(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

倉庫の掘り出し物・中編

 キッチンに入ると、その甘い香りはさらに濃くなっていった。

「……何を作っているんですか?」

 メリューさんはキッチンの奥に居た。甘い香りを漂わせているものは、やはり蒸籠だった。

「肉まん、だよ。饅頭の中に味付けした挽肉を入れて、このシェーロンで蒸しあげた。肉まんは食べるか? 嫌いではないだろう? まあ、お客さんに出す前に試しに作ってみたのだが」
「肉まんですか」

 肉まんはコンビニで買うくらいしか食べたことが無いけれど、いざそう言われると、そういえばもう肉まんが美味しい季節になったのか、という感じだった。
 そんなことを考えている間に、蒸籠から肉まんを取り出して、それを皿に置いた。

「はい。熱いから、気を付けて食べなよ」

 そう注意を受けて、俺はゆっくりと肉まんを手に取った。
 確かに肉まんは熱かった。あれ、そういえばどうやってコンビニの肉まんはあまり熱くしていないのだったか――と考えていたが、「そういえば包み紙があったじゃないか」という結論に落ち着いた。
 息で冷まして、思い切りかぶりつく。
 口の中に肉汁と挽肉やタケノコ、シイタケなどが広がっていく。
 味付けはやはりマキヤソースをベースにしているらしい。やっぱり和風にするにはマキヤソースが一番だよな。マキヤソースは俺の世界でいうところの醤油に近いものだし。そういえばいつだか醤油をプレゼントしたら、「これはマキヤソースじゃないか!」って驚いていたようなことがあったな。

「そうだ。そういえば、これと一緒に食べるといい」

 メリューさんはそう言って何かを取り出した。
 容器に入っているそれは、菜っ葉だった。菜っ葉の枝には実もついている。

「これ……、このまま食べるんですか?」
「ああ。でも、そのまま単品では食べないかな。普通は肉料理と一緒に食べるものだ。ミルシアが、この前『肉まんと合わせると美味しいのよ!』って言っていたから、合わせてみる価値はあるかな、と」

 あの女王様、ほんとうに庶民の思想だよな。まあ、貴族には貴族の考えがあるのかもしれないし、貴族の料理は飽きてしまっているのかもしれないけれど。
 そもそも国の主がそういう庶民的価値観を持っていることは、国民からすれば大変有難いことなのかもしれないが。あるいは、パフォーマンスと受け取る人も居るかもしれない。それは、まあ、人それぞれ。
 はてさて。
 本題に戻ることにしよう。
 メリューさんが差し出してきた菜っ葉。それと肉まんを一緒に食べる。正直サイズがそれなりに大きい(肉まんに載せるとはみ出るくらい)ので、どうやって食べようかと四苦八苦していたが、

「適当に手で千切ればいいだろうが。そんな、横着しなくても料理は逃げていかない」

 メリューさんからダメ出しを食らったので、仕方なく皿に肉まんを置いて、その通りに手で千切ることにした。

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