俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第二十三回 組織内まで参戦
一週間。
あの冒険者たちの暴走から一週間も経ったのだ。
そして今日で藍が二度目の異世界に居た時間丁度一か月目。
勿論祝いはしていない。
しかしロナワールからの祝いの言葉をもらっただけで藍は「とても」満足している。
訂正しよう。
「死ぬほど」満足している。
そして今日、シアンの方向から動きが見えた。
真っ黒な服を着て、表情も武器も何も見えない、男か女かもわからない集団がシアンたちの陣にて集まっているのだ。
ロナワールと藍は、大体察せる。
あれからの一週間ずっと最上階で過ごしてきたため、今も彼らは最上階にて滞在している。
「あー、よくわからんっ」
「新たに作戦を立てようとも、相手がわからなければ立てられないわね」
「冒険者より強いのかなんなのか!!」
察しているものの、のどまで答えが出かけているものの。相手の集団をどう呼んでいたか思い出せない。
藍もロナワールも困り果てていた。
「え……っと、なんかの集団じゃなくて組織……んー」
「国家の……あぁ!!!」
「「国家機密組織!!」」
のどまで出かけたその答えは、ようやく明かされたのであった。
藍は良く知らないが、ロナワールが知る限り「組織の人間」は自分の正体を見極めさせず、いつでも顔は露になることがない、スパイ的な者達。
斥候からの報告によれば、そんな感じらしいのだ。
「困るんだけど……あの機械少女もそう言えば機密組織ね」
「えぇ!?機密組織を通ってきたのか?」
「そうよ。……そう言えば前はなんか奴隷っぽい少女に送られていたわ」
はあー、と呆れたようにロナワールは藍を見つめた。
「機密組織を通って転移、又は転生してくる奴らは全員使命とかあるんだよ」
「本当!?」
「うそを言ってどうする」
確かにそうだ。
その言葉が本当だと知った藍は一瞬戸惑い、そして目に魔力を集中させる。
驚愕なのは、魔力と体力を使っているはずなのに体力も魔力も全く減っていないのだ。
完全に「人間」の中のトップレベルには立っているものの、やはり人間の範疇は超えていないのだが。
ロナワールは慣れているものの口を引きつらせている。
「運命は運命、その通りに行動するしかないんだわ。切り開くことなんて無駄よ、だから私は任せるわ、運命に」
「いやあ……運命を切り開けって名言だぞ?」
「この世界でもそれなのね」
よく皆は言う。「○○がそうすれば未来はきっと切り開かれる!」と言って励ます。
しかし、地球ならば多分それはかなうだろう。
此処は異世界、ましてや全体平均能力は未知数。いつなにが生まれるかも分かっていない。
伝説の存在だが、「神界」「精霊界」「竜界」「魔界」などいくつかの世界がある。
ロナワールは「魔界」に行ったことはあるらしいが、そこでの彼の実力は普通の村人よりも低いレベルなのだ。
それほど、通称「伝説界」の世界たちは全体平均能力が高いのだ。
噂によるとここを操っているのは「神界」「精霊界」の二つ。彼らの実力が「魔界」よりも高いのなら……想像ならいくらでもできるがきっと藍では未来など切り開けない。
「そろそろ来る……って、もう戦ってる!?」
「ずいぶん話し込んでいたようだな」
しばらくしか話していないと思ったが、もうすでに戦いは始まっていたようだ。
魔王サランの判断で、街を保護している魔王軍以外は全て戦場、シアン側に向かわせているとの報告が来た。
ロナワールはオッケーの判断を出し、そのまま進ませた。
「ユノアを向かわせる、千万匹くらいでいいか」
「魔物、多いわね」
「オレのスキルに「魔物創造」ってのがあるからいくらでも作れるんだ」
そんなのもありなのか、と藍は肩をすくめる。
情報通信機を出すのが面倒くさいため、魔力で糸を繋げてユノアに連絡をする。
この場合だと心の中で話しても直接相手の心の中に語り掛けられる。
簡単なように操作したがこれは【魔女神ランク】という大魔王城周辺の特別ランク、人間界で「女神」ランクと同じ、いやそれ以上のランクである。
多くの者達が血眼で探すほど、レアなスキルなのである。
ちなみに魔物創造はユニークスキルで、知らない間にあったのだという。
「ねぇ、頼みがあるのよ」
「何だ?」
「この戦い、私も参戦したいの」
「え……?なんだその唐突な考え!?」
それには、いみがある。
ロナワールはそれを察せないほど鈍感なのだが。
「あの中に、ルナセスの配下がいるの」
「んなっ!?」
「確かにあいつのそばにいたもの。私はもう行くわ!!」
「え、ちょ」
まるで最初であった頃かのように、藍は一人で勝手に窓から飛び降りてしまう。
ロナワールとしては最終戦力として確保しておくべきだったのだが、藍は進化している。
藍の「運命は切り開けない」と言う言葉を今は信じて、ロナワールは藍の帰りを待つ。
―――――――――――――――――――――☆
「ユノア!」
「え、ランさん!?どうして……」
「助勢よ、許可はもらったわ!」
実際は強制的に許可をもらい、しかも「オッケー」という言葉すら聞いていないのだが。
今それをユノアに言っても混乱させてしまうだけだろう。
ユノアの使役する魔物は組織員たちを確保していっているが、こちらの人数も減っている。
向こうの数はこちらの数とそれほど変わらない。
しかし、こちらが圧倒的に少ないのは見るまでもない。
「最初から必殺を出すつもりはないわ。私が狙うのは……」
「ラン……さん?」
藍が戦場を見たとき、その目は狂ったように赤黒く輝いていた。
いつも威圧で人を勝るユノアでも、思わずその身を引いてしまうほどものすごかった。
藍が戦場のある一点に手を向ける。
『水龍弾』
藍が最近取得した技だ。
もうすでにランク分けすらできないほどの強さになっている。
水龍弾は遠隔射撃に向いているが、藍の改造により距離など関係なくなっている。
藍の手から水で作られた龍が数えきれないほど出てくる。
「うあっ!」
龍はとある一点をめがけ、そこにいた一人の男を締め付けた。
何故男かわかるか、藍はその男の顔や体の形を知っているからだ。
あの貴族の、息子である。
男は一瞬で瀕死状態となり、崩れ落ちた。さらにその龍の大きな体の余波が組織員の三分の二を倒れさせ、スライムたちに捕獲される。
「ユノア、あとは任せたわ。いろんな方面でもせいぜい頑張りなさい」
「えぇ、任されたよ、いろんな方面でも負けたりしない!」
そう誓い、藍はまた窓へと飛びあが……ろうとしたのだが
「きゃああああ!!!」
「ユノア!!」
そう、巻き込まれず、後方にて下がっていた怖がりの男が最後の力でユノアに剣を突き刺していたのだ。
余波で吹き飛ばされたものの、精神力はユノアよりも、藍よりも上だ。
「シアンさんの命令は……俺……が……」
「うあっ」
最後に、魔力で操っているその剣に力を込めて、そして動かぬ屍と化した。
ユノアは苦痛の声を漏らし、膝から崩れ落ちる。
藍は目を見開いて駆けつけ、首に腕を回して支え、すぐに治療魔法をかける。
ユノアは手を上げて。
「無理だよ、ランさん……ロナワール様を……大好きなあの方を……よろ、しく……」
そして、その手を下ろした。
ユノアを揺する。
涙がこぼれる。
揺する。零れる。揺する、零れる……。反応は、ない。
「ユノア、ユノアッ!ユノア――――――――――!!!」
使役者が消え、魔物も消える。気絶した組織員たちが、横たわっている。
誰にも聞こえないとわかっていながら、藍は叫んだ。
だれにも聞こえない――――――――――?
それは、嘘だ。
「ラン。」
「ロナワール……ッ!ユノアがッ!」
藍の必死な叫びに、ロナワールは首を振った。藍はユノアを見つめた。
「運命は、逆らえない!!!」
「シアンに、復讐を!!!!」
二人は、そう誓った。
二人はその後、人が変わったかのようにユノアを部屋に送り込んだり、術を学んだり、てきぱきと一言も話さずに――――――――――――――――――――。
そして、そんな悲しい出来事も混ざりながら、最終戦争へと道は開かれる。
あの冒険者たちの暴走から一週間も経ったのだ。
そして今日で藍が二度目の異世界に居た時間丁度一か月目。
勿論祝いはしていない。
しかしロナワールからの祝いの言葉をもらっただけで藍は「とても」満足している。
訂正しよう。
「死ぬほど」満足している。
そして今日、シアンの方向から動きが見えた。
真っ黒な服を着て、表情も武器も何も見えない、男か女かもわからない集団がシアンたちの陣にて集まっているのだ。
ロナワールと藍は、大体察せる。
あれからの一週間ずっと最上階で過ごしてきたため、今も彼らは最上階にて滞在している。
「あー、よくわからんっ」
「新たに作戦を立てようとも、相手がわからなければ立てられないわね」
「冒険者より強いのかなんなのか!!」
察しているものの、のどまで答えが出かけているものの。相手の集団をどう呼んでいたか思い出せない。
藍もロナワールも困り果てていた。
「え……っと、なんかの集団じゃなくて組織……んー」
「国家の……あぁ!!!」
「「国家機密組織!!」」
のどまで出かけたその答えは、ようやく明かされたのであった。
藍は良く知らないが、ロナワールが知る限り「組織の人間」は自分の正体を見極めさせず、いつでも顔は露になることがない、スパイ的な者達。
斥候からの報告によれば、そんな感じらしいのだ。
「困るんだけど……あの機械少女もそう言えば機密組織ね」
「えぇ!?機密組織を通ってきたのか?」
「そうよ。……そう言えば前はなんか奴隷っぽい少女に送られていたわ」
はあー、と呆れたようにロナワールは藍を見つめた。
「機密組織を通って転移、又は転生してくる奴らは全員使命とかあるんだよ」
「本当!?」
「うそを言ってどうする」
確かにそうだ。
その言葉が本当だと知った藍は一瞬戸惑い、そして目に魔力を集中させる。
驚愕なのは、魔力と体力を使っているはずなのに体力も魔力も全く減っていないのだ。
完全に「人間」の中のトップレベルには立っているものの、やはり人間の範疇は超えていないのだが。
ロナワールは慣れているものの口を引きつらせている。
「運命は運命、その通りに行動するしかないんだわ。切り開くことなんて無駄よ、だから私は任せるわ、運命に」
「いやあ……運命を切り開けって名言だぞ?」
「この世界でもそれなのね」
よく皆は言う。「○○がそうすれば未来はきっと切り開かれる!」と言って励ます。
しかし、地球ならば多分それはかなうだろう。
此処は異世界、ましてや全体平均能力は未知数。いつなにが生まれるかも分かっていない。
伝説の存在だが、「神界」「精霊界」「竜界」「魔界」などいくつかの世界がある。
ロナワールは「魔界」に行ったことはあるらしいが、そこでの彼の実力は普通の村人よりも低いレベルなのだ。
それほど、通称「伝説界」の世界たちは全体平均能力が高いのだ。
噂によるとここを操っているのは「神界」「精霊界」の二つ。彼らの実力が「魔界」よりも高いのなら……想像ならいくらでもできるがきっと藍では未来など切り開けない。
「そろそろ来る……って、もう戦ってる!?」
「ずいぶん話し込んでいたようだな」
しばらくしか話していないと思ったが、もうすでに戦いは始まっていたようだ。
魔王サランの判断で、街を保護している魔王軍以外は全て戦場、シアン側に向かわせているとの報告が来た。
ロナワールはオッケーの判断を出し、そのまま進ませた。
「ユノアを向かわせる、千万匹くらいでいいか」
「魔物、多いわね」
「オレのスキルに「魔物創造」ってのがあるからいくらでも作れるんだ」
そんなのもありなのか、と藍は肩をすくめる。
情報通信機を出すのが面倒くさいため、魔力で糸を繋げてユノアに連絡をする。
この場合だと心の中で話しても直接相手の心の中に語り掛けられる。
簡単なように操作したがこれは【魔女神ランク】という大魔王城周辺の特別ランク、人間界で「女神」ランクと同じ、いやそれ以上のランクである。
多くの者達が血眼で探すほど、レアなスキルなのである。
ちなみに魔物創造はユニークスキルで、知らない間にあったのだという。
「ねぇ、頼みがあるのよ」
「何だ?」
「この戦い、私も参戦したいの」
「え……?なんだその唐突な考え!?」
それには、いみがある。
ロナワールはそれを察せないほど鈍感なのだが。
「あの中に、ルナセスの配下がいるの」
「んなっ!?」
「確かにあいつのそばにいたもの。私はもう行くわ!!」
「え、ちょ」
まるで最初であった頃かのように、藍は一人で勝手に窓から飛び降りてしまう。
ロナワールとしては最終戦力として確保しておくべきだったのだが、藍は進化している。
藍の「運命は切り開けない」と言う言葉を今は信じて、ロナワールは藍の帰りを待つ。
―――――――――――――――――――――☆
「ユノア!」
「え、ランさん!?どうして……」
「助勢よ、許可はもらったわ!」
実際は強制的に許可をもらい、しかも「オッケー」という言葉すら聞いていないのだが。
今それをユノアに言っても混乱させてしまうだけだろう。
ユノアの使役する魔物は組織員たちを確保していっているが、こちらの人数も減っている。
向こうの数はこちらの数とそれほど変わらない。
しかし、こちらが圧倒的に少ないのは見るまでもない。
「最初から必殺を出すつもりはないわ。私が狙うのは……」
「ラン……さん?」
藍が戦場を見たとき、その目は狂ったように赤黒く輝いていた。
いつも威圧で人を勝るユノアでも、思わずその身を引いてしまうほどものすごかった。
藍が戦場のある一点に手を向ける。
『水龍弾』
藍が最近取得した技だ。
もうすでにランク分けすらできないほどの強さになっている。
水龍弾は遠隔射撃に向いているが、藍の改造により距離など関係なくなっている。
藍の手から水で作られた龍が数えきれないほど出てくる。
「うあっ!」
龍はとある一点をめがけ、そこにいた一人の男を締め付けた。
何故男かわかるか、藍はその男の顔や体の形を知っているからだ。
あの貴族の、息子である。
男は一瞬で瀕死状態となり、崩れ落ちた。さらにその龍の大きな体の余波が組織員の三分の二を倒れさせ、スライムたちに捕獲される。
「ユノア、あとは任せたわ。いろんな方面でもせいぜい頑張りなさい」
「えぇ、任されたよ、いろんな方面でも負けたりしない!」
そう誓い、藍はまた窓へと飛びあが……ろうとしたのだが
「きゃああああ!!!」
「ユノア!!」
そう、巻き込まれず、後方にて下がっていた怖がりの男が最後の力でユノアに剣を突き刺していたのだ。
余波で吹き飛ばされたものの、精神力はユノアよりも、藍よりも上だ。
「シアンさんの命令は……俺……が……」
「うあっ」
最後に、魔力で操っているその剣に力を込めて、そして動かぬ屍と化した。
ユノアは苦痛の声を漏らし、膝から崩れ落ちる。
藍は目を見開いて駆けつけ、首に腕を回して支え、すぐに治療魔法をかける。
ユノアは手を上げて。
「無理だよ、ランさん……ロナワール様を……大好きなあの方を……よろ、しく……」
そして、その手を下ろした。
ユノアを揺する。
涙がこぼれる。
揺する。零れる。揺する、零れる……。反応は、ない。
「ユノア、ユノアッ!ユノア――――――――――!!!」
使役者が消え、魔物も消える。気絶した組織員たちが、横たわっている。
誰にも聞こえないとわかっていながら、藍は叫んだ。
だれにも聞こえない――――――――――?
それは、嘘だ。
「ラン。」
「ロナワール……ッ!ユノアがッ!」
藍の必死な叫びに、ロナワールは首を振った。藍はユノアを見つめた。
「運命は、逆らえない!!!」
「シアンに、復讐を!!!!」
二人は、そう誓った。
二人はその後、人が変わったかのようにユノアを部屋に送り込んだり、術を学んだり、てきぱきと一言も話さずに――――――――――――――――――――。
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