(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
鬼の里、鬼娘の決意・結
「――それからは、あなたたちも知っているとおりかと思います」
ウラはそこまで話を終えて、漸く落ち着いたと言わんばかりに深い溜息を吐いた。
ウラが話してくれたのは、長い昔話のように見えたが、とはいえそれほど難解なものでも無い。
「……なるほどね。そして、その後に亜人会議を潰すために、鬼神同盟に入った、と」
「ええ。鬼神同盟は、名前の通り鬼が主体となったテロ組織でした。しかし、中には鬼の考えに賛同してくれるほかの亜人も居たもので……、そのような人たちに手伝ってもらうこともありました。まあ、その人たちはほんとうに珍しいだけの話でしたが」
「……その人たちは、どうなったんだ?」
俺の質問にウラは首を横に振る。
「無責任かもしれませんが、私は知りません。聞いた噂によれば、それぞれの国に強制送還されて、反逆罪に問われているようです。確かに、そう思われても仕方ないように思えます。だって彼らの国から見れば鬼は未だ差別が根強い種族ですからね」
「それじゃ、結局……」
誰も幸せにならなかった、というオチになるのだろうか。
正直、それじゃ可哀想過ぎる。
「でも、仕方が無いことだと思っているのですよ、私としては」
ウラはどこか達観したような、そんな口調で呟く。
「私たちとしては、あのときはあれでなんとかなると思っていました。あそこで反旗を翻すことで、ほんとうに鬼にとって良いことになる……そう思っていたのです。けれど、当然ですよね。そんなこと、有り得ないんですよ。そんなことが簡単に叶う訳がない。復讐は復讐しか生み出しません。いつかは、その鎖を断たねばならない」
「でも、あんたたちは今こうやって平和に、そして幸せに過ごしている」
メリューさんが唐突に話に割り入ってきた。
「え……?」
「『大義』とは言うが、別にそんなことはどうだっていい。確かに、シュテンとウラが入っていた組織は、鬼の地位向上のために活動していた。けれど、そんなことは別に個人が抱えなくていいだろ。それこそ立派な洗脳だ」
「でも、私たちは現に……」
「逃げちゃえばいいんだよ。そんな重苦しい責任は、子供のうちから背負わないほうがいい。大人にすべて任せてしまえばいい。そして子供はワガママに要望を大人に一方的に突きつければいいんだ。子供は、それが仕事だ」
メリューさんの話は、そこで強引に打ち切られた。
理由はメリューさんが何か焦げ臭い匂いに気付いたからだ。そういえば、デザートのケーキを焼いているとか言っていたな。もしかしてオーブンをつけっぱなしで来ていたのだろうか?
メリューさんは慌てた様子で厨房へと向かう。その様子はどこか珍しく見えて、俺たちは愛想笑いをしながらそれを見つめていた。
シュテンとウラも、どこかその笑顔には堅いものがあったが、それでも少し心のしこりがとれた用にも見えた。そう考えるとさっきのメリューさんの話は、良かったのかもしれない。そんなことを思いながら俺は紅茶のおかわりを準備すべく、カウンターの中へと向かうのだった。
ウラはそこまで話を終えて、漸く落ち着いたと言わんばかりに深い溜息を吐いた。
ウラが話してくれたのは、長い昔話のように見えたが、とはいえそれほど難解なものでも無い。
「……なるほどね。そして、その後に亜人会議を潰すために、鬼神同盟に入った、と」
「ええ。鬼神同盟は、名前の通り鬼が主体となったテロ組織でした。しかし、中には鬼の考えに賛同してくれるほかの亜人も居たもので……、そのような人たちに手伝ってもらうこともありました。まあ、その人たちはほんとうに珍しいだけの話でしたが」
「……その人たちは、どうなったんだ?」
俺の質問にウラは首を横に振る。
「無責任かもしれませんが、私は知りません。聞いた噂によれば、それぞれの国に強制送還されて、反逆罪に問われているようです。確かに、そう思われても仕方ないように思えます。だって彼らの国から見れば鬼は未だ差別が根強い種族ですからね」
「それじゃ、結局……」
誰も幸せにならなかった、というオチになるのだろうか。
正直、それじゃ可哀想過ぎる。
「でも、仕方が無いことだと思っているのですよ、私としては」
ウラはどこか達観したような、そんな口調で呟く。
「私たちとしては、あのときはあれでなんとかなると思っていました。あそこで反旗を翻すことで、ほんとうに鬼にとって良いことになる……そう思っていたのです。けれど、当然ですよね。そんなこと、有り得ないんですよ。そんなことが簡単に叶う訳がない。復讐は復讐しか生み出しません。いつかは、その鎖を断たねばならない」
「でも、あんたたちは今こうやって平和に、そして幸せに過ごしている」
メリューさんが唐突に話に割り入ってきた。
「え……?」
「『大義』とは言うが、別にそんなことはどうだっていい。確かに、シュテンとウラが入っていた組織は、鬼の地位向上のために活動していた。けれど、そんなことは別に個人が抱えなくていいだろ。それこそ立派な洗脳だ」
「でも、私たちは現に……」
「逃げちゃえばいいんだよ。そんな重苦しい責任は、子供のうちから背負わないほうがいい。大人にすべて任せてしまえばいい。そして子供はワガママに要望を大人に一方的に突きつければいいんだ。子供は、それが仕事だ」
メリューさんの話は、そこで強引に打ち切られた。
理由はメリューさんが何か焦げ臭い匂いに気付いたからだ。そういえば、デザートのケーキを焼いているとか言っていたな。もしかしてオーブンをつけっぱなしで来ていたのだろうか?
メリューさんは慌てた様子で厨房へと向かう。その様子はどこか珍しく見えて、俺たちは愛想笑いをしながらそれを見つめていた。
シュテンとウラも、どこかその笑顔には堅いものがあったが、それでも少し心のしこりがとれた用にも見えた。そう考えるとさっきのメリューさんの話は、良かったのかもしれない。そんなことを思いながら俺は紅茶のおかわりを準備すべく、カウンターの中へと向かうのだった。
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