(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
続 冒険者の思い出・前編
その人が二回目の訪問を行ったのは、ある雨の降った日のことだった。
思えばその人が初めてボルケイノにやってきたのもこんな雨の降った日だったと思う。
背中に大きな剣を携えた、いかにも冒険者然とした恰好の女性だった。
女性は何か考え事をしているようで――なぜそう断定したかというと、俺の「いらっしゃいませ」といった声に一切反応しなかったわけだからけれど――女性はそのままカウンター席へと腰かけた。
「……ここに来るのも、半年ぶりだな」
その冒険者は深い溜息を吐いて、そう言った。
そういえばもうそれくらい経過していたのか。俺はあまり時系列のことを気にしていなかったけれど、いざそう言われるとしみじみと感じる。……うん、考えるのはよそう。
「そう言えば、ここにはメニューが無いのだよね。何か、作っている状態で良かった?」
その言葉にこくりと頷く。ここはどんな料理だって作ることが出来る。正確に言えば、今お客さんが食べたい料理を食べることが出来る、ということだ。
そして、それを理解しているのは、大抵が二回目以降のリピーターということになる。先ず初見でここにやってきた人は、そのルールを理解できない。
「……あなたに話してもどうかと思うけれど、実はあれから色々とあってね」
冒険者は俺が注いだコーヒーを一口啜って、そう言った。
あれから進展があった、ということか。確かあの時は、ある冒険者を探している段階だったと思ったけれど。
そうして冒険者は語り始める。
それはボルケイノを出てから始まる出来事だった。
◇◇◇
ボルケイノを出てから、私はさらにメリューを探した。僅かな手掛かりを求めて、手がかりすら見つからない時もあった。けれど、私はただひたすら彼女を探した。見つからないなんて、そんなことありえない。彼女はきっと生きている――私はそう思っていたから。
けれど、私はある王国でこんなうわさを聞いた。
――ドラゴン峠で、一人の冒険者が死んだ
ドラゴン峠は名前の通り、ドラゴンが住まう山々を通り抜けることができる峠のこと。そのドラゴンは人を食らうことで有名なので、そこを通る際はある程度腕の立つ冒険者が必要であるといわれている。
だから、私はその王国に着いたときに用心棒を頼まれることになった。
用心棒に頼んできたのは、商人だった。国を渡り歩き、珍しいものを売りさばく。まだ若い男だったが、その商人はやり手の商人らしく、ネットワークもかなり手広かった。
そしてその商人の乗る竜馬車にてドラゴン峠を越えようとしたとき、商人はその噂を言った。そしてそのことの詳細についても、商人は知っていた。商人は昔からそういう情報は詳しく知っているからな。知っているに越したことはない。何せ、そういった細かい情報がいつ商機に繋がるか解らない、ということもあるからな。
思えばその人が初めてボルケイノにやってきたのもこんな雨の降った日だったと思う。
背中に大きな剣を携えた、いかにも冒険者然とした恰好の女性だった。
女性は何か考え事をしているようで――なぜそう断定したかというと、俺の「いらっしゃいませ」といった声に一切反応しなかったわけだからけれど――女性はそのままカウンター席へと腰かけた。
「……ここに来るのも、半年ぶりだな」
その冒険者は深い溜息を吐いて、そう言った。
そういえばもうそれくらい経過していたのか。俺はあまり時系列のことを気にしていなかったけれど、いざそう言われるとしみじみと感じる。……うん、考えるのはよそう。
「そう言えば、ここにはメニューが無いのだよね。何か、作っている状態で良かった?」
その言葉にこくりと頷く。ここはどんな料理だって作ることが出来る。正確に言えば、今お客さんが食べたい料理を食べることが出来る、ということだ。
そして、それを理解しているのは、大抵が二回目以降のリピーターということになる。先ず初見でここにやってきた人は、そのルールを理解できない。
「……あなたに話してもどうかと思うけれど、実はあれから色々とあってね」
冒険者は俺が注いだコーヒーを一口啜って、そう言った。
あれから進展があった、ということか。確かあの時は、ある冒険者を探している段階だったと思ったけれど。
そうして冒険者は語り始める。
それはボルケイノを出てから始まる出来事だった。
◇◇◇
ボルケイノを出てから、私はさらにメリューを探した。僅かな手掛かりを求めて、手がかりすら見つからない時もあった。けれど、私はただひたすら彼女を探した。見つからないなんて、そんなことありえない。彼女はきっと生きている――私はそう思っていたから。
けれど、私はある王国でこんなうわさを聞いた。
――ドラゴン峠で、一人の冒険者が死んだ
ドラゴン峠は名前の通り、ドラゴンが住まう山々を通り抜けることができる峠のこと。そのドラゴンは人を食らうことで有名なので、そこを通る際はある程度腕の立つ冒険者が必要であるといわれている。
だから、私はその王国に着いたときに用心棒を頼まれることになった。
用心棒に頼んできたのは、商人だった。国を渡り歩き、珍しいものを売りさばく。まだ若い男だったが、その商人はやり手の商人らしく、ネットワークもかなり手広かった。
そしてその商人の乗る竜馬車にてドラゴン峠を越えようとしたとき、商人はその噂を言った。そしてそのことの詳細についても、商人は知っていた。商人は昔からそういう情報は詳しく知っているからな。知っているに越したことはない。何せ、そういった細かい情報がいつ商機に繋がるか解らない、ということもあるからな。
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