんなボケは置いといて。……まあ、普通に好きですよ、ここで働くことは。大変ですけれど、いろいろな出会いがあるし、知識も知ることが出来る。たぶん、ここで働く前じゃ絶対に手に入らなかった知識も、たくさんあるでしょうし」
「そうか。……そうだよな。それならいいんだ」
再び踵を返して、仕込みを再開するメリューさん。
結局、メリューさんは何が言いたかったのか、今の俺には解らなかった。ついでにさっきの噂話の結末についてもうやむやにされてしまったけれど、またいつか近いタイミングで言うことにしよう。
そういうことで、俺も踵を返して、まだ残っている作業を再開させるべく、カウンターへと向かうのだった。
さて、物語はそれでおしまい。そろそろ食事を作ることにしようか。食前酒としては長くなってしまって、すっかりお腹も空いてしまっているだろう? 大変申し訳ないね。いまティアが出かけているものだから私しか店員が居ないんだよ。だからてんてこまいでね。申し訳ないが、いつもより少々時間がかかってしまう。だから、少しだけ待ってくれ。いいか、そのまま待つんだぞ。よろしくな。
◇◇◇
さて。
ここで語り手はいつもの俺にバトンタッチ。
昨日はお休みをもらったのでその分働かないとな。
……しかし、まったくよくない噂が流れている。まずはそれを訂正してもらわねばなるまい。
「メリューさん、ちょっといいですか」
「ん? どうしたんだい?」
「最近メリューさんまた誤った噂を流していると聞いて」
「誤った噂? 私が何か間違っていることを言ったかな」
「言いましたよ。俺のここに入ったエピソード。あれ、だいたいあってますけど、最後が違うじゃないですか」
「最後? ……ああ、君から就職したいって言ったハナシ?」
「それですよ!」
俺は思わずカウンターをバン! とたたいてしまったが、そのまま話を続ける。
「ほんとうは、メリューさんのほうから『働かないか?』といったくせに!」
そう。
実際客に美談めいて流れているエピソードは、俺が直接メリューさんにここで働きたいと懇願しているオチになっているが、それはまったくの誤りだ。デタラメと言ってもいい。
正解は、むしろ逆。
俺はそんなこと言っていない。むしろメリューさんが唐突にここで働かないかといっただけなのだ。
「それを今度は訂正してくださいよ! あと次から話すときはそこは修正してください! 絶対に!」
「ええ~、別にいいじゃない。そんな、減るモンでもないし」
「減るとか減らないとか、そういう問題じゃないんですよ! 間違った知識が広まっていること自体が問題なんですから!!」
メリューさんは踵を返して――ずっと背を向けて話をしていた――、俺に言った。
「なあ、ケイタ。――今、楽しいか?」
唐突な質問だった。
「楽しいか、って……ここで働いていて、ってことですか?」
「あたりまえだろ。それ以外、何がある」
「まあ、いろいろとあるじゃないですか。俺の人生とか。……まあ、そんなボケは置いといて。……まあ、普通に好きですよ、ここで働くことは。大変ですけれど、いろいろな出会いがあるし、知識も知ることが出来る。たぶん、ここで働く前じゃ絶対に手に入らなかった知識も、たくさんあるでしょうし」
「そうか。……そうだよな。それならいいんだ」
再び踵を返して、仕込みを再開するメリューさん。
結局、メリューさんは何が言いたかったのか、今の俺には解らなかった。ついでにさっきの噂話の結末についてもうやむやにされてしまったけれど、またいつか近いタイミングで言うことにしよう。
そういうことで、俺も踵を返して、まだ残っている作業を再開させるべく、カウンターへと向かうのだった。
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