俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

第十三回 俺の記憶喪失(中)

「ここが、あなたの家よ。」
「へぇ。」

シアノンは手を大きく広げた。その動作に合わせて僕も此処全体を見回した。
木で作られた家。周りが木で囲まれている。環境が良い。それ以外の感想は思い浮かばなかった。
良く思ってみれば、懐かしい感じがしないでもない。もしリーゼルトとの記憶を共有できれば……。
ふと、僕の目から生気が失せた。
《スキル:記憶共有 レベル12/30 を手に入れました》
僕の脳内で、機械の声が響いた。
僕は一瞬どきっとしたが、記憶共有を使ってみることにした。なんせ登録された時点でレベルが12なんだ。興味がある。
《スキル:記憶共有レベル12 を使用しますか》
《はい》
僕は迷わずはいを選んだ。リーゼルトの記憶が流れ込んでくる。
―――――――――――――なんてことだ。力が弱くなるに決まってる。
そしてこの異世界ではスキルのレベル。というものがないことが分かった。それも僕の驚きに入った。

「じゃあ、リーゼルト君。部屋に入ろうじゃないか?」

――――――――――――――――――――――――――――――――☆

僕たちはゆっくりと部屋の中に入った。木の香りがする。清らかな香りだ。僕の心が現れた感じがする。リーゼルトも幸せ者だなぁ。僕とは大違いだよ。
――――――――――――――――記憶を共有したくせに、そんなことくらいしか分かってないの?
!?
僕の脳内に声が聞こえる。体が動かない。前を見ると、僕の体があった。シアノンと談笑している。
僕を、だれかが操っている。
――――――――――――――――ロックがかかっていて、一部までしか……。
――――――――――――――――……それを見た後で、彼を幸せ者だと評価しているのかな?
――――――――――――――――少なくとも僕よりは……。
――――――――――――――――やっぱり君は何も分かっていないね。期待していて、損したよ。
――――――――――――――――貴方はいったい誰?
――――――――――――――――僕は、君だよ。
――――――――――――――――それ、リーゼルトにも言った?
――――――――――――――――当たり前じゃないか。ごもっとも、彼は月での記憶を忘れているけどね。
――――――――――――――――やっぱりだ。「禁忌の子」
――――――――――――――――その呼び方はやめてくれるかな?悪寒がするよ。
――――――――――――――――母上が二人とも死んだよ。悲しまないの?
――――――――――――――――全く?だって僕にとっていい思い出なんて残っていないんだからね。
――――――――――――――――……どちらでもない、中間点の僕には、分からないよ。
――――――――――――――――君は子供だ。やはり使えない。仕方がないよ、時の流れに沿って、消えてもらうね。
――――――――――――――――は?ねぇちょっと待って!ねぇ!?どういうこと!?
――――――――――――――――……君はそれすらわからないのかい―――――――――――――?
――――――――――――――――…………。

「……くん……リーゼルト君!?」
「えっ!?あぁ、何?」

気づけば突然意識が戻っていた。目の前にはリオンの顔……ううん、確か、サテラじゃないのかな。
でも、言うのはやめておこう。リーゼルトも、それを望んではいなさそうだからだ。

「何か思い出せそう?」
「……いまの僕は、ここで生活をしていた。」

「そうそう!そうだ……よ……!?またぁ!?」

ズシン。
鈍い音がした。
慌てて外に出てみると、怪物が人々を喰らっていた。
―――――――――――――なんてことだ。リーゼルトがいないだけで、こんなに差が出るというの?
それに、「また」とは、この侵略者たちは何度も此処を襲っているのだろう。
僕は視界をずらした。空中に浮いているピンクツインテールの女の子を目が合った瞬間、彼女はにやりと笑い、僕の頭は弾けそうな不快感に襲われた。でもこんなんじゃまだ倒れる気がしない。

『コンテラー!』

女の子が使ったのは神ランクの火属性魔法だ。それによって一面の木や建物は一瞬で焼き払われた。なんとか生き残っている人たちはみな叫び声をあげ、全速で逃げている。
魔法属性と魔法にはランクがある。今知られているものの中で一番上はファイナルランクだが、神ランクはその一つ下。めったに見ることができない強さだ。それを女の子は軽々とやってのけた。
それでも僕は、負けたことがない。だから……。

『レイスタカッター!』

またも神ランクの、そして今度は風属性魔法だ。僕はそれを見て学習するスキルを持っているが、あいにくこの体では使えない。
その風はギザギザに形を変え、人々を襲っていく。

「やめるんだ!『ゴースター!』」
「ッ国王……」

いつの間にか国王とその手下が駆けつけていた。
―――――――――――――――相変わらず、軽い感じだなぁ。
ファイナルランク属性『ゴースト』そして当然その魔法もファイナル属性。
―――――――――――――――「黒魔法」、ね。今ではすっかり普通の人が使っているのに。どうして……。
国王の周りに無数の黒い影が集まる。

「ゆけ!ゴーストよ。奴らを食らい尽くせ!」
「……バーカ!んー『マスターロック!』」

女の子が叫ぶと、とんでもない速さで彼女に襲い掛かっていたゴーストたちはいっせいに動きを止め、そのターゲットを国王に定めていた。
そして彼らはゆっくりと歩きだす。

「強いの出した分、かえしてやるよ!!!」

禍々しい声で女の子は言う。
――――――――――――こいつ、『マスター・全』ってスキル持ってるし。
僕は『スキル直視』を持っているからよっぽどやばくない限り人のスキルが読める。レベルも限界突破しているし、このぐらいは簡単だった。
読めない人、と言ったら、『直視妨害』スキルを持った人に限るだろう。しかも発見される確率が低い魔法なため、常時つけていないと妨害はできないだろう。

そしてマスターロックは、ゴーストのマスターを変える機能だ。これを持っている人の数は、手で数えられるぐらしかいない。
黒魔法を、黒魔法で返す、か……。

「くそっ」
「国王!!!」

「んなっ!?」

サテラだ。サテラが飛び出していった。
僕の心にわけのわからない感情が流れ込んだ。
―――――――――――絶対死なせはしない!!!!

彼女が飛び立つとともに、僕も魔法を放つ準備を整え、構えた。

『フラッシュ!』

女神ファイナルランクだ。光属性魔法。
女神ファイナルとファイナルランクは違う。ファイナルランクの進化版のようなものだ。
そしてそれをサテラはいとも簡単に放った。その光は一直線に女の子へと向かっていった。
それを見た女の子は少し考え込む表情をして、にやりと口角を上げた。
何だか不吉な予感がする。
僕はもう一度構え直した――――――――――――――――――。






『スローモーション』

彼女は声を上げた。
その瞬間、ありえない光景が当たりいっぺんに映し出された。

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