俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第一回 出会いは突然に
「くそ、痛い出費だ」
「ははは、レスナも得してたじゃんかよ。俺のせいにすんなよ?」
「リーゼルト君が言い出したことじゃないですか、一週間出費を全部レスナさんに任せるだなんて」
「焼き鳥うっめ」
「リーゼルト君、それはこの世界では鳥焼きというのです」
「大して変わらねえだろ!?」
リーゼルトは街を歩きながらレスナと話していた。サテラはくすりと笑って正論を彼にぶつける。一週間出費を全部レスナに任せたのはリーゼルトの考えだ。
気晴らしに屋台から食べ物を買いまくって、パクパクと食べる。
サテラもレスナも同じく焼き鳥―――いや、鳥焼きを食べて美味そうに頬を緩ませている。
「つーかさ、彩とか藍さんとか今どこに居んの?」
「それが分かるスキルはありませんので……というより、行動監視スキルはボスにしかないと噂になっております。ね、レスナさん?」
「ああ。あるぜ、ボスには行動監視スキルが」
「つまりボス? にしか分からねえってことなのかよ」
「私が、何よ?」
「うわあああっ!? 藍さん!?」
後ろからリーゼルトに声をかけてきたのは屋台の仕事を終えてきた藍だ。後ろにはエアンとサランが控えているが、リーゼルトはそれが誰なのかわからない。
「機密組織ってわかるかしら? そうね、ちょうど君の後ろにいる彼ら……の、ボスに用があって大魔王城を出てきたのよ」
「それって復讐的な何か?」
「あら、よく分かったわね、それよ」
「……藍さん、否定はしませんが、あのボスに勝てるとは思いませんね」
「それはないな。うちの藍はなんとあの大魔王様と付き合っているんだから」
久しぶりに会って言いたいことはたくさんあるが、藍とエアンの言葉でリーゼルトとサテラとレスナが思い切り固まった。
一拍置いて、リーゼルトは「マジかあああ」と叫ぶ。
レスナとサテラは「いいのでしょうか?」などと不安そうにしている。
「君達は、違うのかしら?」
「私達も同じです。ちょっとした抗議をしたくてここまで来ています。確かに人のことは言えませんね。大魔王幹部エアン、魔王四天王の一人サランさん」
「魂……覚えてる人……いた……」
サランは無表情だが、藍は彼女がかなり嬉しそうにしていることに気付いている。そのあと藍とリーゼルトであったことを話し、何時間経っただろうか。
公式闘技場の上にのせてあるモニター画面のようなものに、格闘ランキングを作成する系としてリーゼルトも知っていた武道大会が映し出される。
藍はさほど興味がないようだが、リーゼルトは何かが気になり画面を注目する。
「優勝―――竜舞姫アヤ様っ!!」
そう告げる審判の声にリーゼルトは目を丸くした。どや顔でリンクから立ち去っていく彩に吹き出しそうにはなったが。
リーゼルトは駆け出し、藍はやれやれ、と言って去っていった。
目的は同じ、きっといつかは会うだろうという安心感を込めてすんなりと離れることができたのだ。ちなみに藍は意味のない時間は惜しいと思っている。
なのでギルドに行く意味は無いと思い、立ち去っているのだ。
「サテラ、身体強化俺に使ってくれるか?」
「全く、彩さんに会いに行くんですよね? 勿論いいですよ、リーゼルト君の恋愛模様はとてもとても楽しみです」
「おぉ~う、あのツンデレリーゼルト君がねえ」
「サテラはいいけどレスナは完全に煽ってるよな?あぁん?」
サテラは応援しているような口ぶりで身体強化魔術をかけて一緒に走っているが、レスナは顔面からニヤニヤしながら走ってくる。
リーゼルトは別に彩に恋をしている自覚は無いので、誘いに乗ることは無い。
「リーゼルト君は気になっていなくても、向こうがリーゼルト君が好きという可能性はあると思いますよ?」
「あー、うん。俺も鈍感じゃねえからさ。はっきり言ってそれはあり得る」
「惚れればいいじゃないかよ?」
「簡単に言うな、レスナ。此処は異世界なんだぜ? それに俺らには目的があって、彩と行動を共にすることなんてできねえだろ?」
口ではそう言ってはいるが、リーゼルトの内心では「無くも無いかもしれない」などと言っていたりするのは秘密である。
サテラはふらふらと歩きながら斜め上を見ている彩を指さす。
身体強化すると早くて、もうギルドの前まで来ていることに気付くリーゼルト。
彩はふらふらしていて、足元もおぼつかない状況だ。
それでも体力を振り絞るようにして奥歯を噛み、思い切って走りだした。
「声かけねえほうがよさそうだな。明日にするか?」
「ギルドに入っておきますか?」
「いや。止めておいた方がいい。今情報が入った。組織の中で四天王がいるんだが、ボスの側近にあたる幹部が『使えない者』を排除している」
「マジかよ!?」
「その中に、ギルドに入っていた者がいるんだ。これは味方になったスパイから聞いた話なんだがな……今入ると下手に目立つ」
何せ、リーゼルトのグループには街を助けた賢者サテラが居るのだから。今街を歩いていても少なくない人たちが挨拶してくる。
リーゼルトはなにかしら行動を始めた組織について考え込んだ。
スパイという言葉は、むかしレキラーから聞いたことがある。
しかし、帝国の話であまり組織に関係は無かった。
「まあ、明日にするか」
もしも彩が本当にリーゼルトを探しているのなら、リーゼルトを探すために毎日ギルドに来るだろう、とリーゼルトはそう考えた。
「ははは、レスナも得してたじゃんかよ。俺のせいにすんなよ?」
「リーゼルト君が言い出したことじゃないですか、一週間出費を全部レスナさんに任せるだなんて」
「焼き鳥うっめ」
「リーゼルト君、それはこの世界では鳥焼きというのです」
「大して変わらねえだろ!?」
リーゼルトは街を歩きながらレスナと話していた。サテラはくすりと笑って正論を彼にぶつける。一週間出費を全部レスナに任せたのはリーゼルトの考えだ。
気晴らしに屋台から食べ物を買いまくって、パクパクと食べる。
サテラもレスナも同じく焼き鳥―――いや、鳥焼きを食べて美味そうに頬を緩ませている。
「つーかさ、彩とか藍さんとか今どこに居んの?」
「それが分かるスキルはありませんので……というより、行動監視スキルはボスにしかないと噂になっております。ね、レスナさん?」
「ああ。あるぜ、ボスには行動監視スキルが」
「つまりボス? にしか分からねえってことなのかよ」
「私が、何よ?」
「うわあああっ!? 藍さん!?」
後ろからリーゼルトに声をかけてきたのは屋台の仕事を終えてきた藍だ。後ろにはエアンとサランが控えているが、リーゼルトはそれが誰なのかわからない。
「機密組織ってわかるかしら? そうね、ちょうど君の後ろにいる彼ら……の、ボスに用があって大魔王城を出てきたのよ」
「それって復讐的な何か?」
「あら、よく分かったわね、それよ」
「……藍さん、否定はしませんが、あのボスに勝てるとは思いませんね」
「それはないな。うちの藍はなんとあの大魔王様と付き合っているんだから」
久しぶりに会って言いたいことはたくさんあるが、藍とエアンの言葉でリーゼルトとサテラとレスナが思い切り固まった。
一拍置いて、リーゼルトは「マジかあああ」と叫ぶ。
レスナとサテラは「いいのでしょうか?」などと不安そうにしている。
「君達は、違うのかしら?」
「私達も同じです。ちょっとした抗議をしたくてここまで来ています。確かに人のことは言えませんね。大魔王幹部エアン、魔王四天王の一人サランさん」
「魂……覚えてる人……いた……」
サランは無表情だが、藍は彼女がかなり嬉しそうにしていることに気付いている。そのあと藍とリーゼルトであったことを話し、何時間経っただろうか。
公式闘技場の上にのせてあるモニター画面のようなものに、格闘ランキングを作成する系としてリーゼルトも知っていた武道大会が映し出される。
藍はさほど興味がないようだが、リーゼルトは何かが気になり画面を注目する。
「優勝―――竜舞姫アヤ様っ!!」
そう告げる審判の声にリーゼルトは目を丸くした。どや顔でリンクから立ち去っていく彩に吹き出しそうにはなったが。
リーゼルトは駆け出し、藍はやれやれ、と言って去っていった。
目的は同じ、きっといつかは会うだろうという安心感を込めてすんなりと離れることができたのだ。ちなみに藍は意味のない時間は惜しいと思っている。
なのでギルドに行く意味は無いと思い、立ち去っているのだ。
「サテラ、身体強化俺に使ってくれるか?」
「全く、彩さんに会いに行くんですよね? 勿論いいですよ、リーゼルト君の恋愛模様はとてもとても楽しみです」
「おぉ~う、あのツンデレリーゼルト君がねえ」
「サテラはいいけどレスナは完全に煽ってるよな?あぁん?」
サテラは応援しているような口ぶりで身体強化魔術をかけて一緒に走っているが、レスナは顔面からニヤニヤしながら走ってくる。
リーゼルトは別に彩に恋をしている自覚は無いので、誘いに乗ることは無い。
「リーゼルト君は気になっていなくても、向こうがリーゼルト君が好きという可能性はあると思いますよ?」
「あー、うん。俺も鈍感じゃねえからさ。はっきり言ってそれはあり得る」
「惚れればいいじゃないかよ?」
「簡単に言うな、レスナ。此処は異世界なんだぜ? それに俺らには目的があって、彩と行動を共にすることなんてできねえだろ?」
口ではそう言ってはいるが、リーゼルトの内心では「無くも無いかもしれない」などと言っていたりするのは秘密である。
サテラはふらふらと歩きながら斜め上を見ている彩を指さす。
身体強化すると早くて、もうギルドの前まで来ていることに気付くリーゼルト。
彩はふらふらしていて、足元もおぼつかない状況だ。
それでも体力を振り絞るようにして奥歯を噛み、思い切って走りだした。
「声かけねえほうがよさそうだな。明日にするか?」
「ギルドに入っておきますか?」
「いや。止めておいた方がいい。今情報が入った。組織の中で四天王がいるんだが、ボスの側近にあたる幹部が『使えない者』を排除している」
「マジかよ!?」
「その中に、ギルドに入っていた者がいるんだ。これは味方になったスパイから聞いた話なんだがな……今入ると下手に目立つ」
何せ、リーゼルトのグループには街を助けた賢者サテラが居るのだから。今街を歩いていても少なくない人たちが挨拶してくる。
リーゼルトはなにかしら行動を始めた組織について考え込んだ。
スパイという言葉は、むかしレキラーから聞いたことがある。
しかし、帝国の話であまり組織に関係は無かった。
「まあ、明日にするか」
もしも彩が本当にリーゼルトを探しているのなら、リーゼルトを探すために毎日ギルドに来るだろう、とリーゼルトはそう考えた。
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