俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第二十五回 全滅か?いいえ、私達が維持します
「うあっ!! あぁ……!!」
「エアン!!」
「エアンッ!」
エアンがレイアのもとに駆け付けそうとした瞬間、シアンの体から触手のようなものが数本伸びて、エアンにおそいかかった。
ロナワールがいち早く気付き、触手を切り落としたものの、一本だけがすり抜け、エアンの首を絞める。
サランと藍が叫び、エアンに駆けつけようとするも、シアンが再生した触手によって止められる。
瘴気。
妖術のひとつで、「毒」のように、幻覚を見せたり記憶を操ったりする能力を持っている魔法だ。
それが、空間一面に張り詰めた。
結界を張っていられる者は張っており、この瘴気で多くの兵士たちが気絶してしまった。
「シアン……放せ……私を……放せぇぇえぇぇぇえええ!!!」
「どうやらあなたはエアンの恐ろしさを知らないようだ」
「な……なんだと!?」
エアンが全力で撃った黒魔法【黒樹呪】。太く頑丈な木が地面から伸びて、触手を切断する。
そして枝が触手のように伸び、シアンに襲い掛かる。
シアンは冷静に自分の触手で向かい撃ちにするが、その勝敗は一向に見えない。
「お前ごときが私と対峙できるようになったのは褒めてやろう。ただ……」
「ああああぁぁああっ!!」
「いい気になるなよッ!!」
シアンの触手の長さが長くなり、太くなり、エアンの樹を吹き飛ばし、エアンをも一緒に吹き飛ばす。
エアンは思い切り後方にふっ飛ばされ、自分の出した木に体を打ちつけられる。
「はあッ……」
血を吐いて、エアンは地面に倒れた。
まだ息をしているところを見ると、どうやら気絶しただけのようだ。
それに安心して、ロナワールは頷く。
もちろん本当の意味で安心しているわけではなく……ロナワールはシアンの方を向いた。
そして。
「……」
人差し指、薬指、親指……とゆっくりと順に上げながら、手首も一緒に上げる。
そして、フェーラとサタンの方を、ちらりとぎりぎり視界内に入るくらいの動きで見た。
二人への、出撃許可だ。
フェーラとサタンは頷き、フェーラは彼女の魔力が詰まった水晶球を。
サタンは自分の愛剣であり魔力を流し込めるオーダーメイトの剣を構える。
シアンは嬉しそうに、バトルジャンキーの一面を見せ、二人を見つめて狂気の笑みを浮かべた。
「来いよ……遊んでやるさっ!」
「!!」
「くっ……強い……!」
光の速さで瘴気をまき散らしながらフェーラとサタンの周りを走り抜けるシアン。
フェーラが水晶球で自分とサタンに結界を張っており、サタンは主にシアンから度々来る攻撃を裁く役目になっている。
これを一瞬で決めたという才能も、今ではシアンの戦闘に存在がかき消されている。
後方で見ていた藍、ロナワール、サランも三人がかりだったとしてもあれを避けるのにはできなくはないが相当な力がいるだろうと考えていた。
もちろんこれを見て支配者の大魔王、ロナワールが黙っているわけはない。
手を下げて、サランに目を向ける。
サランは頷くと、シアンに比敵するような速度で向かっていった。
「魂分つとき……破滅に満ちりし宿命を持った者よ……世界を違反する者でもあり……【魔創造】」
サランがする詠唱は少し長く、特別である。
後から知ることになるのだが、サランには「契約」という名の呪いがかけられており、詠唱を長くすることでしか魔法を発動できなくなったのだ。
もっとも、これはロナワールが呪いを半分消すことができたために出来るようになったことなのだが。
魔創造は、想像したものを「何でも」創り出すことができるサランのユニークスキル。
造られた物はみんな創造者のレベルを超えることはないというシステムがある。
「せいっ!!」
「魔導剣」と呼ばれる、世界各地の魔法のプロたちが一生をかけて探し求めるくらいのレベルの剣が、サランの手に。
魔導剣は、全ての属性を持っており、普段は普通の剣と変わりがない。
特にデメリットはなく、幻の剣だ。
サランがその剣を地面に振り下ろすと、地面がひび割れ、その下から氷の刺がぼこりと出てくる。
「ほう、少しは使えるのか」
「魔力、私の魂を維持するもの……一生をささげてきた技術……」
サランは一言話すとともに、「魂」という言葉が入る。何故かはロナワールのみが知る。
フェーラとサタンは頷き、フェーラは全魔力を水晶球に溜め、瘴気も構わずに自分への結界を解き、サタンへ全力で結界をかけ、サタンへ自分の魔力を流し込んだ。
その間フェーラは瘴気に浸食され、倒れてしまう。
ロナワールと藍が助けに行こうとしても、大量の瘴気に阻まれ、止まってしまう。
サタンは流し込まれた魔力を受けとめ、自分の魔力を一滴も残さずかき集め、剣に流す。
そしてその剣をサランと同じように地面に降ろすと、燃え上がる炎が輝く氷の刺と同化し、どちらも消えることなくシアンに直進していった。
(地球の法則を完全に違反しているわね……)
薄っすらと見える向こうの情景に藍は感嘆のため息をついた。
これは確かに地球の法則を完全に違反している。
「ふふふ……こんなので、私に……」
「!?」
「まさか……魂を引き裂くというの……?」
シアンが手を横に伸ばすと、漆黒の斧が現れた。どこもかしこも黒で、ほかの色は付いていない。
「まずい!【黒渦魔剣】だ!!」
「え?」
「あれはランクなんて付けられない!カンストする!」
叫ぶロナワールの言葉を現実へと。
シアンは斧を、二人と同じように下した。
黒い煙は炎と氷を侵食し、消し去り、取り込み、まっすぐと二人に向かっていく。
「もう魂は……戻らない……」
体力を消し去られたように、黒い煙に体を包まれたサランは力なく崩れ落ちた。
そんなサランを呼び戻すかのように叫んだサタンの腹にも煙が刺さり、煙はレイアの時と同じようにサタンを侵食していくものの、死はいつまでたってもやってこない。
フェーラはそんな様子を開けるのも億劫な瞼を強引に開けて見届けると、その意識は抵抗をもものともせずにブラックアウトする。
瘴気は少しだけ消え、残酷な情景が露になる。
「全滅か?」
「いいえ、私達が維持するわ!!」
そう言って、ロナワールと藍は構えた。
それぞれの得意なる武器を持って―――――――――――――――――。
「エアン!!」
「エアンッ!」
エアンがレイアのもとに駆け付けそうとした瞬間、シアンの体から触手のようなものが数本伸びて、エアンにおそいかかった。
ロナワールがいち早く気付き、触手を切り落としたものの、一本だけがすり抜け、エアンの首を絞める。
サランと藍が叫び、エアンに駆けつけようとするも、シアンが再生した触手によって止められる。
瘴気。
妖術のひとつで、「毒」のように、幻覚を見せたり記憶を操ったりする能力を持っている魔法だ。
それが、空間一面に張り詰めた。
結界を張っていられる者は張っており、この瘴気で多くの兵士たちが気絶してしまった。
「シアン……放せ……私を……放せぇぇえぇぇぇえええ!!!」
「どうやらあなたはエアンの恐ろしさを知らないようだ」
「な……なんだと!?」
エアンが全力で撃った黒魔法【黒樹呪】。太く頑丈な木が地面から伸びて、触手を切断する。
そして枝が触手のように伸び、シアンに襲い掛かる。
シアンは冷静に自分の触手で向かい撃ちにするが、その勝敗は一向に見えない。
「お前ごときが私と対峙できるようになったのは褒めてやろう。ただ……」
「ああああぁぁああっ!!」
「いい気になるなよッ!!」
シアンの触手の長さが長くなり、太くなり、エアンの樹を吹き飛ばし、エアンをも一緒に吹き飛ばす。
エアンは思い切り後方にふっ飛ばされ、自分の出した木に体を打ちつけられる。
「はあッ……」
血を吐いて、エアンは地面に倒れた。
まだ息をしているところを見ると、どうやら気絶しただけのようだ。
それに安心して、ロナワールは頷く。
もちろん本当の意味で安心しているわけではなく……ロナワールはシアンの方を向いた。
そして。
「……」
人差し指、薬指、親指……とゆっくりと順に上げながら、手首も一緒に上げる。
そして、フェーラとサタンの方を、ちらりとぎりぎり視界内に入るくらいの動きで見た。
二人への、出撃許可だ。
フェーラとサタンは頷き、フェーラは彼女の魔力が詰まった水晶球を。
サタンは自分の愛剣であり魔力を流し込めるオーダーメイトの剣を構える。
シアンは嬉しそうに、バトルジャンキーの一面を見せ、二人を見つめて狂気の笑みを浮かべた。
「来いよ……遊んでやるさっ!」
「!!」
「くっ……強い……!」
光の速さで瘴気をまき散らしながらフェーラとサタンの周りを走り抜けるシアン。
フェーラが水晶球で自分とサタンに結界を張っており、サタンは主にシアンから度々来る攻撃を裁く役目になっている。
これを一瞬で決めたという才能も、今ではシアンの戦闘に存在がかき消されている。
後方で見ていた藍、ロナワール、サランも三人がかりだったとしてもあれを避けるのにはできなくはないが相当な力がいるだろうと考えていた。
もちろんこれを見て支配者の大魔王、ロナワールが黙っているわけはない。
手を下げて、サランに目を向ける。
サランは頷くと、シアンに比敵するような速度で向かっていった。
「魂分つとき……破滅に満ちりし宿命を持った者よ……世界を違反する者でもあり……【魔創造】」
サランがする詠唱は少し長く、特別である。
後から知ることになるのだが、サランには「契約」という名の呪いがかけられており、詠唱を長くすることでしか魔法を発動できなくなったのだ。
もっとも、これはロナワールが呪いを半分消すことができたために出来るようになったことなのだが。
魔創造は、想像したものを「何でも」創り出すことができるサランのユニークスキル。
造られた物はみんな創造者のレベルを超えることはないというシステムがある。
「せいっ!!」
「魔導剣」と呼ばれる、世界各地の魔法のプロたちが一生をかけて探し求めるくらいのレベルの剣が、サランの手に。
魔導剣は、全ての属性を持っており、普段は普通の剣と変わりがない。
特にデメリットはなく、幻の剣だ。
サランがその剣を地面に振り下ろすと、地面がひび割れ、その下から氷の刺がぼこりと出てくる。
「ほう、少しは使えるのか」
「魔力、私の魂を維持するもの……一生をささげてきた技術……」
サランは一言話すとともに、「魂」という言葉が入る。何故かはロナワールのみが知る。
フェーラとサタンは頷き、フェーラは全魔力を水晶球に溜め、瘴気も構わずに自分への結界を解き、サタンへ全力で結界をかけ、サタンへ自分の魔力を流し込んだ。
その間フェーラは瘴気に浸食され、倒れてしまう。
ロナワールと藍が助けに行こうとしても、大量の瘴気に阻まれ、止まってしまう。
サタンは流し込まれた魔力を受けとめ、自分の魔力を一滴も残さずかき集め、剣に流す。
そしてその剣をサランと同じように地面に降ろすと、燃え上がる炎が輝く氷の刺と同化し、どちらも消えることなくシアンに直進していった。
(地球の法則を完全に違反しているわね……)
薄っすらと見える向こうの情景に藍は感嘆のため息をついた。
これは確かに地球の法則を完全に違反している。
「ふふふ……こんなので、私に……」
「!?」
「まさか……魂を引き裂くというの……?」
シアンが手を横に伸ばすと、漆黒の斧が現れた。どこもかしこも黒で、ほかの色は付いていない。
「まずい!【黒渦魔剣】だ!!」
「え?」
「あれはランクなんて付けられない!カンストする!」
叫ぶロナワールの言葉を現実へと。
シアンは斧を、二人と同じように下した。
黒い煙は炎と氷を侵食し、消し去り、取り込み、まっすぐと二人に向かっていく。
「もう魂は……戻らない……」
体力を消し去られたように、黒い煙に体を包まれたサランは力なく崩れ落ちた。
そんなサランを呼び戻すかのように叫んだサタンの腹にも煙が刺さり、煙はレイアの時と同じようにサタンを侵食していくものの、死はいつまでたってもやってこない。
フェーラはそんな様子を開けるのも億劫な瞼を強引に開けて見届けると、その意識は抵抗をもものともせずにブラックアウトする。
瘴気は少しだけ消え、残酷な情景が露になる。
「全滅か?」
「いいえ、私達が維持するわ!!」
そう言って、ロナワールと藍は構えた。
それぞれの得意なる武器を持って―――――――――――――――――。
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