(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

海の宝石箱・中編

「やっぱりメリューの作る料理は早いですね! さすがはあのメリュー、と言ったところですか……。まあ、まだ味を見ていませんから、何とも言えませんけれど」
「まあまあ、それはこちらを見ていただいてから……」

 そして俺は、トレーに置いていた器をミルシア女王陛下の前に置いた。

「うわあ……」

 ミルシア女王陛下は感嘆の声を上げた。
 その器に入っていたのは、ご飯だった。いいや、それを言うと嘘になる。その上にはマグロにイカ、ブリにハマチ、ウニにイクラにサーモンがきらびやかに載せられていて、真ん中には彩りのために大葉が載せられている。
 そう。ミルシア女王陛下に提供した食べ物、それは海鮮丼だった。
 ミルシア女王陛下は笑顔を見せながら、何から食べ始めればいいのか箸を迷わせていた。迷い箸はマナーとしてはあまりよろしくないのだが、まあ、箸を主流で使う国では無いし、この世界のマナーにはそのようなマナーが無いから別に問題は無いだろう。たぶん。
 やがて、ミルシア女王陛下はサーモンを箸で取った。
 そしてそれを口に運んで、ゆっくりと咀嚼を開始した。

「美味しい! 美味しいわ、メリュー!」

 続いて酢飯を口に運ぶ。それもまた美味しかったらしく、その笑顔はとても幸せそうだった。

「喜んでもらえて光栄ですよ」

 気付けばメリューさんがカウンターへやってきていた。思えばメリューさんがカウンターにやってくることは営業時間中だと結構珍しい。まあ、それもきっとミルシア女王陛下という見知った顔だからこそ出来ることなのかもしれないけれど。
 メリューさんの話は続く。

「この海鮮丼は新鮮な魚を使っていますからね。たぶん、あの国じゃなかなか食べられないでしょう?」

 それを聞いたミルシア女王陛下は大きく頷く。

「ええ、そうね。その通りだわ。私の国は内陸に面しているから海の食べ物を持ってくるには他国から輸入して、さらに陸路も他国を通過しないといけないから関税がとても高くなってしまう。だから王族ですら魚を食べることは滅多に無いくらい。まさかここでこんなに新鮮な魚を食べられるとは思っていなかったわ……!」
「そう言ってもらえると、料理人冥利に尽きますね」

 そう言って、メリューさんは笑顔のまま再びキッチンへと戻っていった。


 ◇◇◇


 結局ミルシア女王陛下は笑顔のまま海鮮丼を食べ終えて味噌汁まで飲み干して、そのままボルケイノを後にした。やっぱりお金はいつもより多かった。貴重なものを食べることが出来たから、その礼だと思えば安いものよ! とは言っていたが、とはいえ、毎回こうだとこちらも大変だなあ、って片付けながらそんなことを思っていた。

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