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月夜に提灯、一花咲かせ

樫吾春樹

肆文目 まるで夢物語のよう

東京に引っ越して、僕の一人暮らしが始まった。二度目とは言えども、新しい場所での生活は新鮮だった。週明けから始まる仕事の準備をしたり、荷ほどきをしたりしていた。ふと、昨日のことを思い出す。まるで月見草のような、僕と裕人さんの関係。周りには、決して知られてはいけないこと。
「裕人さん……」
呟いて顔を上げて周りを見ても、この部屋には誰もいない。その事に気づいて、急に孤独が押し寄せてくる。それを紛らわそうとスマホを手に取り、裕人さん宛にメールを打ち始める。
「昨日はありがとうございました。とても助かりました」
内容は簡素で、この年の女子にしてはさっぱりしすぎてるくらいだと思う。僕自身がそこまで、ごてごてとしたものを好まないのもあるが。少ししてから、彼から返事が来た。
「こちらこそありがとう。たくさん話せて楽しかったよ。また、困った時とかは連絡してくれれば行くよ」
「ありがとうございます、裕人さん。また、何かあればお願いしますね」
そう返し、片付けを進める。ある程度片付け終えてから少しすると、また裕人さんからメールが届いた。
「近くで仕事しててちょうど終わったんだけど、よかったら今からご飯行かない?」
思いがけない誘いに手が止まったが、断る理由も無いので一緒に行くというのを伝えて、バタバタと着替え始めた。それから少しして、玄関のチャイムが鳴った。迎えが来たのかと思い出てみると、翔太が玄関に立っていた。
「真琴さん、遊びに来ちゃった」
「ごめんなさい。これから、友達と出掛けるから…… 前もって連絡くれればよかったけど」
「それ、僕も一緒にいけない?」
「ごめんなさい」
「そっか……」
残念そうにしながらも、なかなか玄関から去らない翔太。それに苛立ちを隠しながら、帰って欲しいとの意味を込める。
「とにかく、今日は悪いけども僕も用事があるの。だから、また今度ね」
「わかった…… またね」
そう言って、帰っていった。彼氏とは言えども、いきなりアポ無しで家に来るのはどうかと思う。少し彼には、気をつけた方がいいかもしれない。そんな感じがした。階段を降りる姿を見送ってから、入れ違いに裕人さんが上がってきた。
「あれ、まこちゃん。あの人は?」
「周さんです」
「いいの? 帰っちゃったけども」
「いきなり連絡もせずに来たので、追い返しました。」
「まあ、いきなりはまずいね…… 少し時間ずらしてから行く?」
「いえ、大丈夫です」
家の中に入って鞄を取り、裕人さんと一緒に出発する。場所は、着いてからのお楽しみと言われた。

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