俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

第四回 サテラの破滅的な料理(上)

「くっさぁあぁぁあ!!!」
「ご、ごめん、掃除するの忘れていました…!」

スキップしながら家に入った俺。中は一応きれいなのだが、卵が腐った臭い。……よし、フラグを立てた気がする。

「あー、この匂いは、卵ね?」

うわぁぁぁあぁ。マジか! やはり先程のはフラグだったのだ。
俺とサテラの前を通り過ぎて、シアノンは鼻をくんくんさせ、あちこちを歩き回っている。

「前ここでゆで卵を食べたんだけど、残しちゃって、そのまんまにしたんです……自分でもどこに置いたかわからなくなって、それにひろいので……。」
「二階よ!」

という掛け声とともに、二人の女子が二階を駆け上がる。ふたりの靴のドタバタした音が煩い。というかサテラはハイヒールだった気がするのだが大丈夫なのだろうか。
俺はめんどくさくで一階で待機した。真ん中に机といすが置いてある。勝手になにかしてよいのかはわからないが、座るくらいはいいだろう。
そう思い、俺はそこにあった椅子に座った。

「それにしても、シアノンもそれなりにすげぇよな。」

自分が聴いても驚くほどの幼い声で俺はつぶやく。
まずサテラはゆで卵を忘れられるのがすげぇ。シアノンはもう神。あとひとつ聞きたいのだが、ゆで卵は腐るのだろうか。
そういや料理はずっと母さんに任せていたから知るはずもないのか……。

そういえば、さっきから此処の世界の基本らしき知識が頭の中に流れ込んでくる。それを短く説明すると、
『まず、スキルっていうのは、魔力の波動力の特別な種類みたいなものである。そして魔法はどんなことをしたいか考えて、呪文を唱えれば基本は何でもできるもの。だが攻撃的なことは無理だ。そして、その「思い浮かべることができない」もののことを「スキル」というのである。』
という説明をご丁寧に声までつけて頭に流して説明してくれているのだ。

その声はなんとなく機械少女「サテラ」の声に似ていたのだった。
最初は暇をつぶすためにいろいろ考えていたが、とても深くなってしまったようだ。そんな俺の思考回路を断ち切ったのはサテラだった。

「はっけーん!なのです!」
「くっさ――!!!」

突然聞こえた声にビクッとしながら俺は席から立ち上がった。まぁ、発臭元だからね……。俺が行ったら気絶してたわ。
俺はなんだか嫌な予感がしたため、

「おい、ちゃんと袋に入れて捨てろよ!?」

と、二階に向かって頭を上げて叫んだ。
そんくらいの常識はある。
さすがに素手で持ってくるなよ?……これはさすがにフラグではないよな?

「あ、はーい!」

という返事が返ってきた。俺が言わなかったら本当素手で持ってきたかもしれないな。
シアノンはまだいいが、サテラは「バカ」だ。シアノンも畏まりやすそうでさすがに「賢者」に意見はできなさそう。何故賢者になった。
――――――――――――ここは俺がしっかりせねば!
今気付いたのだが、俺は元ヤンキーの荒れてる奴。そんな奴が何を言っているんだ。

なんか俺短期間で結構変わった気がする。
たまにしか学校行かなかった分のコミュニケーションをとりもどそうとしている、ともいえるのではないか。

そういえば今更だが俺ってなんで異世界の言葉がわかるのだろうか。
そしてなぜ「賢者」という言葉に驚かなかったのか。少し違和感がしたが、気にしないことにした。

俺は今の世界の優しさに溺れた。まだこの世界の一部も知らない人間であることを忘れて……。

「処分してくるね!」

そういって走り去ったシアノンを見て、俺は思った。
こいつやっぱサテラと同類だ。
小さなゆで卵に比較して大きな袋。引っ越しでもする気なのだろうか。あとどうやったのかわからないが袋全体に散っているゆで卵。モザイクかけたいくらい気持ち悪かった。

「さて、シアノンが行ったところで、もう6時ですね。この世界のご飯の時間は8時が普通です。胃袋も通常より大きいのでたくさん作っておきましょう!」
「料理かよ!」

ログインボーナスを期待していたぜ……。まぁまだ明日になってないからなぁ…。
破滅的な料理になるだろうなと思いながら俺は不満そうにキッチンへ行った。

「そうですね、今日は、ミートソースパスタを作りましょう!」
「……そういやお前、料理できるのか?」

しばらくの沈黙。

「レシピならカンペキです!」
「おい」

あ……これ破滅タイプか。お願いだから炭っぽい物体にはならないでくれ。シアノン早く戻ってきてと心から願う俺だった。
異世界に来てから始めてした寒気が「料理」だとは。

「まず肉斬りましょうか」
「おい、字が…」

いったいなにを「斬」る気なのか期待していよう。シアノン助けて。
もはやもう寒気などしない。破滅してももういいや……食えれば。

サテラが手を上げて、『ブラックホール!』と叫ぶと、漆黒で渦巻いた不気味な穴から二人分のエプロンが出てきた。サテラはそれを格好つけて目を閉じ、パシッと取った。
俺はそれを見て絶句した。そして「かっこわりぃ……」とつぶやいた。
穴に関しては想定していたことだったため、何も言わないことにした。

「ちゃんと聞こえてますからね?ほら、エプロン!」

サテラが怒った様子で俺にエプロンを渡し、慣れた手つきで付けた。俺のは地球のかたちだったが、サテラのはなんかワンピースのようで、あちこちに紐がついていた。そしてそれを結ぶのに、もし俺だったらどれだけ時間をかけるのだろうか。と考えながら俺もエプロンをつけていく。

そこで、俺たちの破滅(する予定の)料理は始まった―――――――――。

「あれ?肉は?」
「なんて初歩的な!!!」

――――――――――――――――――☆

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