転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第二十五話 ドリントルの歓迎会4(12/4修正)
「んー。あれ? 今日は何か調子いいわね。あら、ダッシュ、エナクおはよう?」
母親が布団から起き始めた。それを父親が止めた。
「今、この冒険者さんに回復魔法をかけてもらったのだ。まだ病み上がりだから、無理をせずに寝ているといいぞ」
「あ、僕、名前言ってなかったですね。カインっていいます。今日この街にきたばかりの冒険者です」
「カイン様ですか、私はここの猫の和み亭のオーナーをやっておりますダッシュと言います。妻のヒミカと娘のエナクです。カイン様ありがとうございました」
「おにーちゃんありがとう!!」
満面の笑みをエナクが向けてくる。思わず手を伸ばして頭を撫でてしまった。
エナクは嫌がりもせず気持ち良さそうに目を細めている。
初めての猫耳を堪能することが出来たことで、カインの気持ちは高ぶっていた。
「これくらいなら問題ありませんよ。それにしてもここの街の教会は、そんなに料金が高いのですね……」
「はい、二度ほど『ヒール』はかけてもらったことがあるのですが、まったく治らなかったのです。さすがに金貨一枚の『ハイヒール』までかけてあげられるまでできなくて……。あ、先ほどかけていただいた『ハイヒール』の代金はいかほど……。金貨までは払えませんが、できるだけお支払いいたします」
「そんなこと気にしなくていいですよ。美味しい食事をいただきましたし、こうしてエナクの笑顔も見ることができたしね」
そう言いながらエナクの頭を撫で続ける。
「ゴロゴロゴロ……」
エナクは喉を鳴らすように目を細めて、そのままカインの膝の上に乗ってしまった。
「こらこら、エナク、カイン様に迷惑だろ……」
ダッシュは止めようとするが、カインがそれを止める。
「いいんです。僕も兄弟が兄と姉しかいない末っ子なので、こうしてもらえると、兄になった気分です」
カインは笑顔をエナクに向けた。
「あ、そうだ、今日の宿はお決まりですか? まだ決まっていなかったら、こちらでお泊りください。妻に回復魔法もかけていただきましたし、それくらいさせてください」
ダッシュはカインに頭を下げお願いする。
「まだ決まっていませんので、では、今日はお世話になります」
「やったー! カインお兄ちゃん今日泊まってくれるのっ!?」
カインの膝の上に座っているエナクが、下からカインの顔を見上げて喜んでいた。
「では、今日の夕飯は気合いれてつくらせていただきますね!」
ダッシュもヒミカの様子を、伺いながら喜んでいた。
「まだ、時間があるので街を回ってみようと思います。夕飯までには戻ってきますね」
カインはそう言ってから店を出た。
「この街には色々問題がありそうだよな……」
カインは空を見上げながら呟いた。
日中、商店などを歩いて回った。そして一度路地裏に入ってから飛翔で飛び上がる。ある程度の高さを維持しながら空からこの街を見て回った。この世界では空を見上げることも少ないので、空を飛んでいても誰も気づかないのだ。外壁周りを一周しながら確認していく。元々、街を囲んでいる外壁の関係で、これ以上、住民を増やすことが不可能な状態だった。
「今の街の大きさでは、これ以上住民を増やすのは無理だな……。外壁作り直すかな……」
カインは新しい街づくりを想像しながら、路地裏に着地し、宿に戻っていった。
「いらっしゃい! あ、カインおにーちゃんおかえりなさい! おとーさん、おにーちゃん帰ってきたよ~」
扉を開けると、エナクが笑顔で迎えてくれた。
「ただいま、まだ夕飯までには早いから部屋で着替えてくるよ」
「今日は、特別の部屋用意しておいたからねっ! 301号室だよ。ご飯できたら呼びにいくね!」
そう言って、エナクから鍵を渡された。この宿は1階が受付と食堂があり二階三階が宿となっている。三階まで階段を上がり、突き当たりの部屋が一号室となっていた。鍵を開けて部屋の中に入ると、想像以上に広かった。ダブルベットが二つ置いてあり、ソファーなどが配置されており、一般では泊まれないんではないかと思うほど豪華だった。
革鎧や防具などを脱ぎ清潔除菌をかけてからアイテムボックスにしまい、普段着ている服を着込んだ。
ソファーに横になり、これからどうするかなと考えていたら、ノックが鳴った。
「カインお兄ちゃん! ご飯の準備が出来たよ」
エナクが食事の準備が出来たことを告げに来た。
「うん、今出て行くよ」
カインはソファーから身を起こし、扉を開けた。
「……」
エナクがカインを見つめている。そして頬を少し赤くしていた。
「エナクちゃんどうしたの?」
カインは首を傾げてエナクを見つめるが、ますます顔が赤くなっていった。
「なんかお兄ちゃん貴族様みたい。格好いいよ??」
そう一言だけ言って、先に戻ってしまった。
「あ、この格好だからか。貴族の私服なんてこんなもんだから、気にしてなかったな」
カインが着ているのは、貴族の平服である。それは一般市民が着るのとはまったく違い、見た目から高級な生地を使って、仕立てられているものだった。
他の服も、同じようなものだったので、そのまま階段を下りて食堂に向かう。
食堂に向かうと、その格好にダッシュも驚いていた。そして先ほどまで寝ていたヒミカもいた。
ヒミカはカインに気づくと、立ち上がって一礼した。
「カイン様、回復魔法をかけていただきありがとうございます。もうすっかり良くなりました。寝込んでいた時にダッシュとエナクの二人には迷惑かけてしまったので、これから頑張ります。今日の食事はダッシュが精魂込めてつくらせていただきましたので、お楽しみくださいね」
ヒミカはお礼を言ったあとに、また厨房の手伝いに入っていった。
厨房からは、相変わらずいい匂いが立ち込めてくる。
「んー。美味しそうな匂いだな」
周りを見渡すと、四人組がパーティと思われる冒険者たちと、仕事帰りの職人たちがいた。
冒険者らしき集団も、厨房からの匂いにつられながら酒を飲んでいた。
「それにしても、今日すごい状態だったな。ギルドに向かったら訓練場は大破だろ?」
「あれはひどかったな。恒例の新人いびりをしようとしてああなったと聞いたぞ……」
「サブマスも担架で運び出されてたしな、何があったのだろうかいったい……」
「あの運び出されていた冒険者たちもCランクだろ、またギルドが大荒れになりそうだな」
あんまり聞きたくない会話を聞きながら、カインは先に出された果実ジュースを飲んでいた。
「カインお兄ちゃんおまたせっ!」
エナクが食事をのせたプレートを持ってきてくれた。
「今日は、オークシチューだよっ! いっぱい煮込んであるから美味しいよ」
「エナクちゃんありがとう」
プレートを受け取り、中身を見る。ぐつぐつと煮込まれたオークのホワイトシチューだった。パンが二つついており、あとサラダがついている。
「美味しそうだな、いただきます」
カインは手を合わせてから、スプーンでシチューを掬って口へ運ぶ。口の中に肉の染み込んだ優しい味が広がってくる。
「うんっ! とっても美味しいよ」
カインは横で待っているエナクに笑顔を向ける。
「お父さんも喜ぶよ! いっぱい食べてね」
そう言ってまた他の客のオーダーを聞きに行った。
食事を済ませたあとは、部屋に戻りのんびりした。
◇◇◇
ドリントルのとある場所。
部屋にはテーブルと四脚の椅子だけが置いてある。
テーブルの中央に置かれたランプの灯りだけが、部屋の中を照らしていた。
その薄暗い部屋で、今、丸いテーブルを囲んでいる四人の男女がいる。
「まさか領主がまた派遣されてくるとはな……」
「今までと同じですぐに逃げて帰るだろ。今度は子供だっていうし」
「わたしなんてそれどころじゃないわよ。今日、大変だったんだから」
座っている三人が話している。それを黙って聞いていた男が止めた。
「まぁみんな待て、今度の領主は冒険者でもある、問題があれば依頼をしてもらっている間に森で魔物の餌になってもらえばいいさ……」
一番上座に座っている男が、話し始めた。
それに三人が頷く。
「ただ、いつでも動かせるようにリック、スラムのほうはまかせたぞ。ベティもいざとなったら……な」
「わかった。こっちは任せておけ。いつでも闇ギルドは動かせるようにしておく」
中央の男の問いかけに、黒いフードを被ったリックが頷く。
「今はゴタゴタしているけど、少ししたら落ち着くと思うわ」
ベティは今日あったことを思い出しながらも頷いた。
「この街は今まで通り、この四人で治めていくのが一番いいのだ」
上座に座っている男は、一言そう呟いた。
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コメント
リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!
この汚い街に☆エクス○ロージョン☆
スザク
ざわ.......ざわ.....