俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

第二十回 監禁された母

「き、気味が悪いですね……」
「いや、たぶんリーゼルトたちの方が気味は悪い。まだ良いとするんだな。」

駄弁りながら、サテラとレスナは長い一本道を進んでいく。
すると、奥には真っ黒の倉庫。
それが、先ほどサテラが見た物の正体だろう。くやしながらも、レスナの仮説が合っていた事に否定はしなかった。
レスナは恐る恐る近づいていく。

そしてドアが開く。
この倉庫はずいぶん新しいようで、ドアを引いたらすぐに開いた。

『透明化』

レスナがスキルを使い、透明になる。
一方のサテラは倉庫の死角で様子をうかがっている。

倉庫の中は高温だった。窓がないのが原因なのか、長時間ドアが開かれていないのが原因なのかはわからなかったが、レスナにとってそこはとても居心地が悪かった。

「は、はぁ…っはぁ……」

か細い女性の声が聞こえる。
さらに奥まで入ってみると、紫のさらさらした長髪、ホワイトの長く細めのドレス、ピンクの大きな宝石のついたカチューシャを身に着けた、ネルタリーにそっくりの女性。
目的とは違うが、どうやら彼女をネルタリーの母とみて間違いはないだろう。
父がさらわれたんだ。母が無事だとは限らない。そう仮説を立てて、レスナはもう一歩進んだ。

「……大丈夫か?」

透明化を解いて、レスナは彼女に話しかける。
彼女は体を震わせ、レスナの方を見た。

「あ、あなたは……」

それを聞きつけたサテラも足音を立てないように駆け込む。
彼女は頭を上げてサテラを見る。

「私たちは、国家機関秘密組織の人です。私は此処の賢者リオン。彼は私の上司、国家管理長です」

それを聞いて、彼女は慌てて姿勢を立て直す。

国家管理長。
それはとても複雑な仕事である。
まず、賢者はその国の衛生、研究、繁盛を支える役目を持つ。そして極稀に、国の内乱を治めることもある。
そして、国家管理隊。
彼らは主に魔法を使い、内乱、反乱などを治める。戦う役割だと言ってもいいだろう。
そしてその隊長を務める者のことを、「国家管理長」というのだ。
賢者も国家管理長も、国の大の恩人であるため、会えば頭を下げ、正座をし、道を開けろ。会わなくとも彼らの話題を出すときには敬語を使え。と。そういわれているのだ。
それは貴族であろうと、平民であろうと、関係なしである。

そしてネルタリーの母も正座をし、頭を下げている。

「あ、楽な体制でいろ、無理するな」
「しかし……」

「法条1269条 いかなる場合でも国民の健康を優先する事。ですから、こういう場合は大丈夫ですよ。任せてください♪レスナは杖使いスティックマスター杖使いスティックマスターは戦も治療もお任せですので~♪」

そう言いながらサテラはゆっくりとネルタリーの母に近づく。
それを聞いて、ネルタリーの母は放心したように体勢を緩めた。

「わたくしは王家子孫のレジアス家、ケリアン・レジアスです。」

如何やら間違いはない様だ。
この国で彼女たちと苗字がかぶる者はいない。

王家には沢山の子孫がいる。しかし、苗字が違うものもいれば、王家ではなく、公爵、侯爵を名乗る者もいる。
それは昔の第二王女と第三皇子が魔物を送りだし、反乱を計らったが、行う前につかまり、縁を切り、追い出された。しかし彼らはそこで恋仲になり、三人の子供を産んだ。その中には「こんな親は要らない」と縁を切った者もいる。
それが大きくなり、やがて生まれたのが「王家、貴族、公爵、侯爵」という階級制。うまく分け、今になっては皆この悲しい戦争を忘れ去っている。

その第二女王ヒラスタン・レジアスの子孫が、今の「王家子孫・レジアス家」なのだ。今の王家はレジアス家と縁を切り、苗字を変えているが、まだレジアス家には重大な情報を与えている。
恐らくそれを欲して、彼らはレジアス家の人たちを誘拐したのだろう。しかし罪は罪。捕まえたらただじゃ置かない。
そうサテラとレスナは誓ったのだ。

体力回復薬ポーション

またどこからともなく杖を出したレスナは、それを空に向けてかざした。
ブワッと青い粒子が無限に飛び出し、ケリアンの身を包み、やがて吸い込まれて消えた。

ケリアンは心臓の激しい動機が軽くなるのと、呼吸がしやすくなっていることに気が付いた。

「あ、ありがとうございます。あの……ネルタリー…って子、知ってますか?」

「ネルタリーちゃんが、私達を呼んでくれたんです。「父が失踪したから助けて」って。」
「あぁ。もし彼女が居なかったら、もっと発見が遅くなっていただろう」

「そう……あの子が…」
「ここから出ましょう。ずっと此処にいるのは危険です」

サテラがケリアンの手を引こうとした、その瞬間だった。
バァン。
勢いよく、倉庫のドアを蹴る音がした。
サテラは慌ててケリアンを守る体制になり、レスナは杖を構え、戦う準備を整えていた。

「おぅおぅ、ようやく助けが来たってかあ!?」
「さっさと片付けて、リーダーに報告しなきゃな」
「……俺は殺してぇ」

現れたのは三人の男。
一人は長剣を肩に担いでいる、体型は普通。
もう一人は弓を持っている。大男。
そして最後の男は素手。小柄だ。
サテラとレスナは負ける気がしなかったが、ケリアンは焦っていた。
ケリアンの強さは普通とは言えないだろう。しかし彼らはケリアンを軽くあしらうことができたのだ。

しかし今は違う。
三人対二人の、激闘である。

「殺せるものなら、殺してみてくださいよ」
「来いよ。相手してやる」

残酷で有名なレスナ。
使える魔法の種類が多いことで有名なサテラ。
彼らが果たして、どんな戦いを見せるのか。

「おらぁ!」
「ふっ!」
「……行くぜてめぇら」

男が剣を下ろす。しかしそれはレスナによってあっさりと防がれる。

風砲エア

男は剣と共に風の大砲によって吹き飛ばされる。
やったのはレスナだ。
間髪もせず、男が放った弓が音を立てながら襲う。

「……速度は褒めてやろう。しかし……」

レスナが杖を弓に向けると、それはストップした。

『逆流!!!』

やったのはサテラだ。弓は逆方向に、弓を放った男に向けて前進した。

「うああああ!!!」

大男の肩は出血している。

そして小柄な男が向かってくる。

毒粉末ダークパウダー

レスナの属性の中の一番レアなもの。「毒属性」。
緑色の粉末は男に向かって渦を巻きながら前進し、男を包む。

粉末が消える。
男はまるでいなかったかのようにいなくなっていた。否。レスナの毒によって溶けてなくなったのだ。

「レスナさん。やりすぎです」
「……どうせ死刑になるんだ。いいだろう。それよりもサテ……リオン。奴らを縛れ」

「……了解です」

その命令を聞いて、サテラはブラックホールを起動させ、その中から二つのひもを出した。
男は二人とも気絶している。
そしてレスナの杖もいつの間にか消えている。

ケリアンは声が出なかった。
なんという速度。なんという強さだろう。
感心と共に、ケリアンは驚き、恐怖も感じていた。

「終わりました」
「じゃあ、行こう。リーゼルトたちも待っているだろうから」

「その…リーゼルトって誰ですか?」
「あぁ、ネルタリーちゃんと同年齢くらいの、今同行動している男の子です。」

レスナがケリアンの手を引く。
そしてドアが静かに閉まる。

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