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月夜に提灯、一花咲かせ

樫吾春樹

拾壱輪目 菖蒲

パーティーが終わり、日も昇った元旦。前日からの疲れもあってか、気づけば僕は昼過ぎに布団から出て来て台所へ向かった。
「うーん…… 頭痛い」
呑み過ぎたのか、珍しく頭痛がする。二日酔いなんて初めての体験だから、正直言って気持ち悪い。
「あ、琴姉。おはよ」
「おはよ。慎哉しんやは元気だね」
「琴姉みたいに成人してないから、呑んでないんだよ」
慎哉がからかうように笑う。
「それは良いことだからね。それで、親達は?」
「母さんはまだ寝てるよ。父さんは出かけた」
それなら、仕方ないか。なら、僕が久しぶりに料理でも作ろう。そう考え、作ったレモン水を飲み干す。
「さてと、慎哉。何が食べたい?」
「琴姉が作るなら、肉じゃがが良い」
「なんで、僕ならなの?」
「肉じゃがは、琴姉の方が美味しい」
「ありがと」
ぽふっと頭を撫で、冷蔵庫を覗く。じゃがいもと人参、玉ねぎ、牛肉を冷蔵庫から引っ張り出して下準備をしていく。そして、鍋に油を敷き玉ねぎと牛肉を炒める。玉ねぎが飴色になってきたら、人参とじゃがいもを入れて、水と味付けの醤油とみりんも一緒に入れる。あとは、じゃがいもと人参が柔らかくなるまで煮込むだけ。
「ねーちゃん、おはよ。料理してくれてありがとうね」
「おはよ、母さん。いいって、たまにはね。っと、そろそろかな」
火の通りを箸で確認し、火を止める。それをそれぞれの皿に盛り、弟にご飯をよそってくるように言った。その間に、温めておいた味噌汁を茶碗によそう。
「いただきます」
三人揃ってご飯を食べ始める。食べながら、様々なことを話す。仕事のこと、家のこと、先輩のこと。離れて過ごしている時間を埋めるかのように、家族に話していく。どんなに気を張っていても、やっぱり一人で過ごすことは寂しい。
「ごちそうさま」
「片付けとくから、やることあるんでしょ?」
「ありがとう、母さん。それじゃあ、やってくるよ」
そう言われ席を立ち、自室に向かい小説を書き始める。だが、昨夜のパーティーで絋に言われたことが頭の中でぐるぐると巡り、なかなか集中して書くことができなかった。
「……なにが、俺じゃだめか、よ。僕には、裕人さんがいるって、一番知ってるくせに……」
確かに、異性では誰よりも距離は近いと感じる。だけど、それは僕にとって幼馴染だからであって、恋愛感情ではない。だからこそ、言われたことに驚いている。
「でも、このまま先延ばしにしてもよくない。なら、絋に連絡しよう」
僕はスマホを取り出して、絋に自分の回答を送った。


「ごめんなさい。僕は先輩がいい」

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