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月夜に提灯、一花咲かせ

樫吾春樹

玖文目 お伽噺みたいに

アルバイトで忙しい日が続き、気づけばバレンタインも過ぎてホワイトデーが目前に迫っていた。僕は結局出かけることができず、当日もアルバイトで皆をまとめていた。
そして、働きはじめてから三ヶ月以上。翔太は、一度も自分から僕の前に姿を見せなかった。それに苛立ちを覚えた僕は、スカイプで返事を送るのも少なくなった。その通知も、今日は一段と多かった。会えないか、いつ空いてるのか、ホワイトデーは何してるのか。翔太から来た連絡は、そんなことはかりだった。僕はそれに一言「仕事」とだけ返し、夕方から閉店までのバイトに備える。
「いってきます」
ユニフォームを着て、上からパーカーを羽織り、玄関から出て自転車に股がる。コンビニに寄って夕食を買ってから、バイトに向かう。歩いて十分ほどの距離だが、自転車の方が帰りが安全だからそうしている。流石に、日付を超えてから歩いて帰るのは危険だと思う。休憩所に着いて、更衣室に上着と荷物を置く。髪の毛を結わいて、その上から帽子を被る。
「よし、今日も頑張るぞ」
僕にはそれが、ある種のスイッチとなっていた。プライベートと仕事、それを分けるためのスイッチ。
「おはようございます」
店長に挨拶をして、その時間に入ってきた他のクルーと一緒に唱和をする。
「真琴さん。引き継ぎしたら、あとはお願いね」
「はい、わかりました。ゆっくり休んでくださいね、マネージャー」
「ありがとう。助かるよ、真琴さん」
「いえいえ。私はまだまだですよ」
そんな会話を店長として、仕事を引き継ぐ。夜のオペレーションや今後の予定、引き続きやってほしいことなどを聞いた。それを一つ一つ覚え、やる順番を組み立てていく。
「それじゃあ、私は行くね」
「はい、お疲れさまでした」
店長を見送り、自分の仕事を始める。夕方のラッシュタイムに備え材料を出したり、残っている材料を数えたり、使ったものをシンクに持っていったり。クルー達が動きやすいようにするのが、僕の仕事である。もちろん、他のこともあるがこれが一番だろうか。
そうして時間が過ぎて、ある程度任せられる時間になったら僕は休憩に入る。と言っても、事務所でやることがある。メールのチェックに、毎日こなさなければならないことなど。そんなことをしながら、コンビニで買ってきた夕食を口にする。ふと、スマホを見ると何件か通知が来ていた。
「またか……」
呟きながら、内容に目を通す。変わらない話題。僕がどうしてそこまでして避けてるのか、わかっていない様子だった。いくら説明しても、改善しようとしない姿勢。その事に対して、僕はもう我慢できなくなっていた。そして、ついに別れを告げる文章を綴った。


「ごめん。もう耐えられないから、別れて」

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