俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

第十六回 GO!王都三層目!

馬車に揺られて、三時間は経っただろうか。
別れの時、海斗は手を振るだけで冷たい表情をして帰っていってしまった。
実はそれが寂しさの紛らわしだったのは本人のみが知る。

彩は景色を見ながら感嘆の息を漏らしているが、ユリウスは思い切り寝てしまっている。

馬車は海斗が念入りにスイートルームを用意してくれた。
そのため乗り心地は何も言えないほど気持ちがいい。

眠りもちゃんとしたため、眠気は無く、まだまだとても元気だ。

現在王都第二層なのだが、第一層ではそのまま通り抜けた。二層の扉では騎士がおり、身体検査をされたが何も言われることは無かった。

先程ユリウスは寝ている、と言っただろう。
しかし彼は自身の力だけで姿を消しているため彩のみにしかその姿は見えない。

「えっと、第三層からは馬車が禁止されているからもう行けないので降ろしますね」

「あ、了解だ」
『アヤよー我は歩きたくないのである』

ユリウスが苦痛の声を漏らしたものの規則は規則である。仕方がないのだ。
馬車から降ろされ、彩たちは三層目の扉をくぐる。

「……『電脳タッチパネル』」

門の前に居た女性が詠唱をすると、彩の履歴などが全て浮かび上がった。
転移人などそういうプライベート的なものは「鍵」でロックされているためみられることは無い。

女性はタッチパネルを消すと、彩に向かって一礼をし、通っていいことを示した。

「うあー、通るだけなのに緊張するな」

真顔を貫き通した彩はふぅ、と安堵のため息をついた。

目の前にはまだそれほど見えないものの王都フェリラーの城が見えてきていた。
それより少し離れたところにヨーロッパのような建物があった。

恐らくそれが冒険者ギルドとみていいだろう。

『まあそうなのである……我は寝たいのであるー』
「我慢しろユリウス」

辺りを見回すと、意外に王都に住む者は田舎者もいれば都会の雰囲気をぷんぷん出した者もいる。
検査を突破すれば誰でも入れるということか。

先に宿をとることにして、彩は十分ほど歩き、ギルドから一番近い宿「カマボコジー」の扉に入る。

「こんにちはぁ! こちらぁカマボコジーですぅ! 一週間ですかぁ? 一か月ですかぁ?」
「あー、はい、不定期でお願いする」
「不定期ですねぇ! とりあえず一週間の料金いただきますぅ、500Cですぅ」
「安っ」

まあいい、と思い、彩は海斗から渡された所持金1000Cの中から半分取り出す。
それを受け取った受付の人は703と書かれた鍵を渡した。

「シャワーや御飯などについてはぁ、宿代に入ってますのでぇ」
「改め安っ」

普通ならばちょっきり1000Ⅽくらいには行くはずなのに。

彩は鍵を受け取って階段を上る。
703の部屋を開けると、同じくヨーロッパのような中身だった。

「この街ヨーロッパなのか」

思わずそんな一言をこぼしてしまったのも責められないだろう。

―――――――――――――――――――――――――――――☆

宿から一度出て、ギルドを目指す。
目指す、と言ってもその扉はすでに目の前にあるのだが。

扉を開けた際に、「自動ドアが愛しい」と思ったのは心の中に仕舞っておこう。

「こんにちは。今日はギルド登録ですか?」
「ああ、そうだ。私一人なのだができるか?」
「はい。できますよ。私がステータスを鑑定しますのでお待ちください」

そう言って受付嬢はあの女性と同じように「電脳タッチパネル」と言ってステータスを鑑定した。
この地帯では流行っているスキルのようだ。

受付嬢は若干スキルと強度や魔力の差に驚きながらも羊皮紙に書き写していく。

能力レベル13
体力20
攻撃力22
防御力17
知識19
特別スキル――「支配者」スキル「空気操作」スキル「感情爆発」
称号「ユリウスの主」「王者」
属性「なし」
『判定 表示できません』

判定の所は受付嬢に見えていないようで、彩にしか見えなかった。
戦ってもいないのにどうやって増えたのか。
そして「知識」が増えたのはまた都市の影響なのだろうか?

しばらくして受付嬢が銀色に輝くカードを持ってそれを彩に渡した。

「現在Fランクでございます。説明はいるでしょうか?」
「いや大丈夫だ、ありがとう」
「了解しました。変更などがございましたら遠慮なく申し付けください」

金色の髪を束ねた受付嬢、このギルドのマドンナ、ウェラは礼をして彩を送った。

彩はギルドカードを持って宿に戻った。
もちろん一か月が過ぎる前に依頼を受けなければいけないが今日ではなくてもいいと思った。

部屋に戻ったらユリウスがちょこんと座っていた。

「今日は寝るぞ!!!」
『む、寝られるのか!? そ、それは……ZZZ』
「もう寝やがった!?」

彩の知らせを聞いたユリウスはそのまま寝てしまったのだった。
「私も負けない」と彩もベッドに上がり、消灯した。

光るギルドカードを見つめて、彩はほぅ、と感嘆の息を漏らした。

本物の銀なのだろう、光り輝いていた。

語彙などいらない。
単純に彩は「綺麗だ」と思ったのだった。

(さすがギルド。カンペキ、いやそれ以上か)

彩はギルドカードをそっとカバンの中に仕舞い、眼を閉じたのだった。

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